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前期の試験を無事終え、百合たちは世間でいうところの夏休みを迎えていた。
といっても3年生である彼女たちも例外なく就職活動真っ最中なので遊ぶ暇は全くない。

「あー、疲れたー」
「もう面接面接面接…嫌になっちゃうわ、ほんと」
「今いくつ受けた?」
「5社ぐらい」

カフェテリアで大学仲間と休息をしていた。
この大学では経済から教職まで様々な分野がある。

「椿たちはどうー?」
「アタシはもう決まってるよ」
「え、マジ!?」
「うん、この間通知きた」

田中は小学校の先生を目指しており、教育実習先でその実力を買われつい最近採用通知が届いたのだ。

「さっすがー、ってことは母校で先生?」
「うん、まぁね」
「百合は?」
「私も…」
「うそ!?」

栄養士を目指している百合は、最近ある某有名会社の社員食堂の栄養士として雇用通知がきた。
といっても都内にある支社の方なので中程度の規模の場所で働くことになるが、それでも某有名会社の名前だけで充分安定力はみえる。

「えー…二人とも安泰じゃん」
「いいなー」
「でも、まだ資格試験が待ってるからね、勉強はしないと」
「うん」

就職先が未だ決定していない友人たちではあったが、百合たちの内定を聞いて素直に、おめでとうと言ってくれるあたりが優しかった。
そして、話題は別のものになっていく。

「そいやさ最近聞いた噂なんだけどね、文化祭実行委員のひとたち、今年はやっぱ百合に頼もうとしてるらしいよ」
「やっぱり?絶対くると思ってたー」
「まぁ普通に考えりゃそうなるよね」

何故か友人たちの話題の渦中に自分の名前が挙がり、一体なんのことかと百合は不思議そうに首を傾げた。

「ミスコンだよ、今年の」
「えええええええええ!!?」
「椿うっさいー」
「だって入学当初から噂されてたもんね、将来のミスコン候補者ナンバーワンって」

ミスコンとは、その名のとおり大学で行われるミス・コンテストの通称・総称である。
大学祭の催事として実施される場合が多く、模擬店などを抑え大学祭で1番注目される催しだとする調査もある。
その今年のミスコンに、百合が最有力候補として名前が上がっているらしい。
元々美人が多いことでも有名な大学の中でも群を抜いて美人といわれるほど、本人が知らないだけで、彼女の名前は大学内では有名だったのだ。

「…や、やだ」
「なんでー?だって百合、絶対優勝できるよ?」
「人前に出るの苦手…そ、そういうの無理…」

昔から大勢の人の前に立つのが苦手で、緊張しいというか恥ずかしがり屋な面がある百合。
ミスコンなどはもってのほかだった。

「でも、優勝したらすごい賞品もらえるもんね?」
「うん。確かうちの大学の場合は海外留学とか。
あ、確か…海外1都市を選んで行ける無料ペア航空券とかもあったな」

その瞬間、百合がガタンと立ち上がる。
友人たちは彼女の突然の行動に驚き、口をあんぐりと開ける。

「ど、どしたの…」
「……出たい」
「え?」
「私、…ミスコン出たい…」

次の瞬間、百合が言い放った言葉に全員が驚きの声を上げていた。

***

『はぁあああ!?お前がミスコン!?』

夜、幼馴染からの電話で百合は早速今日の出来事を話していた。
あのあと友人たちが驚きの声をあげたのち、タイミングよく文化祭実行委員の人が百合に声をかけてきて、見事ミスコン候補者に選ばれたのであった。

「…そんなに驚かなくても」
『驚くわ普通!てか、お前そういうの嫌いだったじゃん!』
「私だって、ちょっとは苦手を克服しようと…」
『無理無理!やめとけって!どうせ緊張して何もできないってオチになるだけだろ?』
「……正人君のばか。いいもん…絶対やってみせるから」

まさかそこまで言われるとは思わず、百合もついムキになってしまった。そうして一方的に通話を切る。
通話の向こうで幼馴染が頭を抱えているとも知らずに。



「うそだろ…」

切られてしまった携帯を片手に、正人は大きなため息をついていた。
百合の通う大学は以前からミスコンといえばここ、といわれるほど美人が多いことで有名な大学で、最近ではメディアに特集が組まれる程になってきていた。
そう、それほど世間から注目されるミスコンなのだ。
そしてそれに出るということは顔を皆に知られるということで、彼女がそうなってしまえばどうなるか簡単に予想がついた。

あれだけの美貌を持つ彼女のことだ。
優勝することなんて造作もないだろうが、それによって業界からのスカウトも出てくるし、寧ろ異性からの注目の方が大きくなるだろう。

「オレにとっちゃ…めんどくさいことこの上ねーんだよ」

思わずため息がこぼれた。

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