地区大会予選の日――同じ委員会に所属している後輩に誘われたこともあり、高嶺百合は人生初のテニス観戦に来ていた。その後輩は一年生ながらに強豪テニス部のレギュラーに選ばれるほどの高い実力を持っているらしく、まだ実際にプレーしている様を見たわけではないが、彼の活躍を見るのはとても楽しみであった。

 「相変わらず真面目なんだから、もう。試合見るだけでそんなに本読んでくる人、普通いないわよ?」

 今日の試合観戦には勿論、親友である釜野雅も一緒に来ている。釜野も釜野で、何やらお気に入りの選手を応援しなければならないとか。そんな釜野が呆れるようにため息をついたのは、百合が今手に持っている【テニスのあれこれ】と書かれたルールブックが原因であった。
 百合は先日、学校の図書館で借りてきたかと思えば、その本を隅から隅まで熟読しているのだ。学年一の優等生は行動も真面目だった。本を読むだけでなく、それを自分なりにノートにまとめたりもするのだから。

 「それ(本)よりもハイこれ!持って!」
 『??』
 「桃ちゃんと海堂ちゃんたちのうちわよ!昨日、頑張って作ったの!あ、もちろん夜更かしはしてないわよ?だってせっかく彼らの試合を観るんだから、お肌万全じゃないと」

 釜野から渡されたうちわ、彼のお気に入りという選手の名前が可愛くデコレーションされ、その周りも華美な装飾をつけられており、これなら遠くからでもよく分かるだろうし、きっとそれが目的なのかもしれない。

 「あのおチビちゃんには悪いけど、百合も今日は海堂ちゃんたちのファンになりきって応援しましょうね!」

 二人が歩いていると自然と人混みが避けられ道が作られていく。別に、派手なうちわを持っているから目立っている、というわけではない。

 「…おお、すげ。美人が並んでる」
 「カップル?…にしては男の方、女みたいに綺麗だけど…」
 「俺、あの子知ってる。青学の高嶺ちゃんだ」
 「二人とも海堂と桃城のうちわ持ってるんだが」
 「…いいなぁアイツら、あんな美女に応援されるとか最高じゃんか」
 青学一の美男美女と有名な二人、特に百合の方はその美貌故に他校までファンクラブができるほどに知られた存在だ。そんな彼女をまるで精工な美術品でも拝めるかのように、少し離れたところから見ているギャラリーたち。ただしこれは周りが勝手に崇めているだけで、本人はそんなことなど露知らず。

 『……!?』

 注目を浴びせていることが、返って彼女に謎の不安を与えていたとは彼らも知らないだろう。今日もこうして、百合のファンたちと百合本人のすれ違いが起きていくのであった。

そうして意気揚々と応援に向かう釜野と、それに並んでついていく百合。しかし二人はまさかこの後、青学対不動峰の試合で事故が起きるなど思ってすらいなかった。

 ***

 「ねぇ、来週俺、試合出るんだけど」
 『…?』
 「テニスの試合。見たことないなら見に来れば」
 『……』
 「どうせあのオカマ先輩は来るんでしょ。ついでに来ればいいじゃん」


 畏れ多くも、高嶺百合という“青学のマドンナ”と呼ばれる彼女を、自身が出場する試合の観戦に誘った度胸者は、青学テニス部一年レギュラーの越前リョーマだった。

 それを聞いた一部の上級生(男子)からは「一年のくせにマドンナを誘うなんて生意気だ」とか文句はたくさん言われたが、そんなものリョーマには痛くも痒くもない。寧ろ、そんな風に遠くから見てるだけの外野は黙っててよ、と強気な牙を見せるほうだ。

 しかし自分から誘った以上、男としてカッコ悪いプレーは見せられない。だからいつも以上に気合は入っていた。だというのに、今、彼はコート上で左目を抑えながら両膝をついていた。

 ***

 事故が起きた原因としては、対戦相手の伊武が打ってきた“スポット”という、上下のスライス回転を交互にかけることにより腕を一時的に麻痺させる技に押されてしまい、腕が動かなくなったため、自分の体ごと回してラケットに当てようとしたが、握力も麻痺しているためラケットを吹っ飛ばしてしまったのだ。
 そしてラケットはネットの柱へ当たり、その折れたラケットが運悪くリョーマの顔面にリターン。

 コートに立つ選手含め、それを見ていた周りは一瞬空気が凍ったように静寂が走る。すると今度は一人の女子生徒が、血を流すリョーマの元へ駆け寄ろうとしてコート内に侵入していってしまった。

 「リョーマくん…!大丈夫?!」
 「コートに入ってくるな」
 「こ、これ…っ」
 「いいから。早くコートから出ろよ」

 どうやらその女子生徒は怪我をしたリョーマを心配するあまり、自分がつけていたリボンタイを止血のために渡そうとして来たらしい。

 「でもリョーマくん、早く病院行かないと…!」
 「いいよ別に」
 「えぇ…っ、だってこんなに酷い怪我してるのに!」
 「あーあ、ラケット壊れちまったし」
 「…っもう!ラケットの心配してる場合じゃ――「キミ!選手以外はコートから出るように」

 見かねた審判がコート内に入ってきた女子生徒を注意するが、何を勘違いしたのか女子生徒は自分だけでなく選手であるリョーマも一緒に連れていこうとする。

 「え?あたし…?あ!リョーマくん、ここにいちゃダメなんだって!」
 「は、ちょっと、」
 「リョーマくんは選手じゃなくて怪我人なの!」

 「外野が口を出すのはプレイヤーに対する侮辱だよ。桜乃もあたしの孫なら、それくらい覚えておきな」

 そして動揺のあまり奇怪な言動をしている少女を止めるためにも、青学テニス部顧問の竜崎スミレ先生が近づき、自分の孫でもある竜崎桜乃の行動をたしなめた。叱られた少女は項垂れながらコートを去り、そして今度は竜崎先生の「止血だ」という声がコート内に響いた。

 ***

 「続行は無理かな…」
 「せっかく良い調子だったのに…」
 「でも仕方ないよ。アクシデントの怪我なんだし…」

 コート外では一連の流れを見守っていたテニス部の一年トリオが悔しそうに言葉を零しており、その近くには青学が誇る美男美女二人組の釜野と百合が彼らとは反対に何も言わず静かに立っていた。

 「ちくしょーあと少しで優勝を決められたのに。越前のやつ、こんな形で終わらせたくないだろうなぁ」

 一年トリオの一人、堀尾はテニス部の一員として、また日頃から越前をよく見てきた彼だからこそ思ったことを口にしただけだった。しかし其処へ先ほどコートを追い出された桜乃が、堀尾たちに向けて声を荒げた。

 「っっ、それって試合を続けた方がいいってこと!?どうして!?あんな怪我をしてまでどうしてテニスをしなくちゃいけないの!?」
 「わっ!ご、ごめん!!」

 堀尾たち三人は慌てて謝罪を述べた。おそらく三人にとっては「どうして」という疑問の投げかけに対する答えよりも、普段は大人しい女子が血相を変えて怒ってきたことに驚いてしまい慌てて頭を下げたのだろう。

 「男には男のプライドってものがあるのよ、お嬢ちゃん」

 そして桜乃の疑問に答えたのは三人ではなく、その近くで先ほどからずっとコートの方を見つめていた釜野の方だった。その隣に立つ百合も凛とした佇まいで、ベンチで処置を受けている少年を見つめていた。

 「え…?あの、」
 「ていうかさっきからピーピーうるさいわよ、あなた。必死で戦ってる男を止める女なんて野暮でしかないわ。」
 「す、すみませんっ」

 顔は前を向いたまま視線だけを桜乃に向けて、釜野は言い聞かせるように強い口調で述べた。

 「…まぁ、こういうとき、意外と一番冷静なれるのが女だったりするのよ。だから、そんなアタシ達たちからすれば彼らのプライドは時に馬鹿馬鹿しく映るのかもね。

でもね、本当にイイ女っていうのは…そんな馬鹿な男を応援する女をいうのよ。あなたもせめて、信じて待つぐらいの度胸を持ちなさい」

 「……信じて、待つ…」

 どうやら釜野の言葉は呆けていた桜乃にも届いていたようだ。

 「ていうかアタシ達って…オカマノ先輩は男じゃ――「ほ、堀尾くん!」
 「んー?なにか言ったかしらぁ?そこの小猿くん?」
 「ひ、ひぃいい!!」

 堀尾の断末魔が響くなか、いつの間にか釜野の傍から百合の姿が消えていた。

 ***

 上級生が血相を変えてコートに入ってきて、手を引かれるままベンチに座らされるリョーマ。副部長の大石は傷口を観察すると青い顔で息を飲んだ。

 「どうだ、大石」
 「だめだ、血が止まらない。眼球は大丈夫そうだけどまぶたの肉がパックリえぐられている。こんな状態じゃ続行不可能だよ。ここまできて棄権するのは悔しいが…」
 「おう越前、壊れちまったラケット、バッグに入れとくぜ。」
 「桃先輩、ついでにかわりのラケット一本出しておいてください。」
 「……あいよ。」
 「無茶だその傷で!」

 口々に飛んでくる制止はもう彼の耳には入らない。審判も割って入ってきたが関係ない。リョーマはだくだくと首まで伝う血をジャージの袖で拭った。

 「やるよ。」
 「越前…!」

 止めようとする周りの声も聞かず、立ち上がったリョーマは戦う意思を抑えようとしない。するとそんな彼のもとへ現れたのは、意外な人物だった。

 『…不二さん』
 「あれ、高嶺さんどうしてここに…」
 『……救急箱を…貸して頂けないでしょうか』
 「…!そっか、そうだね。こっちこそお願いできるかな。キミなら任せられるから」

 いつの間にかベンチへと入ってきていた百合に不二は初め戸惑いを見せたが、クラスメイト同士でそれなりに親交のある不二は彼女が何をしたいのか直ぐに察することができた。

 「大石、高嶺さんに代わってあげてくれないかい?」
 「え、高嶺さん?いつの間に、」

 不二を除いてベンチにいるテニス部員は皆驚きを見せていた。それもその筈、今まで彼らと彼女は殆ど関わりがなかったのだから。
 しかし驚いている部員たちとは反対に、百合は真剣な表情で救急箱からガーゼやらテープやらと道具を取り出して、黙々とリョーマの瞼に処置を施していった。その動きには一切の迷いが見られない。

 「高嶺さんは一体…」
 「信頼していいと思うよ。なんていったって外科医の娘さんだからね」
 「!!」

 一方で処置を受けているリョーマは何も言わず、ただ静かに百合の治療を受けていた。それはまるで彼女に全幅の信頼を置き、身を預けているようにも見えた。
 その後、百合が救急箱の蓋を閉めるのを合図に処置は終えられた。リョーマは左目に貼られたガーゼに手を当て、先ほどまでドクドク流れていた血が嘘のように「止まった」と呟いた。

 「止まった?さっきまで全然止まらなかったのに」
 『いえ、一時的に止めたに過ぎません。もって15分が限界かと…』

 「血が止まれば試合してもいいんだよね?」

 コートに戻ろうとすると大石副に道を塞がれるリョーマ。物言いたげに見ているのは、部員思いの彼なりの行動だった。しかしその横から部長である手塚がリョーマのラケットを直接手渡してきたのだ。

 「10分だ。10分で決着がつかなければ棄権させるぞ。いいな。」
 「充分!」
 「…ハァ…越前!行ってこい!ただし無茶はするなよ!」

 部長の手塚が許可したとなれば、副部長である大石も激励を飛ばすほかない。そして海堂からも帽子を渡され、先輩たちの応援を背にリョーマは再びコートへと戻っていく。


 「……つーか、越前の奴、高嶺先輩に礼も言わずに行っちゃいましたけど。まるでやってもらうのが当たり前みたいに……うちの学校のマドンナっすよ?!」
 「まぁまぁ。桃、落ち着いて」
 「ああいうところでマウント取るなんて、越前もまだまだだよね」
 「ふ、不二先輩?それ笑ってるんスよね?」

 ***

 左瞼を切るというアクシデントはあったがリョーマは見事勝負を制し、青学は地区大会優勝に輝いた。それから閉会式終了後、竜崎先生の付き添いのもと病院で医師の診療を受けて、今度は別の目的地へと連れられる。

 「…寿司屋?」

 疑問に思いながらも寿司屋の出入口を引くと、中にいたのは既に大騒ぎのテニス部員たちが。それを見たリョーマはそっと引き戸を閉じて帰ろうと背中を向けたが、中から伸びてきた手に捕まって引き摺り込まれた。

 「おっ、おチビが来た来た!」
 「何なんスか」
 「見りゃ分かんだろ」
 「何から食う?」

 この寿司屋は部員である川村の家でもあった。今日は板前である河村の父親が厚意でご馳走してくれることになったらしい。


 「手当してくれた百合先輩が此処にいるのは分かるんスけど……なんで、あの人までついてきてんの」

 「海堂ちゃん、桃城ちゃん〜!一緒に写真撮りましょうよ!」
 「い、いえ!俺は遠慮しときます!寿司食べたいんで…!」
 「…フシュー…」
 「やだぁもう照れちゃって〜」
 「「どこが!?」」

 河村寿司での祝賀会にはテニス部だけでなく釜野と百合も加わっていた。優勝を決めたリョーマの応急処置をした百合も、間接的であるとはいえ優勝の立役者でもあったからだ。

 「うーん、一緒にいる釜野さんだけ外すのもしのびないからね」
 「ハァ…」
 『……』――釜野さんはそんなに悪い人じゃないです、と言いたい。
 「大丈夫だよ。越前も悪気があって言ってるわけじゃないからね」
 「…なんか不二先輩って、百合先輩と“意外に”仲良いんスね」
 「アハハ。僕たち“クラスメイト”だからね」
 「な、なんかここだけドライアイスみたいな冷気があるにゃ!?」

 ***

 「ん、あれ、ここ…」

 処方された痛み止めの副作用のせいか、いつの間にか眠っていたリョーマ。辺りを見渡せば寿司屋の座敷。

 「…ああ、そうか。河村先輩の…」

 ようやく状況を掴み始めたところであることに気づいた。そういえば随分ぐっすり眠れていたみたいだが、それは枕のようなものが何か頭を支えてくれていたからだと。

 「…百合先輩?」

 そして自分が寝ていたらしい頭の位置にいたのは百合だった。相変わらず背筋がしっかりと伸びていて、礼儀正しく正座していた。彼女は相変わらず口を開かないが、何か言いたげにじっとリョーマの顔を見つめている。

 「えっと、俺…もしかしてこれ…」
 『……』
 「膝枕してくれてた?」
 『……』

 少しの間が開いて、百合はよく見ていないと分からないぐらいの動きで首を縦に下げていた。肯定と取れる返事だった。
 まさか憧れの先輩に膝枕までしてもらえるとは思ってもみなかったが、まぁラッキーってことでいっかとリョーマは心の中で小さくガッツポーズしておいた。

 「先輩たちは?」

 リョーマの問いかけに百合はどこからか取り出したノートを見せた。そこに書かれていたのは『河村さんの部屋でゲームをしています。』という内容が。これもコミュニケーションを取るのが苦手な彼女なりの返事だが、リョーマにはいつものことなので特に驚くことはない。

 「ふーん」
 『……』
 「…なに?俺になんかあるの?」

 先ほどからずっと視線を感じていたリョーマは彼女の気持ちを汲み取ったのか自分から聞いてみる。すると百合はまたノートを開いて、リョーマに見せてきた。既に書いてあったことから、おそらく彼女はずっと“それ”を気にしていたのだろう。

 ――『痛みますか。』

 「…痛み止め効いてるし、平気。」

 ――『お医者さんは何と仰っていましたか。私の処置は間違っていなかったでしょうか。』

 「別に。ちゃんとした処置だったとか何か言ってた気がするけど、あんま憶えてないや」

 ――『あのとき私は「持って10分」と言っていながら、残り3分ほどで傷が開いてしまっていました。申し訳ありません。』

 「…そういうのいーから。なんでアンタが責任感じてんの。そもそも俺がもっと上手くやってればよかった話なんだし」
 『……』
 「ていうかダサいよね。せっかく先輩観に来てくれたのに、ラケット折れたうえに怪我するとか…ほんと、かっこわる」

 勝利したリョーマであったが、本音を言えばもっとかっこいい姿を見せたかったのだ。憧れの女性を前にして、血を流して両膝をつくなど、男からしたらあまりカッコつかない姿だった。そう思うと思わず下を向いてしまい、彼女の瞳を見つめ返すことができなかった。

 『………元々ヒトの目は他の動物の様に、その範囲は広くはありません。それはもっと大事な事に目を使用しているから。遠近を重視しているからなんです』
 「…な、なに?えんきん?」

 口を開き始めたかと思えば、なにやら突然難しい話をし始めた百合。彼女の頭脳の良さは彼女のファンだという周りのギャラリーからよく聞くため重々承知はしていた。

 『…止血のために越前さんの左目にはガーゼを貼らせて貰いました。そのため…あのとき越前さんの遠近感は通常より掴みにくかったと思われます』

 しかし彼女が自分の前でここまで喋ったことが今まであっただろうか。コミュニケーションを取るのが苦手な筈の百合が今は、リョーマに何かを伝えようと一生懸命言葉を選んでいる。その姿だけでリョーマにはもう十分なくらい嬉しかった。

 『傷の痛みと、遠近感の違い、でも…リョーマさんはそれらのハンディキャップを全く感じさせないプレーをしていました。
 そ、それはとても凄いことであって…普通はあんなに簡単に身体は順応しませんので……つまり、それはリョーマさんが日頃から一生懸命練習していたからであって…。
 えっと…な、な、なので、あのなかで勝利されたリョーマさんは……ちゃんと、かっこよかった、ですよ…』

 「……」
 『!!』

 いつの間にかリョーマが呆けてしまっているのを見ては、もっと簡潔にまとめるべきだったのでは、上から目線な言い方だったのでは、とか不安や葛藤で頭がいっぱいになっていく。冷や汗が伝う身体をプルプル震わせながら、今度は必死に弁明をしようと頭をフル回転させているのだ。

 「…なにそれ」
 『…?!』――やっぱり怒っている…?!と、不安になる。
 「ほんと先輩って、そういうとこあるよね」
 『……す、すみません…』

 「次の都大会」
 『?』
 「今度は“もっと”かっこいいプレーにするから。また見に来てよ」
 『!!………はい』

 そのときリョーマは、憧れの先輩が自分のために紡いでくれた優しい声色に、なんだか込み上げるものがあって。思わず情けない笑みが溢れた。

 ***

 ――上級生サイド
 桃城「くっそー越前のやつ、マドンナ先輩とあんなに喋ってやがる。羨ましいなあ、羨ましいぜ。……それよりも高嶺先輩って喋るんスね。俺、初めて見たかもしれないっス」
 菊丸「でも不二も時々話してるよね?」
 不二「うん。まぁ、入学からずっと同じクラスだからね。授業や課題のこととか話したりね」
 菊丸「いいなぁー。俺なんか、あんな美女を前にしたら緊張してうまく話せないよ。なぁ?乾。…あ!ていうか乾、なんかデータとか持ってないの?」
 乾「残念だが、彼女のデータは殆ど持っていないんだよ。何故なら、彼女には巨大なファンクラブが裏についているからな。非常にガードが固いんだ。」
 河村「俺も聞いたことあるよ。なんでも、うちの学校だけじゃなくて他校も関わっているとか」
 海堂「そんなでけぇクラブ…一体誰がまとめてるんだ」
 乾「噂によると、大金持ちの御曹司が会長を務めているらしい。そのために本格的な運営で活動ができているとか」
 桃城「す、すげぇ。流石はマドンナ先輩だぜ」
 不二「でも本人はそんなこと全く知らないんだから、面白いよね」


 ――一年生サイド
 加藤「高嶺先輩ってやっぱり凄いんだね。僕たち一年生からしたら、まさに高嶺の花って感じ」
 堀尾「でもズルいよなー。だって委員会で偶然高嶺先輩とペアになっただけであんなに仲良くなっちゃってさ。しかも越前のやつ、委員会活動のときはわざと忘れたフリしてて、いっつも先輩に教室まで迎えにきて貰ってるんだぜ?」
 水野「さすがやることが違うなぁ」
 加藤「年上の女の人相手に臆しないのも、リョーマくんらしいよね」
 桜乃「……リョーマくん」

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