「トモエちゃん、トモエちゃん」
「なんですか?」
「縄......縄ほどいてくれってばよ......!」
「だって、お弁当食べようとしたんですよね?」
寸分狂っていないトモエの見解に、今の今まで嘆願していたナルトは、言葉を詰まらす他なかった。クスクスと笑うトモエはどことなく楽しそうでもある。「うぅ......」と項垂れるナルトが縛り付けられている丸太には、その弁当が乗っているのだが、いくら腹が減っていても手が動かないので、余計 腹が減るというものである。
そんなやり取りから数分しないうちに、またトモエの口から声が漏れる。
「サスケ、サクラさん」
演習場の木々の奥から見えた人影、サスケとサクラ。
サクラは無傷なようだが、サスケはなにやら泥だらけである。「大丈夫ですか?」と笑顔を浮かべたトモエが聞くと、サスケは何故かムスッとした顔で「平気だ」と答えた。それから不機嫌そうに歩いていく。明らかになにかあったんだろうとトモエは苦笑してから、今度はサクラに視線を移す。
「サクラさんは大丈でしたか?」
「え?」
「気絶してましたよね?かなり顔色悪かったようでしたけど」
トモエがそう口を出すと、サクラはあからさまに顔を引き攣らせた。
血まみれになり、足があり得ない方向に曲がっていて、右手の腕がスッパリ切られていて、クナイや手裏剣があちこちに刺さっていたサスケ......の幻覚をサクラが見ていただなんて知らないトモエは、本気で心配そうに平気?と問う。
「あ......ああ、うん、大丈夫、平気よ......あはは」
「本当ですか?」
「ほ、ホントよ!ホント!」
そんな問答を繰り返し行っている女子二人を遠目で見ているのはサスケ。正確にはトモエの姿を見たサスケは、一人溜め息をついていた。
トモエの体にある傷といえば、ナルトを助けに行った時についたかすり傷ぐらいなものだ。
「(ったく、あんなドベのために)」
「......なんだよ」
無意識にナルトを睨んでいたサスケ。睨まれているナルトはその視線に気づき、口を尖らせて言う。
「......」
「こっち見んなっバーカ!!」
「んだと?このウスラトンカチが」
ナルトの罵倒にサスケも負けじと言い返す。それ以前に縄で縛られているナルトは負け同然なのだが。そんないつまでも続きそうな罵倒合戦に終止符を打ったのは、お互いの腹の虫だった。
ぎゅるるるるるるる......。
あまりにも間抜けな音に、二人ともぴたりと止まる。いいかげん馬鹿らしくなってきたのか、ハァと溜め息をついた両者。ナルトはそっぽを向き、サスケはその場に座り込んだ......時だった。
ボフン、と突然 丸太のそばに煙が現れ、そこにいたのはカカシ。
「おーおー、腹の虫が鳴っとるね、キミたち」
珍しく本をもっていない。腕組みをしながら現れたカカシはそこにいる下忍候補たちを一瞥する。少し離れていた場所にいたサクラとトモエも、自然とカカシの前に出そろう。ゴクリと喉を鳴らしたのはトモエだけではないだろう。
「...ところで、この演習についてだが」
「......」
「ま!お前らはアカデミーに戻る必要もないな」
その言葉に変わりなく驚く四人。喜びで声すら出ないナルトと、ポカンとしつつも頬を染めるサクラと、リアクションは少なくとも「フン」と口元に笑みを浮かべるサスケ。そして、呆然とするトモエ。
「じゃあさ!じゃあさ!ってことは、四人とも!」
ナルトは歓喜で足をばたつかせている。サクラとサスケもどことなく嬉しそうだ。
だが、トモエは一人だけ思案していた。先ほどの茂みの中で、カカシに質問を投げた時のあの表情、あれは単純に力量で合否を決めるという意味ではなかったはずだ。
トモエたちはまだなにもしていない。なのに。
「正確に言うと、三人」
下忍たちに更なる爆弾をカカシは投げた。瞬時に四人とも静まる。
「トモエ以外」
「え......」
「ナルト、サスケ、サクラ。お前らは、忍者をやめろ!」
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