「敵」チームの爆豪と飯田が建物内へと入り核兵器の隠し場所を模索し始めると同時に、「ヒーロー」チームの緑谷と麗日は互いに連絡を取れる小型無線をつけ建物内の地図を覚え始めた。他の生徒たちは建物内の各所に設置された定点カメラの映像を観察するため地下のモニタールームへ移動する。

「照己さん、私これだから隠密行動超得意!」
「う、うん…それでいきましょう」

暗がりのモニタールームに入るといくつもの画面が明るく光り、室内をぼんやり照らした。
5階建ての建物内をあらゆる角度から映しだした定点カメラが張りぼての核兵器と共に爆豪と飯田の姿を捉えている。

「対人戦闘訓練第1戦、スタート!」

開始の合図と共に屋外にいる緑谷と麗日は潜入口を探し始める。開いている一つの窓から建物内へと潜入し、頭に入れた地図を思いながら、敵の作戦を予測しながら忍び足で屋内へと進んでいった。しかし状況は早くも展開する。「敵」チーム・爆豪のいきなりの奇襲、個性の「爆破」を多用しての激しい殴打戦。
音声は伝わってこない定点カメラの映像では、破壊力のある爆豪の一方的な攻撃に見えたが、緑谷と頻繁に言い合っているような画から何やら私怨に捉われた暴行にも見えた。

しかし緑谷は爆豪が自分だけを狙ってくることを読んでおり、麗日を上階へ行かせると個性を使わずして強力な爆豪とギリギリではあるが対等に渡り合っていた。
必死に頭を働かせ、逃げ隠れしながらも作戦を立て、これまでずっと見てきた強い爆豪に勝つ算段を立てている。
個性を使ってこない緑谷に更に激情する爆豪。

制限時間は15分。それまでに何らかの決着をつけなければ「敵」チームの勝ちとなる。
残り時間も尽きようとしてきたころ、隠れて算段を練る緑谷を見つけた爆豪は、両腕につけた大型の装備を構えた。
当然各生徒の装備も承知しているオールマイトは制止するも、爆豪は聞かずに発射する。装備内に溜まった爆豪の汗は大量の燃料となり、装備で威力を膨大に上げた巨大な爆破を放った。壁が突き破れた建物はガラガラと激しく崩れ、地下のモニタールームまで響いてくる。

「先生、止めたほうがいいって!爆豪あいつ相当クレイジーだぜ!」
「いや……」

爆豪が装備を構えた時は危険と判断し止めたオールマイトだったが、怒りに駆られているようで爆豪の妙に冷静な部分にも気付いていた。

『爆豪少年、次それ撃ったら強制終了で君らの負けとする。
屋内戦において大規模な攻撃は守るべき牙城の損壊を招く! 
ヒーローとしてはもちろん、ヴィランとしても愚策だそれは!大幅減点だからな!』

音声で攻撃を止められた爆豪はさらに苛立ちを増幅させ、再び緑谷に殴りかかる。
緑谷は応戦しようとするも爆豪の画一的ではない攻撃にやられる一方だった。

「目くらましを兼ねた爆破で軌道変更、そして即座にもう一回……。考えるタイプには見えねぇが意外と繊細だな」
「慣性を殺しつつ有効打を加えるには左右の爆発力を微調整しなきゃなりませんしね」
「才能マンだ才能マン、ヤダヤダ……」

画面の一方的にも見える殴打戦に生徒たちの評論が飛び交う。
爆豪の一方的な暴行に緑谷はどんどん策を失い逃げ惑う。緑谷が逃げれば逃げるほど激情する爆豪。

「なんで個性使わねぇんだ、俺を舐めてんのか!?ガキの頃からずっと!そうやって!!」
「違うよ」
「俺を舐めてたんかてめェはぁ!!」

言い合いながら闘う二人は必死にもがいているようにも見え、オールマイトはマイクを握り締めながら、止めるべきと考えながら、止めたくはなかった。

「君が凄い人だから勝ちたいんじゃないか!勝って、超えたいんじゃないかバカヤロー!!」

逃げる一方だった緑谷が初めて見せる抵抗。
ついに拳を握った緑谷に応戦する爆豪。
あまりの激戦に観察する生徒たちも拳を握って画面を見入る。

「先生!やばそうだってコレ!先生!!」

どこで止めるべきか。教師としての判断。師としての期待。
迷い、止めかけたその時、攻撃に出た緑谷は真っ向する爆豪ではなく天井に巨大なパワーのパンチを繰り出した。
振りかぶった衝撃が上階まで建物の中を突き抜けていく。それは5階中央のフロアにいた麗日と、核を守る飯田の立つ床をも破壊しコンクリートを巻き上げた。崩れ落ちる柱。麗日はその柱の重力を無効化し振りかぶると周囲のコンクリートを撃ち飛ばし飯田を攻撃し、飯田が飛んでくるつぶてをガードしたその隙に自身を無重力化し飛び跳ね、目標の核を回収した。戦闘訓練第一戦目は「ヒーロー」チームに軍配が上がった。

個性を使用した緑谷はまた腕を負傷し、爆豪から受け続けたダメージも合わさって即刻保健室へと運ばれた。
真っ向で勝負し、緑谷を倒すことで頭をいっぱいにしていた爆豪は、作戦を立て任務を遂行しようとしていた緑谷の策略に気付かず、結果負けた。
緑谷に負けた。
爆豪はその現実を受け入れられず、打ち震え、激情に乗っ取られようとしたが、突如現れポンと肩に手を置いたオールマイトに誘導されモニタールームへ戻り、全員での講評が行われた。

すると程なくして、初戦の出久を覗いた3人が帰ってきた。爆豪くんは出久にやられた事がよほどショックだったのかすっかり消沈している。そして飯田くんに連れられて戻って来たお茶子ちゃんは少々顔色が悪い。どうやら個性の制約の関係のようだ。
そんなすっかり疲れ切っているような様子の3人がそれぞれの感情を表情に浮かべながら私たち待機組の正面に並んだところで、初戦の講評が始まった。

「まあつっても…今戦のベストは飯田少年だけどな!!」
「なな!?」

最初に口を開いたオールマイトの口から飛び出した一言に、負けた事で少し残念そうな表情を浮かべて居た飯田が驚き声を上げる。

「勝ったお茶子ちゃんか緑谷ちゃんじゃないの?」

蛙吹がオールマイトの放った一言に、口元に人差し指を当てながら将にどうして?というように首を傾げて問い掛ける。
確かに結果は飯田の居たDチームは負けている。主な原因はどうであれ、評価されるのは出久とお茶子だと思っていた誰もが首を傾げている。

「何故だろうなあ〜?わかる人!?」

オールマイトが挙手と発言を求め、己自身の手を挙げる。あまりの速さで手を挙げる瞬間が見えないほどの勢いだった。
不意に「ハイ、オールマイト先生」と八百万がすぐに手を挙げて発言する。

「それは飯田さんが一番状況設定に順応していたからです。
爆豪さんの行動は、戦闘を見た限り私怨丸出しの独断。そして先程先生も仰っていた通り屋内での大規模攻撃は愚策。緑谷さんも同様の理由ですわ」

確かに爆豪は私怨が大きすぎて周りが見えなくなっていた為に建物を半壊までとはいかないが、壊した。きっと彼の場合は訓練の間ずっとヒーローチームがどうとか敵(ヴィラン)チームがどうとか核兵器を守らなきゃとか何も考えていなかっただろう。考えていれば、きっとあんな行動はしない。
そんな爆豪に対応するために出久も個性でかなり無茶をした。建物を下階から上階にむけ大穴を開けて見せた。本来であれば、核の位置がハッキリとしていない状況でこんな真似は出来やしないだろう。

「麗日さんは中盤の気の緩み、そして最後の攻撃が乱暴すぎたこと。
ハリボテを"核"として扱っていたらあんな危険な行為出来ませんわ」

確かに訓練とは言え、緩み過ぎてもいけない。今回は核がハリボテだったから良かったけど、本物であればあんな出久が開けた大穴で壊れたビルの破片をこれまた壊れた柱で野球のバッターが如く打って攻撃するなんて真似出来やしない。

「相手への対策をこなし、且つ“核の争奪”をきちんと想定していたからこそ、飯田さんは最後対応に遅れた。
ヒーローチームの勝ちは"訓練"だという甘えから生じた、反則のようなものですわ」
「な…なるほど」

非の打ちどころがないほど的確に分析されている八百万さんの細かな講評に、クラス中の誰もが何も言えなかった。
八百万からの予想外の高評価を受けた飯田はジーンという効果音が目にみえそうなぐらい感動しているようだった。
感激のあまり、微かに震えているようにも見える。

「まあ…正解だよ、くう…!」

飯田少年もまだ固すぎる節があったりする訳だが…と付け足しながら、八百万の見事な講評にオールマイトもグッと親指を立ててみせる。
が、あまりにも彼女の講評が的確過ぎたのか予想外だったのか若干冷や汗をかきながら震えているように見えた。

「常に下学上達!一意専心に励まねば、トップヒーローになどなれませんので!」

腰に手を当てて言い切る八百万百。流石、目指しているのが"トップヒーロー"というだけあって日頃から心がけている事が違う。
やはりこれぐらいの心持ちはヒーローになる上で毎回必要となってくるのだろう。正確に分析する事で、今後の自分にも役立つかもしれないし。

静はぼんやりと講評を受ける飯田達を見つめ、その目を爆豪へと移した。少し俯いているような彼の表情はここからは見えなかった。

「さぁどんどん行こう!第二戦目は……ヒーロー、轟・障子組VSヴィラン、葉隠・尾白・照己組!」

再びくじが引かれ、第二戦目の組が決定する。

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