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「今日から君らには、ひとり最低でもふたつ……、必殺技を作ってもらう!!」
「「「学校っぽくてそれでいて、ヒーローっぽいのキタァア!!!」」」
「必殺!コレスナワチ必勝ノ型・技ノコトナリ!」
「その身に染みつかせた技や型は、他の追随を許さない。戦闘とはいかに自分の得意を押しつけるか!」
「技は己を象徴する!今日日必殺技を持たないプロヒーローなど絶滅危惧種よ!」

教室で相澤の説明を聞いていれば、ドアが開きエクトプラズム、セメントス、ミッドナイトたちがセリフとともに現れた。どうやら、生徒たちの授業を見てくれるため集まってくれたようだ。

詳しい話はコスチュームに着替えて体育館γでやるとのことで、皆は早速移動した。集合した体育館γは通称、トレーニングの台所ランド、略してTDL(ちょっとヤバそうな)というらしい。ここはセメントス考案の施設で生徒一人一人に合わせた地形や物を用意できるから、そういう意味での台所だ。

「ヒーローとは、事件・事故・天災・人災……、あらゆるトラブルから人々を救い出すのが仕事だ。取得試験ではその適正を見られることになり、そしてそれを毎年違う試験内容で試される」
「その中でも戦闘力はヒーローにとって極めて重視される項目となります。備えあれば憂いなし!技の有無は合否に大きく影響する」
「状況に左右されることなく安定行動を取れれば、それは高い戦闘力を有している事になるんだよ」
「技ハ、必ズシモ攻撃デキル必要ハナイ」
「中断されてしまった合宿での個性伸ばしは……、この必殺技を作り上げるためのプロセスだった。
つまりこれから後期始業まで……残り十日余りの夏休みは、個性を伸ばしつつ必殺技を編み出す…………、圧縮訓練となる!」

そうこうしているうちにセメントスが地形を動かして生徒の練習場所を作り上げ、そこにエクトプラズムが生徒の数だけ分身して待機した。

「尚、個性の伸びや技の性質に合わせてコスチュームの改良も並行して考えて行くように。プルスウルトラの精神で乗り越えろ、準備はいいか?」
「「「はい!!!」」」
「ワクワクしてきたぁ!!」

こうして、早速A組一同は必殺技を編み出す圧縮訓練に取りかかったのだ。

▽▲▽

仮免許取得試験まで、一週間を切った。入浴時間も終えあとは寝るだけという時間、クラスの女子たちは寮の談話室で集まる習慣ができつつあった。
長いソファの左端に座っていると、斜向かいの芦戸と耳郎が一日の疲れを含んだ声で言う。

「フヘエエ毎日大変だァ……」
「圧縮訓練の名は伊達じゃないね」

その疲労感は当然共感できる。
静は苦笑し、八百万は冷静にあと一週間もないですわ、と現状を振り返る。

「ヤオモモは必殺技どう?」
「うーん。やりたいことはあるのですが」

今の所は個性を伸ばしておく方が必要だとのこと。
葉隠は続いて蛙吹にも同じ質問を投げかける。こちらは順調に進んでいるようで、透ちゃんもびっくりよ、と気になる言葉をさらりと残した。

「お茶子ちゃんは?」
「……」

しかし次の相手である麗日は、パックの牛乳を吸うストローをくわえたまま、ぼーっとして反応を見せなかった。
不思議に思って覗き込む周りにも気づいていないようだ。
蛙吹がもう一度、名前を呼んで肩をツンとつついてみた。

「お茶子ちゃん?」
「うひゃん!!」
「わっ」

つつかれたのには過剰に反応して大げさに身を跳ねさせる麗日に、蛙吹とは逆隣に座っていた静まで驚かされた。

「お疲れの様ね」
「いやいやいや!!疲れてなんかいられへん、まだまだこっから!」

蛙吹の言葉に慌てて首を振るも、やはり何か引っかかっている様子で、麗日は眉を下げて続けた。

「……のハズなんだけど……何だろうねぇ。
最近ムダに心がザワつくんが多くてね」

そんな麗日のふくふくした頬が少し赤みを帯びているのを見て、静はパチリと瞬きした。

「恋だ」
「ギョ」

無遠慮な芦戸からバンと提示された単語に、麗日は明らかに真っ赤になって焦りを見せた。

「な、何!?故意!?知らん知らん!!」
「緑谷か飯田!?一緒にいること多いよねぇ!」
「チャウワチャウワ!!」

容赦ない追求にもどんどん慌てて、ついには逃げるかのようにふわりと自身を天井近くまで浮き上がらせた。
以前はすぐ顔を青くしていた技だが、特訓の成果か安定してきたらしい。
麗日の手から落ちた牛乳パックを何気なく拾いつつ、静も麗日を見上げていた。

「誰ー!?どっち!?誰なのー!?」
「ゲロッちまいな?自白した方が罪軽くなるんだよ!」

女子特有の連携を見せ始め、下からヤイヤイとはやし立てる声に麗日はますます慌てる。

「違うよ本当に!私そういうの本当……わからんし……」
「無理に詮索するのは良くないわ」
「ええ。それより明日も早いですし、もうオヤスミしましょう」
「ええー!!やだもっと聞きたいー!!何でもない話でも強引に恋愛に結び付けたい――!!」

比較的大人な考え方の蛙吹と八百万の助けもあって、麗日へのそれ以上の追求は許されなかった。
芦戸は残念そうに声をあげて、それなら!と今度は静の方を見てくるので嫌な予感。

「照己はどうなのかな!?」
「っ、え、ど、ど、どういうこと…?」
「だってさー爆豪が唯一名前呼ぶのって照己だけだし、あとなんか最近、二人イイ感じじゃない〜?」
「そ、そ…そんなことない…ないです…!」
「でも確かに静ちゃんは最近、爆豪ちゃんに怯える様子がないわ」
「心開いた感じだ!」

蛙吹たちの言う通り、静はあの上野事件で爆豪と共闘し合ってから以前より彼とまともに会話できるようになっていた。
今までなら爆豪が一方的に怒り怒鳴ってくるので、静がそれを怖がり自らも近づこうとしなかったのだ。
しかし、最近は彼も滅多なことでは怒鳴ってこないし、静も安心して話せれるようになった。

「あ、あと!私ちょっと思うんだけど、轟くんもなんか静ちゃんに最近優しくない?!」
「それ私も思ってた!しかも肝試しのとき、緑谷と照己の方じーっと見てたよね?もしかしてヤキモチ焼いてたんじゃない!?」

話はさらに爆豪から轟まで広がっていき、女子たちのテンションはヒートアップしていく。

「わ…私……恋なんてまだよく分からないから……勘弁してほしいです…」

しかし、静としてはまだ恋心がよく分からないもので、このように恋バナをふられても困るだけ。
その様子を見かねた八百万がやんわりと止めに入り、なんとなくこの場はお開きとなった。
ちぇーっとつまらなさそうな芦戸もその場を離れたので、やっと麗日が降りて来た。

「し、静ちゃ〜んっ」
「お、お茶子ちゃん…っ」

お互い同じ苦労を味わったもの同士、気持ちが合致したようで、二人は強く手を取り合っていた。

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