Iwata
無口で表情の変化が乏しくて、外国とのハーフなだけあって日本人離れした美女。
人形みたいだ、というのが彼女をみたときの最初の印象だった。
けど冷たそうな外見とは真逆に、小さいことにまで気遣っていたり、頼まれもしていないのに誰かのために動いていたり、びっくりするほど優しい心を持った子だった。
メンバーで唯一の女子、最初は自分も含め他の皆も彼女と距離を置いていたが、それはほんの一瞬のことのようで、いつの間にかメンバー全員が彼女を慕っていた。
それだけ彼女が他人に対して優しく、尚且つ人を惹きつける魅力をもっていたのだろう。
高峰妃という人物はそういう人間だったのだ。
「あ、やべボタン取れた」
「だから言ったじゃん岩ちゃん、ボタン取れそうだって」
「ガサツやからなー」
撮影を終えて私服に着替えようと上着のボタンをかけようとしたとき、ちょうど取れかかっていたボタンが外れてしまった。
さほど高くない服ではあるが、結構気に入っていたものだったためショックは大きい。
ボタンを付け直せば解決するのだが、如何せん自分はそんな技術を持ち合わせていなかった。
仕方ない、と大人しく上着を脱いだとき救世主が現れた。
「私、つけます」
「いいの?」
会話を聞いていたらしい妃がすっと上着の袖を持ち上げた。
彼女の手にはソーイングセットが。
妃の手の器用さは十分知っているため、全信頼を置いて上着とボタンを渡した。
そうして妃は慣れた手つきでボタン着けを始める。
その様子を傍の椅子に座って見つめる。
「お、なんだ?ボタン付けてもらってんの?」
「さっき取れちゃって」
「岩ちゃーん、服は大事にしろよー」
「さすがおしゃれ番長は言うことが違うっすね」
楽屋に戻ってきた直人さんが自分たちの姿を見て声をかけてきた。
妃の方は集中しているためか、ただ黙々とボタン付けを進めていたけれど。
相変わらず睫毛なげーな、とか彼女の横顔をぼーっと見つめながらも観察していた。
真っ白い肌は日焼けしがちなメンバーの中でも大分浮いている。
身長も自分とあまり変わらないけれど、一緒に座ると何故か彼女の方が背が低いように感じるのは妃の座高が低いからだ。スタイルよくて足長いとか反則だろ。
「できました」
「サンキュー」
いつの間にかボタン付けは終わっていて、妃が丁寧に上着を畳んで返してくれた。
どうせあとで着るのだから適当に返してくれて構わないのに、こういったところも律儀な彼女の性格が表れている。
「妃はほんまえぇお嫁さんになるなー」
「健ちゃんすごいオヤジくさい」
「おい先輩やぞ!」
「まぁ本人の嫁行きはまだ当分先な気がするけどね」
直己さんがある一点を見ながら言った。
その方向の先には私服のシャツに着替えている直人さんに、その直人さんの上着を持った妃が直人さんの傍で控えめに立っていた。
直人さんがシャツのボタンを全てかけ終えると、タイミングを見計らっていた妃がそっと上着を直人さんに手渡した。
まるで主と従者のような光景だがこれは三代目では普通のことだ。
妃は直人さんにとんでもなく強い憧れと尊敬を持っている。
本人曰くファンみたいなもの、ということらしい。
これは三代目だけでなくLDH全体で周知のことだ。
そのため芸能界でもかなり異性に人気の妃だが、今までそういったロマンスは全く聞いたことがない。
あくまで直人さん一筋というか、直人さん以外に魅力に感じる異性がいないのだろう。
恋愛感情ということではないけれど、あの二人は誰が見ても恋人同士かと思ってしまう気がする。
あー、全くどうすれば自分は報われるのか。
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