42

 その日の夜、ハリーとソフィアは学年度末パーティーに出席する為、大広間に向かった。ソフィアはロンとハーマイオニーにまだ会っていなかったため、早く二人に会いたいと早めに大広間に行こうとしていたのだが、ポンフリーがパーティーに出席する為には診察が必要だ、と言い張ったのでハリーとソフィアは渋りながらも従う他なかったのだ。

 ソフィアは今日この日ばかりは、自分の肌色を悔いた。ポンフリーは毎度毎度「顔が白いですよ!?具合が悪そうだわ、横になりなさい」と心配してくるので思いの外、診察に時間がかかったのだ。二人が大広間に着いた時にはもう広間は生徒でいっぱいだった。スリザリンが七年連続で寮対抗杯を獲得したお祝いに、広間はグリーンとシルバーのスリザリンカラーで飾られており、スリザリンのシンボル、蛇を描いた巨大な横断幕が、ハイテーブルの後ろの壁を覆っていた。

 ハリーとソフィアが大広間へ入っていくと突然話し声が止み静まったが、それは一瞬で、生徒達はまた大声で話し始めた。その話の内容が石関連であることは考えなくとも分かった。ハリーとソフィアに向けられる好奇の眼差しがそれを物語っていた。約五日間も大広間に姿を見せなかったのだから当然かもしれないが。

 さっさと席に座ろうと足を早めた時、「ソフィア!」と大声で叫び、駆け寄ってくるハーマイオニーとロンの姿に笑みが零れる。抱き付いてきたハーマイオニーの勢いによろけそうになりながらも受け止め、心配かけてごめんねと謝れば、ハーマイオニーは首を振るだけで何も言わなかった。何故なら、彼女は泣いていたから。

 「もう元気いっぱいだよ、私。だから…泣かないで?ロンにも心配かけてゴメンね」

 ロンはハリーの肩を抱きながら、「本当だよ。全く」と笑いながら答えた。

 「やっと、四人揃ったな。ハリー、ソフィア、おかえり」

 ロンの言葉にハリーとソフィアは顔を見合せ、ただいま、と笑いあった。おかえりとただいま。
使い慣れている言葉ではあるけど、この言葉の暖かさを身を持って感じた瞬間だった。

 四人がグリフィンドールのテーブルに座った直後、ダンブルドアが現れ、ハリーとソフィアを見ようと立ち上がっていた生徒達のガヤガヤ声が静かになった。

 「また一年が過ぎた!」

 ダンブルドアの朗らかな声が大広間に響き渡った。

 「一同、ごちそうにかぶりつく前に、老いぼれの戯言をお聞き願おう。何という一年だったろう。君達の頭も以前に比べて少し何かが詰まっていればいいのじゃが…。新学年を迎える前に君達の頭がきれいさっぱり空っぽになる夏休みがやってくる。それではここで、寮対抗杯の表彰を行うことになっとる。点数は次のとおりじゃ。
4位グリフィンドール、262点。3位ハッフルパフ、332点。2位レイブンクロー、426点。そしてスリザリン、472点」

 スリザリンのテーブルから嵐のような歓声と足を踏み鳴らす音があがった。マルフォイはゴブレットでテーブルを叩いている。ソフィアがスネイプに視線を移すと、当然だというような表情を浮かべ、スリザリン生に拍手を贈っていた。

 「よし、よし、スリザリン。よくやった。しかし、つい最近の出来事も勘定に入れなくてはなるまいて」

 ダンブルドアの言葉に部屋全体が水を打ったように静まり返り、スリザリン寮生の笑いが少し消えた。

 「駆け込みの点数をいくつか与えよう。えーと、そうそう…まず最初は、ロナルド・ウィーズリー君。この何年間か、ホグワーツで見ることができなかったような、最高のチェスゲームを見せてくれたことを称え、50点を与える」

 グリフィンドールからは、魔法をかけられた天井を吹き飛ばしかねないくらいの大歓声があがった。ロンの顔は真っ赤も真っ赤に染まっている。

 「僕の兄弟さ!一番下の弟だよ。マクゴナガル先生の巨大チェスを破ったんだ」

 パーシーが他の監督正に自慢気に話すのを聞きながら、ソフィアも拍手をロンに贈った。

 「次に…ハーマイオニー・グレンジャー嬢。冷静に頭を使い、友達を危機から救った。グリフィンドールに50点を与える」

 ソフィアに抱き付き、ぼろぼろ涙を零すハーマイオニーを見て、ハリーとロンは微笑みあった。100点も増えたグリフィンドールの寮生達は、テーブルのあちこちで我を忘れて狂喜している。

 「次に…ソフィア・エムリス。自分の身を削ってまで、仲間を救いたいという想いを決して見失わなかった。自分の危険より、人を思いやることのできる、その仁愛溢れる行動を称え…グリフィンドールに50点を与える」
 「ソフィア!良かったじゃない!」

ソフィアは恥ずかしさのあまり、今度は彼女の方からハーマイオニーに抱き付き顔を隠すようにうずめる。それがとても可愛らしくて、皆が「いいなぁ」とハーマイオニーを見ていた。

 「…ハリー、その腕は何だい?」

 ロンは目の前にいるハリーが、一人腕を上げているので不思議に思い問いかけた。

 「いや…いつものように、抱き付いてくるかと思って…」
 「……これが男子の踏み込めない、“女子の友情”ってやつだよ」
 「勉強になるね」

 その時のロンが何故か大人びて見えたのは、本当に何故なのか。

 「4番目は、ハリー・ポッター君…」

 部屋中が水を打ったようにシーンと静まり返った。

 「その完璧な精神力と、並外れた勇気を称え、グリフィンドールに60点を与える」

 耳をつんざく大騒音だった。声が擦れるほど叫びながら足し算できた人がいたなら、グリフィンドールが472点になったことが分かっただろう。スリザリンと全く同点になった。ダンブルドアが手を上げ、広間の中が少しずつ静かになった。

 「勇気にもいろいろある」

 ダンブルドアは生徒全員を見渡し、微笑んだ。

 「敵に立ち向かっていくのにも大いなる勇気がいる。しかし、味方の友人に立ち向かっていくのにも同じ位勇気が必要じゃ。そこで、儂はネビル・ロングボトム君に、10点を与えたい」

 大広間の外に誰かいたら、爆発が起こったと思うかもしれない。それほど大きな歓声がグリフィンドールのテーブルから沸き上がった。ネビルは驚き過ぎて蒼白くなっていたが、みんなに抱き付かれ、人に埋もれて姿が見えなくなった。ハリーは歓声を上げながらロンの脇腹をつついてマルフォイを指差した。マルフォイは、今起こったことが信じられないという呆然とした顔をしていた。レイブンクローもハッフルパフも、スリザリンがトップから滑り落ちたことを祝って、喝采に加わっていた。嵐のような喝采の中で、ダンブルドアが声を張り上げた 。

 「したがって、飾りつけをちょいと変えねばならんのう」

 ダンブルドアが手を叩いた瞬間、グリーンの垂れ幕が真紅に、銀色が金色に変わった。巨大なスリザリンの蛇が消えて、グリフィンドールのそびえ立つようなライオンが現れた。スネイプは苦々しげな作り笑いで、マクゴナガルと握手を交わしていた。

 その日の夜、グリフィンドールの談話室はお祭り騒ぎで、双子が厨房から調達してきた料理やらお菓子やらで賑わっていた。ソフィアはハリーやハーマイオニーと一緒にいたが、今日大注目だった彼女に、色んな人が交流を深めようと、進んでソフィアに話しかけてきてくれたのだ。自分の視る世界が少し違って、いつも以上に世界が輝いて見えた。

ALICE+