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ある日の休日、百合は園子と蘭、そしてコナンと共にショッピングセンターに来ていた。
ひとしきり買い物をした後、カフェで休憩をすることにした。

蘭と園子が一緒に座り、その2人の前に百合とコナンが座りテーブルを挟んでいる。
コナン以外は全員アイスやパフェを頼んでおり、百合はジュースだけの彼を気遣って、時折自分の頼んだメニューをコナンに勧めてくる。
そんな中、園子が突然何かを思い出したかのように声を上げた。

「あ、そうだ!ねぇ百合!アンタ彼氏できたでしょ」
「ブッ!ごほっ、げほ…っ」

何故か一番驚いていたのは当の百合より、その隣にいたコナンだった。
飲んでいたオレンジジュースを吹き出す程に。

「なーにアンタが驚いてんのよ、ガキンチョ」
「ちょっと大丈夫!?コナンくん!」
「お手拭き」
「あ、有難う…百合ねーちゃん。ね、ねぇ…さっきの話って…」

どうやら園子だけではなく、コナンも気になっているようだ。

「恋人なんていないよ」
「いや、それがさー。先週の今ぐらいだったのよね。
ここのショッピングモールにある、人気のケーキ屋でバイキング行われるって言うから来てたんだけど…」

その後の彼女の話はこうだった。

店はモールの3階にあり、園子は外が一望できる窓際でケーキを堪能していたらしい。
そして、ふと下の方へ視線を向けたところ、

「百合?」

横顔からでも分かるほど造形の整った美少女。
園子の知っている中で該当する人物は一人しか思い当たらない。
親友である蘭と同じく幼馴染の一人である、そんな彼女が何故、ここにいるのか不思議に見てみると…

「え、男!?」

彼女の隣には、まるで寄り添うように歩く一人の男がいるではないか。
ニット帽を被っており顔は分からないが、恐らく年上の大人と思える頼もしい背中が見えていたのだ。

「――ってわけよ」
「…違うよ。その人はこの間越してきた隣人さんで、偶然モール内で会っただけだから」

園子の早とちりに少し呆れ気味に話す百合。
皆は一言も漏らすまいと真剣な様子だ。

「それで、帰りにマンションまで車で送っていってくれたの。
どうせ帰るところは一緒だからって…」
「そうなのね。良い人が隣に来てくれて良かったじゃない、百合」
「うん」
「…百合、その男って一人暮らしだったりする?」
「そうだけど?」
「ふ〜ん…」

何故かニタニタと口角を上げている園子。その真意は分からずじまいである。
そして楽しそうに話している女子たちの一方で、コナンは終始不満そうな顔をしていた。

***

蘭の父であり、巷で有名な眠りの小五郎こと、毛利小五郎の友人の結婚前夜祭パーティー。
蘭やコナンもそのパーティーに出席し、何故か幼馴染の百合も一緒に誘われたのが、今日は弓道の稽古があったため、可能であれば出席するつもりだった。
パーティーといっても、ファミレスで行われる大人たちの同窓会も兼ねた小さな会らしい。
そのパーティーも盛り上がってきた終盤、夜10時前。先ほどまでの暴風と雨も随分止んだところで、漸く百合は目当ての店へとたどり着いた、が。

指定された通りの場所に来てみれば、パトカーが止まっている。
何かトラブルでもあったのだろうか。
周りからは、焦げ臭いといようなガソリン臭い匂いもしてくる。

「すみません、部外者の方は中に入らないでください」
「あの…私、毛利小五郎さんの知り合いで…一応このパーティーに呼ばれた者なんですが…」

事情を説明すると鑑識が一瞬動きを止めて、トランシーバーを取り出して連絡をとり始めた。

「…はい、…君、中に入っていいよ」

鑑識に一礼してから、百合は建物のドアを開ける。
すると一気に集まる視線。室内は何処か険悪な雰囲気が漂う。
理由も分からないままに様子を伺っていれば、一人の男性が泣きながら近寄ってくる。

「お前か!お前が、お前が、初音を!」
「…?」

怒声にも近い叫び声だった。
大の大人が女子高生に浴びせる言葉でもなさそうだ。
しかしこんな状況にも関わらず、百合は至って平然としており、無表情な顔で男性を見つめる。
と、そこへ――

「おい!やめろ!この子はうちの娘の友達だ!
殺人犯なんかと間違えんじゃねぇ!」

聞き慣れた声がしたと思えば、予想通り、蘭の父である毛利小五郎がいた。
小五郎は怒りの顔で、男と百合をひきはがした。

「じゃ、じゃあ…、」
「あぁ!パーティーに呼ばれてたから、ここに来ただけだ!」

話を聞くところによると、パーティーの最中、新婦であった加門という女性が突然車の中で焼死。
自殺と思われたのだが、事件の捜査により"殺人"である可能性が出てきたらしい。
そこへ犯人が誰なのかというときに、偶然やって来た百合を見て、新郎の伴場は犯人かと勘違いしてしまったということだ。
その後、蘭たちの元へ行こうとした百合は、意外にも見知った人物を見つけた。

「……安室、さん?」
「はい。こんばんは、ユリさん」

先日、百合が住むマンションの隣の部屋に越してきた男性、安室透が笑顔を浮かべてそこにいた。

「二人は知り合いなのかね?」
「はい…」
「僕が最近引っ越したマンションで、偶然にも百合さんが隣の部屋に住んでいたんです。
あぁ、僕が探偵という話は彼女も知っていますよ」
「本当かね?」
「…はい、それは確かです。
私の友人のお父さんも探偵です、という話もしたので…」

お互い共通点を持っていたこともあって、意外と直ぐ打ち解けたのだ。
百合の証言のおかげで、安室にかかっていた容疑は否認された。そして、


「お前と初音さんは、結婚することを許されない正真正銘の双子だってことがな」

その後、眠りの小五郎が出した答えがこれだ。
DNA鑑定の結果も出て、毛利の推理が正しいことも証明された。
店内に響くのは伴場の泣き声と、それに少し混じるように聞こえてくる小さな嗚咽だった。

「今日はありがとうございました。
百合さんのおかげで、僕の無実も証明されましたし」
「ううん、お父さんが事件を解決しただけで…私は…」
「お礼にマンションまで送りますよ。
今着替えてくるんで、少し待っていて下さい」
「え、…」

警察からの許可も貰ったので、そろそろ帰ろうと蘭たちと話していたときだ。
ウェイター姿の安室がそう言い、百合の有為も聞かずに店の奥へ入っていってしまった。
確かに、この夜道に一人で帰るよりは安全だが、まさかまたも彼に送ってもらうとは、何だか申し訳なくなってしまった。

「ねぇ百合、何かイイ感じじゃない?」
「…何が?」
「安室さんとよ!車で送ってもらうなんて恋人同士みたい!」
「……蘭ちゃんまで園子ちゃんと同じこと、言う」
「年上で落ち着いた男性って、百合に合ってるし!」
「えーそうかなー」

蘭の言葉に重なって聞こえてきたコナンの声。
下へと視線を向けると、彼はムスッとした顔で二人を見上げていた。

「百合ねーちゃんには、もっと良い人がいると思うよー」
「例えば?」
「し、し、新一にーちゃんとか?」

何故か顔を赤らめるコナン。
すると蘭も思い出したかのように、あー、と言う。

「確かにアイツもいたわねー。でも、百合に合うかどうかっていうより、アイツが一方的にユリを好きっていうか…うーん」
「ちょっと無口なユリねーちゃんには、新一にーちゃんみたいな
よく喋ってくれてリードしてくれる人が、い…いいと思う!」
「えー?アイツが話すことって言ったら、推理自慢ばっかで、女の子としては正直…」
「で、でもさ!ミステリアスな百合ねーちゃんが考えてることを、新一にーちゃんならきっと推理して当てるし!」
「それは探偵である安室さんもできるんじゃない?」
「う…っ」

自身の猛抗議を全て論破されて、流石のコナンも言葉に詰まる。
二人がそんな話をしているのを百合が傍観していると、ようやく支度を終えた安室が出てきた。

「じゃあ、行きましょうか」
「…お願いします」

並んで立つ美男美女を見て、やっぱり似合ってる、と羨望の眼差しを向ける蘭。
その隣でコナンは不愉快さを露わにして見送っていた。
もう二度と目にしたくない、とさえ思ってしまう程に。

しかし、そんな彼の願いは呆気なく打ち砕かれた。


「何ィ!? 弟子にしてくれだと!?」

毛利探偵事務所の下の階にある喫茶店に蘭達と来ていたとき、そこには先日の前夜祭の時に知り合ったウェイター――安室透がバイトしていた。
そんな安室が小五郎に話し掛けて来たかと思えば、なんと眠りの小五郎の弟子になりたいとのこと。

「先日の毛利さんの名推理に自分の未熟さを痛感しまして一から出直しを…。
ですからこうやって毛利さんのお傍でバイトして、毛利さんが関わる事件に同行させて貰おうと」
「だがなぁ俺は弟子なんて取らねぇ主義で……」

取らない主義というよりも、取らない方が賢明だろう。
実際推理したのは小五郎ではなくコナンなのだから。

「授業料として事件一つに付き……ほどお支払いするつもりですけど」
「マ、マジで!?」

耳打ちする安室に、小五郎が分かりやすいくらいに目の色を変えた。
こうなってしまえば、あとはとんとん拍子に話が進んでしまうであろう。

「採用〜!! 私のことは先生と呼びなさい安室くん!」
「はい、毛利先生!!」

その様子を見ていた新一ことコナンは呆れ顔で肩を竦めた。

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