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 あれから二人は同じヘッドホンを色違いで買ったらしい。しかもヒョンがユリの分までお金を出したとか。そのヘッドホン結構な額なのに、二つ分をさらっと払っちゃって、ヒョンのことだから後腐れなくスマートにやったんだろうな。だって人に甘えるのが苦手そうなユリが素直に嬉しそうだったから。
 あぁかっこいいな。俺もヒョンみたいに大人っぽくできたらいいのに。
 
 「あ、呼び出しかかった」
 「何かあったんですか?」
 「そんな大したことなさそうだけど、一応事務所に顔出して欲しいらしい」
 「それじゃあジンさんのおつかいの方は自分たちでしておきます」
 「悪いな。ジョングク、重いもんは持ってやれよ」
 「はい、勿論です」

 今日の目的を終えた後、ジンヒョンからお願いされていた夕飯の買いだしをするため三人で近くのスーパーに向かおうとしたとき、ヒョンは事務所の方から急遽顔を出すよう言われたみたいで、俺とユリの二人で買い出しに向かうことになったのだ。

 最後までユリに気遣いながらタクシーに乗り込むヒョンを見送ってから、とりあえずスーパーに向かって歩き出す。それなのに俺といえば、ユリと二人きりなのに、今日はなんだか気の利いた言葉が何も浮かばない。それにユリは自分から話す方じゃないから、暫くお互いに話の一つも交わせなかった。

 「…あの、ジョングクさん」
 「ん?」
 「少しだけ寄り道してきてもいいですか?」
 「うん、別にいいけど…」
 「ありがとうございます。直ぐ戻ってくるので」

 ユリはそう言って何処かへ小走りで向かっていってしまった。二人きりになってから気まずい空気が流れてたし、きっと居づらい部分があったんだろう。女の子に気を利かせるなんてカッコわる。
 近くにあったポールに腰かけて待っている間、今日あった出来事が頭に浮かんできて思わずため息が出てくる。
 別に今までもユリがヒョンたちと仲良くしているのはよく見られたし、俺もそれぐらい距離が縮まればいいなぐらいに思ってた。でも、何でか今日のユリとヒョンの仲の良さにはそれだけじゃ収まらない感情があって。テヒョニヒョンとユリが一緒にいるときは特に思わなかったのに。
 
 とか、色々考えて思うことが一つあった。
 二人が買い物で仲良く話してても、色違いのものを買ってても、グループのメンバー同士仲が良いんだなぐらいで終わる話なのに、
 
 ―――なんで俺、こんなに気にしてんだろ。

 「これ、良かったらどうぞ」
 「え?」

 そんなとき突然目の前に現れたのは、チョコミントらしきアイスクリームとそれを持ったユリだった。
 
 「そこのお店で買ってきました。ジョングクさん、前にチョコミント好きって言ってた気がして。……あ、違いました?」
 「ううん、合ってるけど…」
 「良かった」
 「わざわざありがとう。ユリのは、ストロベリー?」
 「はい。今はジョングクさんしかいないですから」

 あ、かわいい。
 
 ピンク色のアイス片手に小さく笑ったユリを見て素直にそう思った。いつもクールでミステリアスな雰囲気をしてるけど、好きなものを前にした時の無邪気な感じが、普段とのギャップも相まってか余計にそう感じたのかもしれない。

 ていうか、“ジョングクさんしかいないですから”って、
 俺の前でしか見せないみたいじゃん。

 ユリがイチゴ味好きなのを知っているのは俺とテヒョニヒョンだけ。今ここにヒョンがいたら買えなかったかもしれないけど、俺しかいなかったから普通に買えたみたいで、それが嬉しいって顔に出てるのが可愛くて、そんで、めちゃくちゃ嬉しかった。

 「自分の勝手な勘違いだったらごめんなさい。ジョングクさん、今日ちょっと元気なかったみたいだから、……甘いもの食べたら、元気出るかなって……」
 「……」
 「すいません、単純な考えでしたよね。でも…何か出来ないかなと……あの…」
 「ユリ」
 「あ、はい」
 「気遣わせてごめんね。アイス凄い嬉しい。あとチョコミント好きなの覚えてくれててありがと、なんか、とにかくメチャクチャ元気出た」
 「そう、ですか。それなら買った甲斐がありましたね」
 
 言いたいことをべらべら喋るだけの、ヒョンみたいなスマートさの欠片もないものになっちゃったけど、思ったことを直球で伝えるスタイルも今の自分らしくていいんじゃないかなって。

 さっきまでヒョン絡みでモヤモヤしてたけど、もういいや。
 ユリがやっと俺の前で笑顔を見せてくれたから、今はそれだけでいい。

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