体育祭1

 何故、こんな時期に体育祭があるのか誰か教えて欲しい。近年は温暖化の影響で学校の運動会シーズンがどんどん遅くなっているらしいが、ここも例外ではなかったようだ。
 まだ転入して二日しか経っていないのに、明々後日が体育祭ですと言われたときは流石の私も動揺してしまった。どの競技に出るかも知らないうえに、クラスリレーなんか突然の乱入者にしか見えないぞおい。
 体育祭が近づいた今は放課後に競技練習することも珍しくなく、私たちのクラスも掃除終了後に校庭へ集合してリレーの練習を行うことになった。他のクラスや上級生たちも同じようだ。
体育祭のメインイベントであるリレーはまずは学年ごとクラス対抗で行い、学年で一番となったクラスが代表となり、学年対抗に出場するらしい。
 とりあえず授業で測った100m走のタイムでリレーの順番は考慮されていくらしいが、私はその記録すら取っていない。担任の教師と体育祭実行委員に連れられ、皆がバトン練習などをしているなか、一人だけタイムを測ることになってしまった。

 小学校の時は当たり前に一番だったが、アメリカに住んでからはこういうことは一度も行ったことはないから今の自分がどれだけ走れるかは分からない。特に女子の場合は成長につれて足は遅くなってしまうものだし、私もここ数年で身長が大分伸びたから速さは落ちているかもしれない。

 「よーい、…どん」

 スタートの合図と共に駈け出せば、記録していた実行委員のクラスメイトが何やら言っいた気がするが走っている私には何を喋っているか聞こえなかった。

 あ、そういえば一度アメリカで速さを競争したことがあったな。ストリートダンスをしていた同年代の子供たちと遊びでやったことがあり、その時は確か真ん中ぐらいの順位だった。ということはその程度の記録だろうな、自分は。
 ゴールしてから浮かんできたアメリカでの思い出をふりかえっていれば、今度は実行委員の子が担任の教師と何やら騒いでいる。さっきから一体何をそんなにはしゃいでいるんだ。

 「11秒85!!静、お前早すぎだろ!?」

 大変喜んでくれているらしいが、陸上経験が殆どない自分はいまいち分からない。でもアメリカにいたときはそうでもなかったんだけどな、と思い返してみれば、そういえばアメリカの子供たちは皆アフリカ系の子たちだった気がした。
 人種で判断するわけではないが、そりゃあ彼らがの足が早くて当然かもしれない。なるほど、そのなかで真ん中の成績だった自分は相変わらず足の速さも常人とは違かったらしい。

 「女子のアンカーは間門だな」

 担任の鶴の一声で、私はどうやら女子のアンカーという大変重要な役目を任されてしまったようだ。

 ***

 そうして訪れた体育祭当日。今日は母が午後から応援にくるらしい。三年生の次男は中学生最後の体育祭であり、私は初めての体育祭でもあり、両方の記念になるからということだった。体育祭ではクラスごと青組・赤組・黄色組に分かれて、私のクラスは赤組、兄は青組と見事に分かれてしまった。今朝がた兄から言われた言葉は「本気出したら許さん」だった。常人離れした身体能力を持つ私をよく知っている兄ならではだが、私も別に本気を出すつもりはなかった。無駄に目立ちたくはないし、上級生や他クラスから反感を買いたくはない。ここは無難に徹するが一番だ。

 私が出る種目はクラスの皆と一緒に出る綱引きとか玉入れとかで、個人競技は出なくても良いそうだった。流石にこの間転入してきたばかりなのでそこは考慮してくれたようだ。

 玉入れの競技は小学校にいた時以来。まさか中学生にもなってやるとは思わなかったけれど。お手玉のような赤い玉がたくさん地面に散らばられていて、とりあえず適当にいくつか拾う。こういうのはたくさん手に持っておくと落ち着いて投げられると言うが、自分には特に関係ない。コントロールよく投げれば籠に入る。それが私だった。

 笛の合図と共にとりあえず籠にいくつか入れていく。皆、玉を入れるのに必死で周りが見えていないが、私は時折、相手チームの籠の様子を見ながら入れていった。私がたくさん投げて全部入れば、向こうがいくつ入れようとこちらの勝ちは決まっている。しかしそれでは最悪の場合、観客側に見られて目立ってしまうかもしれないので程々の量を入れていくようにした。まぁこの程度入れておけば勝つだろう。
 その後、時間終了となり、早速玉の数が数えられていく。そして私の予想通りの数の差で、赤組の勝ちだった。

 「静ちゃんやっぱり上手いなぁ!」
 「偶然だよ。入らないのもあったから」
 「小学校の時、全部入れてたことあったよね」
 「あー……そうだっけ?」

 さすがに同じ小学校だった田辺さんには誤魔化しが効かなかった。あの頃は何でもできる自分に半分酔っていたこともあったから、できることは惜しみなく発していたからなぁ。今思えば恥ずかしい限りだ。

 玉入れ競技の後も、クラスメイトや同じ赤組を皆と一緒に(適当に)応援したり、全体競技に出たりして、私は久方ぶりに体育祭というものを味わっていた。

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