「love yourself」
「…“おかしい”のは僕で、善は本当に普通なんだ。だから半分本当で、半分嘘」
「楓太、そんな言い方よせや。お前だって何もおかしくないんやぞ」
「でも世の中はそうはいかないでしょ。クラスの奴らの言ってることは正しいのかもしれない」
自分でも何でこんな話を持ち込んだのか、気まずい空気になると分かっていたのに。でも、これは今話さないと駄目な気はした。
文化祭のために練習してきた僕たちは、もしかするとこうやって一緒にいるのが最後かもしれない。だから終わる前に、伝えておかないといけなかったのだ。
するとそれまで静かに聞いていた百合ちゃんは、僕の前に立って、その綺麗なヘーゼルの瞳を向けてきた。こんなに真正面に向き合ったのは初めてかもしれない。
『“常識とは十八歳までに身につけた偏見のコレクションのことをいう”』
「…あれ、それどっかで聞いたことある…」
『相対性理論を発見したドイツの物理学者、アインシュタインの有名な言葉』
そうだ。前に本か何かで読んだことがある。
その時は意味を分かっていたつもりでいた。でも、それだけ。
それなのに、何でだろう…今になって聞くとまるで違う言葉に感じるのは。
『人の言う常識なんて、所詮は学生時代に経験したことを集めたちっぽけなものってこと。
そんな他人の常識にあてはまって生きても、この世界はあまりにも広すぎて、それこそもったいないよ』
――皆が僕を“おかしい”と言うんだ。これは世間的にタブーなことだから。
それなら僕は普通にならなきゃいけないのかな。
自分を押し殺して生きていかなきゃいけないのかな。
そう思っていたのに、
『LGBTであることは何も特別なことじゃない。
誰が誰を愛しても、いいんだよ。どうせ皆、同じ人間だから』
僕はこの時、初めて――自分を愛そうと思えたんだ。