きっかけ
おい、用がないなら帰らせろやクソ髪が!…ハァ?キッカケだぁ?何のだよ………なっ!べ、べべべべつに!飛び女のことなんかすっすきじゃねえし!!?!?
…はっ!クソが!!ハメやがったんか!!ブッ殺すぞこのアホ面!!!
…!! なっなあオイそれ…いつの間に撮りやがったんだ!見てんじゃねえよ!!!俺にも送っとけや!!!
クッソがァ……絶ッ対だぞ?話したら俺に送ってその上テメェのスマホからはデータ削除すんだぞ…!?
………………………………チッ、入試ン時だよ。
▽▲▽
目の前に迫り来る仮想敵を次々と鉄屑に変えていく。
周りでは他のモブ共が応戦しているようだが、俺の派手な攻撃の音に引き付けられて、直ぐにロボがこっちへ集まってくるだろう。
攻撃を仕掛けながら周りを見るが、自分より凄いと言える個性の奴などいない。当たり前だ、俺が一番なのだから。
音につられ一際大きな3ポイント敵が一直線に向かってくる。ポイントの低い雑魚ロボなら一撃で破壊してきた。まずは迎撃、と右掌にニトロを纏わせる。
「死ねェェェ!!!」
BOOOOOM!!
派手な爆発音が辺りに響き、それを感知した雑魚ロボがいくつかこちらを向いた。
試験開始の合図があってからひたすら迎撃を続けロボを破壊するが、ビルや瓦礫の陰からまだまだたくさん出てくる。
両手を使った最大火力でポイントの低い雑魚敵を纏めてブッ壊した。まだ動きそうなロボはいるが一通り片付けた、瞬間、
「危ない…っ」
いきなり背後で大きな金属製品のぶつかる音が響き、砂埃で一瞬目が眩む。そういやなんかちっせぇ声がしたような。振り返って見ると、さっき俺が倒した筈の3ポイント敵が瓦礫でつぶされていた。
完全にダウンさせるには火力が足りなかったか。配点の高い敵ともなると、一撃必殺とはいかなかったらしい。油断した自分に舌打ちをひとつ。
「…っ、大丈夫でしたか?」
砂埃のせいで相手の姿はまだ見えない。聞き慣れない女の声だ。
背後だったので見えなかったがおそらく別のモブが、真っ直ぐ俺に向かってくる敵の隙をついて倒したんだろう。俺にとってどうということはない。既に70点近くは稼いでる。…が、心配されたことが気に食わない。俺は最強なんだ、背後をとられたって自分で撃退できるんだよ。心配なんかされる謂れはねぇ。少し文句を言ってやろうと相手に向き直る。砂埃が晴れ、鉄屑の向こうに人影が見えた。
おいテメェふざけんな!!邪魔すんじゃねえ!!助けられてなんかいねぇぞ、俺一人でも平気だわ!思い上がんじゃねえ!!
そう言ってやるつもりでいた言葉は、「おいテメェふざけ」で止まってしまった。
「…あの、?」
ーーーーーー大きな藤色の瞳と目が合った。
時間が、止まった。気がした。
そいつの個性か?いや俺の周りの雑魚共は動き続けてるからそれは有り得ねぇ。
身体は何故か動かねぇのに、俺の優秀な頭は冷静に回転を続ける。
今はンな事ァどうでもいい、なんだ、この…痺れ、みてぇな………
崩れた3ポイント敵の向こうに居たのは、細っこい女だった。黒髪が風に揺れている。これと言って目立った個性でもない。そう、そこら辺のモブ共と変わらない。
はず、なのに、縫い付けられたようにそいつから視線が外せない。浴びせるつもりだった文句と罵声も、喉の奥に引っ掛かって出てこない。
「大丈夫ですか?やっぱりどこか怪我とか…」
「!!! あ、あぁいやっして、ね、ぇ」
「よかった…。お互い頑張りましょうね、それでは」
「ぁ、」
全くもってまともな会話ができた気がしない。俺に怪我がないことを確認すると、すぐにその女は行ってしまった。
おい待て、まだ話は終わってねぇぞ。呼び止めようと手を伸ばしかけたが、まだ湧いてくる仮想敵に阻まれる。
破壊作業を再開するうちに女の姿は消えてしまった。
その後すぐに試験は終了し帰路についたが、家に帰り落ち着いても、筆記の自己採点をしていても何故かあの女のことが頭から離れなかった。そんなに気に入らなかったのか?それかやっぱりあいつの個性だったのか。とにかく理由が何であれあの時、試験中であることを一瞬忘れるくらいには衝撃が走ったことは事実だ。個性だったら許さねえ、俺にこんな下らねぇ個性掛けたこと後悔させてやる…普段ならそう考えただろう。何故だかそんな気も起きない。そういや名前知らねえ。なんだ。
暫く経って合格通知が届き、職員室へ報告に行った日の家までの帰り道。
まさかあのデクが受かってるなんて何かの間違いだろう。きっちり校舎裏で質問攻めにしてやったが、返ってきたのは「勝ち取った」だとか意味不明な言葉。
むかつく。いや今はそれよりも
「(……………ちゃんと受かってんだろうな、あの女)」
思い出すのは最近夢にまで出てくるあの女のこと。
試験を受ける前は自分が合格することに集中していられた。
模試でA判定を取り筆記の自己採点も高得点、実技は言うまでもなく自信しかなかった。とは言え念には念を、だ。油断などしていられない。
俺が雄英に合格することは、俺のヒーローへの通過点でしかないのだ。
そこに余計なもの…例えばトモダチやらコイビトやらは必要ない。はず、なの、だが
「(ヒーロー科の入試に居たってこたぁ当然ヒーロー科だ、受かってるとしたら…同じクラスになる可能性も、ある……)」
あの弱っちそうな見た目では、相当強い個性でもないと勝ち残ることはできないだろう。他人の心配などしたことはないが、あいつこそ怪我などしていないか気になった。
悶々としたまま入学式の日を迎え、教室の扉を開けた瞬間あの女の姿をみとめ、柄にもなく物凄くテンションが上がったのは言うまでもない。
▽▲▽
(マジかよ…超絶一目惚れじゃん)
(好きになったキッカケは?って聞いただけなのにめっちゃ語るしな)
(どんだけ好きだよ…)
(おら、約束だぞさっさと画像寄越せ)
(はいよっと。LINEでいいか?)
(お前体育祭のレクには参加してなかったもんな…あの切原のチア姿を生で見られなかったなんて可哀想な奴)
(全身と胸のアップと太もものアップどれがいい?)
(ハァ!?全部に決まってんだろが!送ったらさっさとデータ消せ!他に持ってる奴もだ!!あと誰が撮ったんだコレ!!胸とか見てんじゃねえぞいい仕事しやがって…これで全部だろうな?)
(爆豪お前本音が………ああ、それで全部だと思うぜ。因みに撮ったんは峰田な)
その後廊下で黒焦げになった峰田の姿が発見されたという。
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