1
今日から通う私立神保中学校は小学校から大学までのエスカレーター制なのでメンバーはほぼ変わらず顔見知りが多かったりするが、生徒数の約四分の一ほどは新しく外部から入ってくる人もいる。
つまり“新しい出会い”もそれなりにあるのであった。
「おはよー百合ちゃん」
「おはよう」
「あれ?紗南ちゃんは?」
「寝坊してたから置いてきたの」
「起こさないんだね…」
「それにしても、百合ちゃん制服とっても似合ってるー!」
「同じ制服着てるのにこうも違うのかぁ」
大人気美少女モデルが着こなす制服姿は皆の視線の的のようだ。
「百合ぃぃいいいい!!」
「あ、紗南ちゃんだ」
「なあんで起こしてくれなかったのよぉ!準備に焦ってたら怜くんに急かされて前髪切り過ぎるわ、鞄忘れかけるわで散々だったんだから!!」
「あら、いつものことじゃない」
「せっかくの入学式なのにー、あーん、前髪気になるよー」
「どれ」
「あ”!!」
紗南の後ろから現れたのは羽山。紗南が必死で隠していた、切り過ぎた前髪を見て一言。
「ほんとだ、ブス」
「ブ!?ぶぶぶぶ、ブスってブスつったな!?こいつぅうう!!」
「もう…紗南、ムース貸すから後で直してきなさい。羽山くんも煽らないで」
「あはは、やっぱり百合ちゃんの方がお姉さんらしいね」
「きゃあっ、百合ちゃんだ!かわいい〜!」
「顔ちっちゃくて脚ながーい」
「その隣は紗南ちゃんだから、姉妹でこの学校なんだ!嬉しい!」
倉田姉妹を見て驚いた様子を見せるのは外部から来た生徒たち。
「ねぇ、百合あたしら何組だった?」
「私は4組、紗南は1組」
「えぇえええ!!姉妹なのに離れちゃうの!?」
「当たり前でしょう。寧ろ今まで一緒だったことの方が珍しかったんだから」
「ぶー」
「羽山くんは?」
「8組」
「…そう、少し遠いのね」
「……そうだな」
小学校で同じクラスだった子たちとは8組までバラバラになってしまったけれど、あのハチャメチャな一年を過ごした仲間だ。クラスが別れようともあまり問題はない。紗南を除いて。
「それじゃあ紗南、クラスの子に迷惑かけないようにね」
「なんでアタシに言うのさ」
「だって私はもう見てあげられないんだから」
「ふんだ!中学生なんだから百合の心配なんかいらないのよ!そう!倉田紗南はやれば出来る子なんだから!
あ、ちょっと先行ってて」
「クソか?」
「うん、クソ…ってレディーに向かってクソとか言うな!クソとか!」
「ハァ…」
中学に上がっても紗南は相変わらずだ。
姉の行く先を思い頭を抱える百合。
「ひさえちゃん、紗南のことお願いね」
「う、うん。でもきっと私より百合ちゃんの言うことの方がきくと思うよ」
「アイツもそろそろ巣立ちのときだろ」
「まぁ確かに…これを機に変わっていくといいんだけど」
家でも学校でもいつも一緒だった紗南と百合。
今回、クラスが大分離れたことで二人に少し変化が起こるのではないか、そう思われるのはもう少し先のこと。
▽▲▽
入学式が滞りなく終わり、早速部活見学に行くものもおれば、さっさと帰ろうとする者などそれぞれ。
しかし――――
「まさか初日から喧嘩する人たちがいるとはね」
裏庭では羽山ともう一人、恐らく外部から来た同じ入学生が喧嘩の真っ最中。
喧嘩といっても、空手を習得中の羽山は寧ろこの喧嘩を練習台として扱っているのか、先ほどから技を寸止めで出しているため余計相手を怒らせてしまっているだけだ。
「あ!百合ちゃん!秋人くんを止めてよぉ〜!」
「嫌。巻き込まれたくないもの」
裏庭の騒ぎを耳にし現場に来てみた百合だが、傍観しに来ただけで止めるつもりは毛頭ない。
「それに多分、相手の彼の方が先に絡んできたんでしょう。
羽山くんは入学初日に自分から騒動起こすような人じゃないと思うし」
「そ、それはそうなんだけど…」
「大丈夫よ。もうすぐ適任者がくるから」
百合の適任者とは一体、そう思った今度は反対側から聞こえてくる怒声のような叫び声。
「うぉおおおい!お前らそこまでー!入学初日から馬鹿さらすなよぉ!」
駆け走ってきた人物はそのままポカスカと二人の頭を叩き、見事に喧嘩を収めた。
「ね?荒仕事は紗南に任せるのが一番」
「百合ちゃん…;」