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爆豪勝己にすれば納得がいかないのは無理もないことだ。“個性”の発現は齢4歳まで。
今まで“無個性”だと思っていた幼馴染に急に“個性”が発現したのだから、今までずっと騙していたのかと勘ぐった。奇跡だと喜ぶ静とは対照的に、爆豪の中ではふつふつと納得いかない怒りが込み上がってくる。
「やっとヒーローらしい記録だしたよー」
「指が腫れ上がっているぞ 入試の件といい…おかしな個性だ……」
「え、入試の時も…?」
お茶子が緊張をほぐすように腕を伸ばして声を上げる。それに続いて声を上げた飯田の言葉通り、視線の先の出久はぐっと手を握りしめて少し痛そうな表情を浮かべて居る。その握りしめられた手の人差し指が少し腫れ上がっている。
しかも飯田の発言を聞く限り、入試試験の時も今回のように自分自身で力を使ってその力を集中させた箇所を負傷したらしい。
「いず―、」
「どーいうことだこら ワケを言えデクてめぇ!!」
兎に角記録も出たし、負傷した様子の指は大丈夫かと彼に駆け寄ろうとした瞬間自分の真横を物凄い勢いで風を切りながら横切って行った影に思わず息を飲む。爆豪だ。
「うわああ!!」
どうやら彼は本当の本当に出久が個性を持っている事を知らなかったようで、今の結果に納得がいかなかったのか今にも出久に殴り掛かる勢いで突進していったのだ。物凄いで駆けて行く彼をクラスメイトはただ唖然と見つめている。
バチバチと腕に炎を纏わせながら駆けて行く爆豪の姿にとっさに出久を護らなければ、という考えが働いて反射の如く腕を前に翳し出久をその場から移動させようと意識を集中させた、その時―…
「んぐえ!!」
「!?」
「ぐっ…んだこの布、固っ…!!」
爆豪の動きが出久へと届く前にピタリと止まった。というのも彼の体を包帯のような帯状の布が捕えていたのだ。
その元へと視線を向ければ、相澤がその布を操っていた事に気づいた。
「炭素繊維に特殊合金の鋼線を編み込んだ"捕縛武器"だ。ったく、何度も"個性"使わすなよ。俺はドライアイなんだ」
("個性"すごいのにもったいない!!)
サラッと凄いカミングアウトを織り交ぜながら言う相澤にクラスのツッコミが見事に脳内で被る。
そんな彼らの脳内ツッコミなんてつい知らず「時間がもったいない、次準備しろ」爆豪の動きが完全に止まったのを確認した様子の相澤は、スルスルと捕縛武器を解き元に戻していく。
此方へと帰ってくる出久に歩み寄り、腫れ上がった指を見て「大丈夫?」と声を掛けると「うん…」と少し困った顔で返された。
そっと触れてみたがやはり痛いらしい。表情を歪めていたし、少し熱を持っている。これは骨が折れているんじゃなかろうか。早く保健室に…なんて思うそんな静の心配をよそに、先生の号令で次々とまだボール投げを行っていないメンバーがボールを投げ始める。
ふと顔を上げて視界に入ったのは、未だその場から動かずこちらを凄い形相で見つめていた爆豪だった。
まるで出久の個性を信じていない、今の出来事を信じていないと訴えているような彼の目と、目が合った気がした。
その後も持久走、上体起こし、長座体前屈と種目をこなし、指を負傷した緑谷はどの種目も痛みで集中出来ずに酷い有様だった。全ての種目を終え結果発表。
開始前に相澤が呈した「トータル最下位は除籍」の言葉が緑谷に重く圧し掛かる。せっかくここまで来たのに。せっかく雄英に入ったのに。初日で……
「ちなみに除籍はウソな。君らの最大限を引き出す、合理的虚偽」
はーーーー!!!???
あっさりと覆されたルールに懸命に取り組んだ緑谷は内臓を吐き出す勢いで驚いた。
隅から隅まで焦り、急かされ、踊らされる。これが最高峰、雄英高校ヒーロー科。なのか?
「これにて終わりだ。教室にカリキュラム等の書類あるから、目ぇ通しとけ」
そして最後に出久に保健室利用届を渡し、先生は去って行った。負傷した緑谷は保健室へと向かい、他の生徒たちは「なんだかんだで面白かったなー」とぞろぞろ教室へ戻っていく。
兎にも角にも無事に入学初日のテストを乗り越えた。
明日からこの高校で改めて学校生活が始まると思うとホッとしたような、逆に不安のような不思議な気持ちでいっぱいになりながらも宙に表示された自分の名前とその順位を眺めた。
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