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朝からユリが元気ない。
現場に向かう途中。マネージャーが運転する車の中で、気だるげに窓に体を預けているユリを見てそんなことを思った。
いつもならそんなこと気にならないのに。というかユリのことなんて意識して見ないから、気付くこともないかも。ユリの体調不良にいち早く気付くのはナムジュニヒョンとかジニヒョンだから。
顔色は悪くないみたいだし、体調不良っていうよりただ元気がないだけの様子みたいだけど。疲れてるのか?
気付いたらその日1日ずっとユリの様子を気にしていた。カメラが回ればちゃんと笑うし、俺とも普通に話す。だからそんな心配はいらなかったかなって思えば。移動中とかまたすごく負のオーラが漂ってて。
笑ったら可愛い癖に、カメラがないところでは滅多に笑わない。いや、違うか。ヒョンの前ではたまに笑ってる。特にテヒョニヒョンの前では。
俺とは普段話さないからもちろん笑わない。笑いかけられたこともカメラの前以外ではないかもしれない。
そして極めつけに、その日のダンス練習で珍しくユリがミスをする場面が何度かあった。普段なら一度見た動きはコピーするかのように覚えが早く、殆ど間違えないひとだったのに。
一人で勝手にミスをしているぐらいなら特に言うことはなかったかもしれない、でも彼女が間違えた動きをしたことで、隣にいた自分に手が当たったことで流石に口に出してしまったのだ。
「…調子悪いなら休憩しててもいいよ」
「ごめんなさい、足を引っ張らないよう頑張るので…すみませんでした」
頭を下げて真剣に謝ってくる彼女の姿を見てるとまるで自分の方が悪いみたいに感じて、(今考えるとガキ過ぎる考えだったけど)、結局女子はこんなものか、なんて勝手な解釈をつけていた。
とか、その程度しか考えていなかった数分前の自分を叱りたい。
「ユリ!?」
通し練習が終わり一度休憩に入った途端、俺の横にいたユリが崩れ落ちるように床にへたり込んだのだ。異変に気付いたナムジュニヒョンが声を荒げ、それから直ぐヒョンたちが総出で駆け寄っていった。すぐ傍にいた俺は突然のことに理解が追い付かず、そのまま突っ立っていただけ。
TH「ユリ!どうしたの?!大丈夫!?」
JM「テヒョン、落ち着いてっ。そんなに大声上げたら驚いちゃうよ」
YG「とりあえず誰か飲みもん取ってこい」
JH「持ってきます!」
NM「ユリ、動けそう?気持ち悪い?」
JN「俺が手を貸すよ、医務室に移動しようか」
「……いえ、ごめんなさい……その、」
ジンヒョンがユリを横抱きしようとしたときだった。ぽつぽつと小さな声で、近くにいるジンヒョンとナムジュニヒョンに何かをつぶやいていた。するとそれを聞き取った二人のヒョンたちは、何かを察したような顔つきでお互いに頷きあっていた。
NM「とりあえず、皆は休憩入ってて。僕たちでユリを運ぶから」
TH「ヒョン!僕も行きます!!ユリ、何かあったんだよね!?病気だったら僕どうしたら……っ」
「違うんです、テテオッパ、これは別に…」
JN「V、ユリは大丈夫だから。病気とかじゃないから、安心して」
TH「病気じゃないって、だってそんなの……………あ!!」
ヒョンの言葉に何かを察してしまったらしいテヒョニヒョンに、ユリもヒョンたちもまさかと青ざめた顔をした。しかしそれにすら気付かない我らの四次元さんは、
「あ、や、やだっ、言わな―――「ユリ、生理なの!?」
とんでもない爆弾発言を大声でかましてしまったのである。
TH「そうなんでしょ!?可哀そうに!オッパが一日背中をさすってあげるよ!生理の時はそうすると楽だって聞いたことあるから!それと、生理って――「とりあえずお前黙っとけ」ゆ、ユンギヒョン?痛い!痛いですぅ!」
NM「………あー…、ヒョン、すぐ医務室行った方がいいんじゃないですか」
JN「あ、そうだね。うん、じゃあ後は頼んだよ」
その後、事務所の廊下でテヒョニヒョンの断末魔が響いたのは言うまでもない。