夏期休暇。プリベット通り四番地では、ハリーがペチュニア伯母さんにいいつけられた雑用をこなしているところだ。相も変わらずハリーの親戚であるこの一家の虐待は収まることを知らず、焦げ付くような太陽が彼の首筋をじりじり焼いていく。

 彼はガーデン・ペンチのペンキ塗りをしながら、ソフィアや、ロン、ハーマイオニ―のことを思い浮かべた。そうこうしながらやっと最後の仕事になった。彼は薔薇の枝を整え、水やりをした。こんな家に咲く薔薇でも眺めているだけで心が和むのをハリーは感じた。ふと白い薔薇に目がいく。純白の美しい薔薇の花は、ソフィアによく似合うだろうな、と一人彼はいつまでも物思いにふけっていた。

 ―――そして二日後。バーノン叔父さんの怒り狂う声の中、深夜、ハリーは見事ウィ―ズリ―3兄弟の助けを借りて空飛ぶ車で、ダーズリ―家脱出に成功した。

 「そうだ、ハリー誕生日おめでとう」
 「ありがとう、ロン」

 車の中で自由になれたことに歓喜深くなった。自分は良い友人を持てたなぁ、と改めて思う。

「次はソフィアを迎えにいくぞ」「前に手紙で場所を教えてもらったんだ」

 運転しているフレッド、そして片割れのジョージが言う。車はまた別の方向へと向かって行った。

*** 

 ソフィアは外に出て、院から少し離れたベンチに座っていた。
ロン達がどうやってここまで来るかは分からないため、時間が近くになるにつれ辺りを見回す。突如、車のエンジン音が聞こえてきた。それはコンクリートがひかれた道筋からではなく、上空の方からだった。暗闇に紛れて見にくいが、徐々に音が近づいてくるうちに姿を現したのだ。

 青い車がこちらに向かってきている、空中に浮かびながら。やがて、車が地面に着地し、ソフィアはライトの明るさに目を瞬ける。

 「ソフィア!久しぶり!」

 一番先に見えたのはハリーだ。他にウィーズリー兄弟達もいる。

 「ハリー、ロン…!ジョージにフレッドまでっ」
 「お姫様迎えにきたよ」「早く乗って乗って」

 フレッドが車のドアを自動で開き、反対側からはジョージが降りてきて、ソフィアの近くにあったトランクを荷台に乗せてくれた。とても紳士的な彼らにお礼を言うと「これぐらい当然」と返ってきた。アンジュはヘドウィグと共に車の後ろを飛ばせることにした。梟たちは嬉しそうに窓から空へと舞い上がり、白いゴーストのように車に寄り添って、滑るように飛んでいた。

 「さあ、ハリー話してくれるかい?」

 ソフィアが車に乗りこんで直ぐのことだ。ロンが待ちきれないというように言い出した。 

 「…ハリー何かあったの?」
 「実は――」

 ハリーは屋敷しもべドビーのこと、自分への警告のこと、スミレの砂糖漬けデザート騒動のことなどを全部話して聞かせてくれた。 話し終わると、しばらくの間ショックで皆黙りこくってしまった。

 「そりゃ、くさいな」「まったく、怪しいな」
 「それじゃ、ドビーはいったい誰がそんな罠を仕掛けてるのかさえ、教えなかったんだな?」
 「教えられなかったんだと思う。今も言ったけど、もう少しで何か漏らしそうになるたびに、ドビーは壁に頭をぶっつけはじめるんだ」

 その時、フレッドとジョージが顔を見合わせたのをハリーは見た。

 「もしかして、ドビーがぼくに嘘ついてたって言いたいの?」
 「ウーン、なんと言ったらいいかな。屋敷しもべ妖精ってのは、それなりの魔力があるんだ。 だけど、普通は主人の許しがないと使えない。 ドビーのやつ、君がホグワーツに戻って行かないようにするために、送り込まれて来たんじゃないかな。 誰かの悪い冗談だ。学校で君に恨みを持ってるやつ、誰か思いつかないか?」

―――ハリーを嫌っている人。ソフィアがある人物を思い出したのは、ハリーとロンと同着だった。

 「ドラコ・マルフォイ。あいつ、ぼくを憎んでる」
 「ドラコ・マルフォイだって?」
 「ルシウス・マルフォイの息子じゃないのか?父さんがそいつのこと話してるのを、聞いたことがある」
 「『例のあの人』の大の信奉者だったって」
 「しんぼう、しゃ…?」

 聞き慣れない言葉にソフィアは首を傾げる。

 「そう。ところが、『例のあの人』が消えたとなると」

 今度はフレッドが前の席から首を伸ばして、ハリーに振り返りながら言う。

 「ルシウス・マルフォイときたら、戻って来るなり、すべて本心じゃなかったって言ったそうだ。ウソさ、父さんはやつが『例のあの人』の腹心の部下だったと思ってる」

 ハリーは前にもマルフォイ一家のそんな噂を聞いたことがあり、その話を聞いても特に驚きはしなかった。屋敷しもべを送って寄越し、自分がホグワーツに戻れなくしようとするなんて、まさにマルフォイならやりかねない。

 「とにかく、二人を迎えに来てよかった。いくら手紙を出しても返事をくれないんで、僕ほんとに心配したぜ」
 「あ…ごめんね、ロン。私のところ、院の先生が直ぐ手紙を隠しちゃうから…皆の読めなかった」
 「いいよ、全然気にしてない。それに僕初めはエロールのせいかと思ったから――」
 「エロール?」
 「うちの梟さ。あいつはもう化石だよ。 何度も配達の途中でへばってるし。だからヘルメス…あ、パーシーが監督生になったとき、父さんと母さんがパーシーに買ってやった梟、それを使おうと思ったんだけど、パーシーは僕に貸してくれなかったろうな。自分が必要だって言ってたもの」
 「パーシーのやつ、この夏休みの行動がどうも変だ」
 「実際、山ほど手紙を出してる。それに、部屋に閉じ籠もってる時間も半端じゃない。考えてもみろよ、監督生の銀バッジを磨くったって、限度があるだろ。……フレッド、西に逸れ過ぎだぞ」

 ジョージが計器盤のコンパスを指差しながら告げる。それに合わせフレッドがハンドルを回していく。それからソフィアとハリーは、ウィーズリー家のことを色々聞いた。お父さんは魔法省の『マグル製品不正使用取締局』に努めていること、残業が大変なこと等々。

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