#8

 二年に進級するタイミングに紛れて私は転校した。ボーダー提携校である三門市立第一高等学校はいわゆる普通校で、頭が良くも悪くもない私にとっては選択肢もなかったわけだけど、平穏な学校生活が送れるならば正直何処だっていい。転校初日にあるような挨拶も、もう変に目をつけられるのも懲り懲りだし極力目立ちたくないと思って担任の先生に事前にやりたくないですと進言すると先生は気持ちを汲んでくれて学校の説明を丁寧にしてくれた。丁度クラス替えもあったらしいからしれっと元々といましたけど的な感じでいこうと思う。

 がやがやと進級後独特の浮足だったような空気にため息を吐いて、壁際でも後ろ側でもなく何とも微妙な真ん中の先に座って資料を見る。「界境防衛機関ボーダー」何度も見たページを暇つぶしがてらにめくって目で辿る。今日の放課後初めて足を運ぶわけだけど、正直なところ不安でいっぱいだった。親も友達も知り合い1人すらいないここで、やっていけるのだろうか。
 ぼんやりとそんなことを思いながら我ながららしくないなーと再び息を吐いたところで、読んでいた資料をすっと取り上げられる。

「何、お前ボーダー興味あんの?」
「!?いや、勧誘されて……」
「まじか!スカウトとかすげぇな!んで、入んの?いつから?」
「今日からだけど……」

 いや誰。あまりのコミュ力の高さに圧倒されて受け答えしちゃったけど、馴れ馴れしいなこの人。ヘアバンドをした男子生徒は私の返答を聞くなり「出水ー!面白い奴見つけたー!」と仲間を呼び出した。おいやめろと思った数秒後には既に仲間が到着して意気揚々と「こいつ後輩!」と指差してきた。

「へぇ〜スカウトとかすげぇな。この辺に住んでんの?」
「いや、今日転校してきて…」
「お、地方組ってことは鋼さんとかと一緒だなー。っつか今日転校初日の奴に想像絡んでったのか槍バカ!」
「いや、今時ボーダーの資料なんか見てっから面白ぇなーと思ってつい」
「いやそれはいいですけど」


「まぁ分かんないことあったら」「」「」漢字ふりがな