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「まったく君って本当にドジだよね。弟の屋台に行くって言っておきながら、いつのまにか人質になってるし」
「ご…ごめんなさい」

スタスタと足早に歩いていく雲雀の後ろにいる蛍は、彼の辛辣な言葉に打ちのめされ、がっくりと肩を落としていた。
雲雀が歩く速さは一向に衰えることなく、ついていくのに精一杯だったから、口答えする暇もなくただひたすら謝るしかない。

「一人で勝手にひったくり犯追いかけて、君にどうにか出来るわけないでしょ。
あの時風紀委員が君を見つけてなかったら、いくら僕でも間に合わなかったかもしれないじゃないか」
「ごめんなさい…」
「それに、あの赤ん坊にはお礼するくせに、僕には何にもないの?」

――え。

彼の機嫌の悪さの原因が子供みたいで意外すぎる。きょとんとする蛍に呆れた顔をした雲雀は「もういいよ」と拗ねてしまった。ぷいっとそっぽを向く彼に慌てて声を上げる。

「あ、雲雀先輩、助けて下さりありがとうございました…!
私、今手持ちはあまりないのですが…ろ、労働なら…」
「(…鈍い…)そういうことじゃなくて」
「何でも言うこと聞きますので…」
「…何でも?」
「――は、はい」

突然足が止まった雲雀にぶつかりそうになり、蛍は慌てて立ち止まる。
口元に笑みを浮かべながら振り向いた雲雀は、じゃあ、と一言だけ告げる。

「僕の傍から離れたら咬み殺す」

そう言って蛍の手を取った雲雀が歩いていく先は、出店が並んでいる通り。

「ひ、雲雀先輩…?」
「お腹空いた、さっさと行くよ」

雲雀の言い方からすると、どうやら屋台に向かうようだ。引き続き休まず見回りをするものだとばかり思っていたがそうではないらしい。
今度はゆっくりと歩いてくれる雲雀にほっとして息を吐いた蛍であったが、気持ちが落ち着いてきたと同時に気付いてしまった。いつのまにか自分の腕が雲雀にしっかりと掴まれていることに。

「(ひ、雲雀先輩と…て、てを…手を繋げるなんて……っ!)」

カッと頬が熱くなる。自覚した途端、触れている部分に一気に熱が集まる。
心臓が全力疾走した後のようにバクバクと波打って、血圧も急上昇してしまっている。
蛍はできるだけ心臓をもたせるためにも、繋がれたままの手を意識しないように雲雀の背中をじっと見つめて歩き出した。

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