30
「ハイ!皆さんお疲れ様でした!」
「「「した!」」」
長距離走行を終え、ようやく烏野高校へと到着したバス。武田からの伝達事項を受け、すぐに解散となった。
ぞろぞろと全員が帰路につく中、巴はまだ眠りから覚醒していないのかボーっとその場に立ち尽くしていた。
「影山…トス上げてくれよ」
ぼんやりとした頭の中に入ってきた日向の声。
二人は体育館へと入り、明かりを灯しネットの準備をし始めた。丁度準備ができた頃に偶然谷地がやってきた。そしてそのまま球出しを頼まれ、彼女もまた体育館へと入っていく。
「もう一回!」
何度も何度も繰り返される速攻。けれど一向に合う様子はない。新しい事に挑戦しようとしているのだから当然といえば当然ではあるが、日向と影山の二人はそれ以前の問題だった。
変化を求める日向と現状維持を望む影山。今までは日向が影山に全てを委ねるような形だったからこそうまくいっていた。けれど今度は違う。お互いの意思疎通が出来てこそ完成する技を編み出そうとしているのだから。
「このできるかわかんねぇ攻撃を繰り返すより、今までの攻撃とかサーブとかブロックとか他にやること山程あんだろうが!」
ついに痺れを切らした影山が怒鳴った。
言っている事は正論だった。けれど現在の状態で烏野高校はIH予選で青葉城西に負けた。そしてその青葉城西も白鳥沢に敗れた。果たして現状維持で烏野が全国を狙えるのだろうか。
残念ながら答えは否である。
「それじゃあおれは上手くなれないままだ!」
日向のその言葉に影山は思わず襟元を掴みあげた。エスカレートしていく言い合いにオロオロとする谷地。二人の喧嘩は止まる事なく、だんだんと激しさを増していく。
取っ組み合いを始めた二人についに谷地が耐えきれずに体育館を飛び出した。その間も二人の喧嘩は止まらない。
「お前らやめろ!!」
谷地に呼ばれた田中が駆けつけるまで二人の喧嘩は続いた。
遠征中、全く会話をしなくなった二人がようやく本音をぶつけ合った。しかしチームに亀裂が入りそうだというのに以前のような不安とはまた別だった。
***
影山と盛大な喧嘩をした日向は思いつめたような表情で坂ノ下商店の前に立っていた。今のままではダメだ。けれど自分ひとりではどうする事もできない、と。
「…コーチ、おれはどう練習すればいいですか」
そう尋ねてきた日向に繋心は少し待っていろと告げた。
そして時を同じくして日向の相棒である影山はプロが教えるちびっこバレーボール教室にやってきていた。何故ここに足を運んだのか正直自分自身もわかっていなかった。けれど、ここで思いがけない人物と遭遇する。
「及川さん!」
「飛雄!!」
- 31 -
*前次#
ページ:
ALICE+