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照己さんだ、と声がかかって、静はソファ越しに振り返った。

「お茶子ちゃん……また、牛乳飲んでる」
「ヒーローになるには、まず体づくり!基本やん!」
「なるほど」

ふんすと拳を握ってみせる麗日に、静はクスクス笑って答えた。シャツにハーフパンツのラフな格好で、右手にはストローの刺さった牛乳のパック。
そういうことなら自分も牛乳を飲む習慣をつけた方がいいのかもしれない、なんて思っていると、麗日は静の斜め前に座った。
ちゅーっと牛乳を吸い込んで、ぷはあっと息をつく様はまるで……年頃の女の子を評するには酷な例えが出てきたので、省略しておく。

「今日はみんなお疲れやねぇ」
「そうだね…」

麗日の言う通り、合宿から始まり夏休み中ずっと目標としていた仮免許試験は、想像していた以上に骨の折れるイベントだった。
各々がこれまでの経験を生かして臨んだ結果は、若干二名の不合格者は出てしまったが、静も麗日もしっかりと仮免許を受け取ることができた。
安堵もあってか、多くの生徒が風呂に入ってそのまま部屋に引っ込んでしまった。
キッチンに隣接する共用スペースのこの場所も、静と麗日以外誰もいない。

試験中大変だったことだったり、他校の受験者の珍しい個性だったり、最後にもらった講評の内容だったり。麗日が興奮冷めやらぬといった様子で色々話して聞かせてくれる。静はそれに相槌を打ちながら、時々自分の話も口に出した。
そうしてしばらく会話を続けていると、麗日がふと声量を落とした。

「結局……爆豪くんが落ちたんて、態度悪かったせいってホント?」

少し心配そうな面持ちで、遠慮がちに尋ねてくる。
静はうーんと苦笑して返した。

「講評は絶対見せてくれなかったけど……多分、そうだろうね」
「そっかぁ……残念やんなぁ。まさかツートップ落ちるとは……」

折角ならみんなで合格したかったね、という言葉には素直に頷いた。
最終合格者の名前をずらりと並べた掲示に、雄英高校1-Aの中では爆豪と轟の名前のみがなかった。
轟については静はよく知らないが、ギクシャクした様子だった同学年の士傑生と試験中にも関わらず喧嘩に発展したらしい。
そして爆豪については言わずもがな。試験中は基本的に隣にいただけあって、減点対象となっただろう言動にはいくつも心当たりがあった。

「爆豪くんはね……本当、言葉と態度で損してると思うの…」

前々からわかっていたことではあるが。
ため息混じりな静の台詞に、今度は麗日が苦笑した。

「というか、うーん、性格……?」
「ふふ、性格かぁ。お茶子ちゃんって意外とハッキリ言うね」

直球の言葉がなんとなく面白くて、静は小さく笑った。
対して麗日は少し慌てた様子で手を振る。

「あっ、いや、貶してるわけちゃうくてね!?」
「わかってるよ……でも、爆豪くんの性格も、あれはあれで、良いところもあるんだよ」

静がそう言うと、麗日ははたと動きを止めた。

「良いところ……」
「うん。一直線なとことか、負けず嫌いなとことか、自信家なとことか……まあ、誤解されやすいところでもあるんだけど」

自他共に対してストイックなところも、小手先の誤魔化しをしないところも、完璧主義も。挙げ始めればいくつも出てくる。静はそんなことを思いながら、ふわり微笑んで見せた。

「ちょっと、言動がキツイだけなの」
「ちょっと、かなぁ……」

麗日は少し眉を下げて笑ったが、それ以上は何も言わなかった。
代わりに、ちらりと静を見ると手にしていた牛乳のパックをキュ、と握った。

「ねえ、静ちゃん」
「?」
「言いたくなかったら、別にええんやけどね――」

少し逡巡するように間を置いてから。

「――爆豪くんのこと、好き?」

様子を伺うような上目遣いの丸い目を見て、静は一度ゆっくり瞬きして、目を細めた。

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