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「おつかれさまでしたー!」
いろんなところからそんな声が聞こえてくる。音楽番組の収録が終わったのだ。
自分たちもスタッフたちに同じように挨拶をして楽屋へと帰っていく。
「疲れたー!」
「楽しかったね〜」
なんて話しながら去っていくメンバーの様子をぼうっと見つめていたとき。
「ユリ」
頭上から優しく名前を呼ばれて顔を上げる。いつも収録が終わると声をかけてくれるのはリーダーであるナムジュンさんだった。
「今日は5曲連続だったけど、大丈夫だった?」
「はい」
「これで仕事は終わりだし、ゆっくり休みなよ」
「ありがとうございます」
リーダーの気遣いに感謝して荷物を片付けた自分は衣装を脱ぐために隣の部屋に行く。
一応配慮として別室で着替えさせてもらっているのだ。でもゆっくりはしていられないのでスタイリストさんに助けられながら衣装を脱いで、手早く私服に着替える。いそいそと楽屋に戻れば、ナムジュンさんが自分の荷物を持っていた。
「持ってあげるからユリも車に行きな」
優しく微笑まれればそれ以上何も言えなくて、黙って車へと向かうしかなかった。乗り込めば既に何人か居て、自分は奥の席に隠れるように座る。
その後に遅れてナムジュンさんとジョングクさんが乗り込めば、全員そろった。ナムジュンさんから荷物を預かろうと立ち上がろうとしたが、目で止められてしまった。
「奥詰めて」
「あ、はい…」
中途半端に立っていた自分にジョングクさんが小さい声で言う。
ジョングクさんが自分の隣にくるなんて珍しいって思って奥に詰めながら周りを見れば、自分の横しかもう席は空いてなかった。
座ってない席は荷物が置いてあったため座れなかったので、しかたなく彼は自分の隣に来たのだろう。
彼が望んで自分の隣になんか来るわけない。
なるべく邪魔しないように、窓の方にピッタリ寄って小さくなる。ジョングクさんはあまり気にしていないようでドサッと座って荷物を横に置いていた。そのままイヤホンを耳に入れて携帯をいじり始める。
自分はそんな彼をチラッと見て、でもジッと見ることはできなくてすぐに目をそらす。そのまま宿舎に着くまで彼の方は見れなくて、ぼーっと窓の外の景色を見ていた。
その間、自分たちの間に会話なんてなかった
ジョングクさんとは別に仲が悪いわけではないと、勝手に思っている。
同い年だからマンネラインとして兄さんたちにはお互い可愛がられている。
マンネだからって一括りにされることも多く、仕事では意外と絡みが多い時もある。そういう時は今の状態からは考えられないほど普通に会話ができている。
自分は殆ど表情が動かない方だけど、ジョングクさんはとても笑顔で話してくれる。
それは仕事だからやっていることかもしれない。
でもいくら仕事と言えど、そうやって場を盛り上げることができるのだから、そこまでジョングクさんが自分に対して負の感情を抱いていないと思っている。
仕事以外でも自分を無視することはないし、全く会話がないわけではないし。
そもそもジョングクさん自身が自分との距離を積極的に縮めたいとは思ってないのだろう。
それでも出会った頃に比べればだいぶマシになったから、それで十分だと思っている。