校舎からグラウンド・βに出る通路を抜けると、そこはグラウンドと言いつつ個性把握テストの時に使用した校庭とは一変し、模擬都市セットのような場所になっていた。
 個性のためのシンプルな装いもあれば、メカを装備した者、コミックヒーローのようなマントやゴーグルをつけた者とそれぞれのセンス・趣味も反映されていた。
既に皆がそれぞれの戦闘服に身を包み、これから行う戦闘に心を躍らせていた。

 「うひゃ〜!静ちゃんのコスチューム凄いね!なんか…女神って感じ!!」
 「そ、そうかな…」
 「私、要望ちゃんと書かなくてパツパツんなった…」

 一見宇宙服を思わせるパツパツスーツに身を包みながら少し恥ずかしいと頭を掻くお茶子。
 
 「あ、デクくん!?かっこいいね!!地に足ついた感じ!」
 「麗日さん、静ちゃ…うおお…!!」

 どうやら着替えに時間を食ってしまっていたらしい出久が通路を抜けて出てくるなり、それに気づいたお茶子が声を掛ける。その声に振り返って見れば、緑色のジャンプスーツに身を包んだ出久がそこに立っいて、彼は此方を振り返るなりマスクを押さえながら声を上げていた。

 周りもお前のスーツイイねとか何とかザワつく中、その言葉を一掃するかのように「良いじゃないか皆、カッコイイぜ!!」と声を張り上げて褒めてくれたオールマイトに、皆自然と静かになった。すると傍に居たフルアーマーで顔まで見えない為に誰だか分からないが生徒の1人がガッションと音を立てつつ挙手した。

 「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか」

手を上げ質問をしたのは全身をメカ装備で包んでおり誰かは分からなかったが、隣に立つ緑谷はその声を聞いて飯田君だったのかと思った。

「いいや、もう二歩先に踏み込む。屋内での対人戦闘訓練さ!ヴィラン退治は主に屋外で見られるが統計で言えば屋内の方が凶悪敵出現率は高いんだ。監禁、軟禁、裏商売……このヒーロー飽和社会、真に賢しいヴィランは屋内に潜む!君らにはこれから”ヴィラン組”と”ヒーロー組”に分かれて、2対2の屋内戦を行ってもらう!」
「基礎訓練もなしに?」
「その基礎訓練を知るための実践さ!ただし今度はブッ壊せばオッケーなロボじゃないのがミソだ」

一般入試を通過してきた生徒たちは入学試験時、街並みが復元されたこの演習用グラウンドで敵を仮想したロボットとの戦闘を経験していた。しかし今回は機械ではなく対人訓練。より実践を意識したプログラムとなっている。
勝敗のシステムは?分かれるとはどのような分かれ方を?
生徒たちから口々に飛んでくる質問に「先生1日目」のオールマイトは苦戦する。

本戦闘訓練に設定された状況は、核兵器を隠し持った敵のアジトへの潜入を仮定している。
生徒たちは「ヒーロー」チームと「敵」チームに分かれ、ヒーローは制限時間内に敵を捕まえるか、アジト内のどこかにある核兵器を回収すること。
敵は制限時間まで核兵器を守るかヒーローを捕まえることが条件。

「コンビ及び対戦相手はくじだ!」
「適当なのですか!?」
「プロは他事務所のヒーローと急造チームアップすることが多いし、そういうことじゃないかな……」
「そうか……!先を見据えた計らい、失礼しました!」
「いいよ!早くやろ!!」

そうして20名のA組生徒たちはくじ引きにより二人1組、10チームに分かれた。

「よろしくね、私、葉隠透。照己さん、だよね」
「……よろしくお願いします」

まだ入学2日目、誰もが実力はおろか名前も怪しいところ。
それぞれ互いの名前を確認しながら手探りでチームが出来あがっていった。
そして早速1組目の対戦チームがくじで決定し、爆豪と緑谷に緊張が走った。
第1戦、「ヒーロー」緑谷・麗日組VS「敵」爆豪・飯田組。

まさか、しょっぱなからこんな組み合わせになるなんて誰が予想できただろう。
半ば放心状態になりかけている静に気づいたのかそろそろと配置に向かい始める出久が此方を振り返った。

「静ちゃん」

微かに聞こえたその声にハッとして彼を見る。すると彼は笑顔でグッと親指を立てて見せた。

そうだ。自分が心配する必要なんて無い。今までの彼とは違う。否、静が知っている出久も静が知らない出久もこんな神様の悪戯に屈する出久じゃない。彼の笑顔に少しだけホッと息を吐いて口元に両の手を持って行く。

「(がんばって)」
「(うん)」

誰にも聞こえないように口パクで伝える。幼いころからこんな遊びをしていたから何となくお互いの言葉が口の動きで分かるようになっていたのを思い出した。
2人が配置に向かうのを見届けて踵を返し、静もチームメイトと並んで皆の後を追った。

その背中を遠くから見つめている1人の存在にも気づかずに。

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