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最近の大学のミスコンではウェブ投票や会場投票を通じて審査が行われることが多いが
百合の通う大学は昔ながらの会場投票だけで、投票前にダンスや歌、ファッションなどの自己PRの披露がある。
「歌…」
しかし、それが今一番彼女を悩ませているものであった。
ミスコンではダンスか歌のどちらかを必ず選ぶことになっている。
百合はまずダンス経験がなかったので、必然的に歌の方を選ぶことにしたのだが…
「え、ユリリン歌きらい?」
「嫌いじゃないよ、聞くのは好きだから……聞くのはね…」
つまり歌うのは抵抗があるということらしい。
(実は案外……音痴とか!?)
百合の不安そうな様子から、田中はもしかしてと想像してしまう。
それでも本人に直面して聞くのは失礼なので敢えて心の中だけにしまっておいた。
「…でも、頑張る」
「ユリリン…っ、!アタシも応援するよ!手伝えることあったら言って!」
「うん、ありがとう」
***
「ミスコンに出るんだってね、百合ちゃん」
「…椿ちゃんから聞いたんですね」
「そう、この間すっごい焦った様子で来てたよー」
バイト先で店長に真っ先に聞かれた。
自分から出るとは殆ど周りに言っていなかった。
「すごいじゃない、僕応援にいかせてもらうね」
「ありがとうございます」
「まさか百合ちゃんが出るなんて意外に思ったよ。
あ、勿論可愛いから選ばれるのは目に見えてたんだけど、キミはちょっと引っ込み思案なとこがあったから」
百合の性格を熟知している店長からすれば、彼女が人前に出ようと思うことには少し驚いた。
「…私も苦手は苦手なんですけど……どうしても、優勝したくて」
「……なにかあるんだね」
「はい」
いつにも増して強い意志をみせている百合を見て、店長はそれ以上追及することはなかったが。
「あ、斎藤くんには言ったの?」
「…え」
「え、って斎藤くんに言えばいいじゃないー。彼も応援してくれるよ絶対」
「だ、だめです…!絶対言っちゃだめですっ」
「そうなの?」
珍しく必死な様子で止めてきた。
何故斎藤さんに言ってはダメなのか、やはり意識している男性に見られるのは余計緊張してしまうのだろうか。
しかし、彼女にはまだそういった自覚はなさそうなのだが。
「けど百合ちゃんの大学の文化祭って確か11月に行われるよね」
「はい、11月上旬です」
「そのころって、ちょうど斎藤君たちツアー終えて帰ってくる頃だったような…」
ガタンッ。椅子が転げ落ちる音がした。
見ると百合が顔面蒼白な顔をして立ち上がっていたのであった。
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