翌日、集まった下忍達の前には、壮大な大自然が広がっていた。森である。
果てしなく暗く、今にも何かが飛び出してきそうな薄気味悪さがある。フェンスには"立ち入り禁止区域"と書かれた札が貼ってあるが、そうでなくとも遠慮したいところだ。
「ここが第二の試験会場、第四十四演習場。別名、死の森よ」
下忍達の前でアンコがそう口火を切った。サクラはごくりと固唾をのむ。「なんか、怖いわね」と呟けば、アンコは意地の悪そうな笑みを零す。
「フフ。ここが死の森と呼ばれる所以、すぐ実感することになるわ」
「......フンっ。"ここが死の森と呼ばれる所以ー、すぐ実感することになるわー"、なーんて脅しても全然平気!!怖くないってばよ!」
すると調子に乗ってびしっと指を突き付けたのはナルトだ。七班がそれぞれ程度は違えど呆れたような顔をする。アンコのどこが挑発に乗らないような大人に見えるのか。案の定、アンコは完璧すぎる笑顔をナルトに向けていた。
「そう、キミは元気がいいのねェ」
クナイは一瞬で放たれた。目を丸くしたナルトの頬にツっと血が伝う。下忍達にどよめきが走り、アンコはゆっくりとナルトの背後に回り込む。
「アンタみたいな子が、真っ先に死ぬのよねぇ......あたしの好きな、赤い血ぶちまいてね」
動揺で抵抗できないナルト。アンコは嫌な笑みをはりつけて、ナルトの頬の血を舐めとった。
しかし、突如としてその笑顔が真剣なものに変わった。
再び取り出されたクナイは、刹那で背後に忍び寄ってきた草隠れの受験者に向けられていた。その人物は異様に長い舌でクナイを巻き、アンコに差し出しているだけなのだが、殺気は微塵も隠れていなかった。
他の下忍たちでさえ、びくりと一瞬震える。
「まぁいいわ、それじゃあ第二の試験を始める前にこれを配っておくわね」
アンコは懐から白い紙の束を取り出す。
「同意書よ。これにサインしてもらうわ」
「…何の?」
ポカンとするナルトを見たアンコは微かに頬を赤らめ、照れたように口を開く。
「こっから先は死人も出るから、それについて同意とっとかないとね!私の責任になっちゃうからさ〜」
アハハと笑うアンコに対し、下忍達は誰一人として笑顔を見せない。しかしアンコは構うことなく説明を続ける。
「じゃ!第二の試験の説明を始めるわ。
早い話、ここでは極限のサバイバルに挑んでもらうわ」
究極のサバイバル。120時間という期限の中での生死を賭けた巻物争奪戦。目指すは、演習場の中央。死ぬかもしれないという危険の上で 配られた同意書。受験者のほとんどが汗ばんだ手でそれを持つ。
「合格条件は、天地両方の書を持って、中央の塔まで三人または四人で来ること」
「......つまり巻物を盗られた13チーム、半分が確実に落ちるってことね」
サクラがそう返す。とはいえ、それは最高の数というだけだ。実際はその途中でリタイアする者も出てくるだろう。行動距離は日を追うごとに長くなり、回復に当てる時間は逆に短くなっていく。おまけに辺りは敵だらけで迂闊に眠ることもままならない。
しかし途中でやめたりすることも不可能。ギブアップを決めても、五日間はこの"死の森"の中で過ごさねばならないのである。
「じゃあ、ついでだから失格の条件」
アンコは受験者たちとはまるで反対で実に楽しそうだ。
「まず一つ目。時間内に天地の巻物を塔まで全員で持ってこられなかったチーム。二つ目、班員を失ったチーム、または再起不能者を出したチーム。それと、これは補足。巻物の中身は塔の中に辿り着くまで決して見ないこと」
「と、途中で見たらどうなるってばよ」
「それは、見た時の、お、た、の、し、み!」
語尾にハートがつきそうな程である。つまり第二のルールは信頼性を見るためのものだという。中忍ともなれば極秘文書を扱うこともあるためだ。
「説明は以上!同意書と巻物をあそこの小屋で交換するから、その後ゲート入り口を決めて一斉にスタートよ。最後にアドバイスを一言」
死ぬな。
***
「ホイ、どーいしょ!」
トモエ達は同意書と巻物を交換し、巻物をナルトに預ける。一番危なっかしいナルトに預けるのが逆に安全だと判断したのだ。
トモエ達は"12"と書かれたゲートの前に立つ。試験開始まで後わずか。待ち受けているであろう過酷な状況に、少しずつ心が重くなる。
「中忍選抜第二の試験!開始!」
アンコの声で26のゲートが一斉に開く。
「よっしゃあ!行くぞ!!」
張り切るナルトを先頭に、トモエ達は暗い森へと足を踏み入れた。
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