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「本日21時50分過ぎ、西多摩市にある国立東京微生物研究所が、7人組の武装グループに襲われました。武装グループは警備員2名を拘束、当直の研究員を拉致し、高度安全実験室に侵入。数分後、室内に仕掛けたプラスチック爆弾を爆発させ、逃走しました」
警視庁刑事部参事官、宇野忠義と、警視庁刑事部部長、小田切敏郎。二人は並んで座り、宇野が報道陣に、事件の概要を説明していた。
宇野の話を聞いていた報道陣は、ざわめきながら宇野に質問をしようとする。それを制するようにして、宇野が話を続けた。
「爆破された実験室の中には、ある非常に危険な細菌が保管されていて、犯人グループによって持ち去られたものと思われます」
「危険な細菌?」
「感染すれば、致死率80%の細菌で、治療方法はまだ見つかっておりません」
一層ざわめきたった報道陣の中の一人である女性が、手を挙げた。
「爆発で、周辺に細菌が漏れたということは?」
「それはありません!爆発の威力が大きかったため、細菌が残っていたとしても全て燃え尽きたはずだと、研究所の所長が証言しております」
そうは言っても、事態の危険性はあまりに高い。
「犯人グループの目的は?」
「それはまだ…しかし、バイオテロの可能性も視野に入れています」
「バイオテロ!?」
日本にはおおよそ縁がないように感じるその単語。
「ここで皆さんに要請があります」
それまで黙っていた小田切が、声を発した。
「不要なパニックを防ぐため、あくまでも報道は爆発事件だけ。細菌及びバイオテロの可能性については、触れないでもらいたい」
動揺とざわめきが入り混じる。
「報道規制を敷くということですか?」
とそこへ、一人の警官が小田切と宇野の元へPCを運んできた。さらに報道陣の携帯が一斉に鳴り響き始めた。
「部長!犯人グループが、ネットに犯行声明を流したそうです!しかも、あのテロ組織の」
「"赤いシャム猫"を名乗っている…」
いち早く反応した記者の言葉に被さるようにして、小田切がPCを見ながら静かに言った。
「"我々赤いシャム猫は、国立東京微生物研究所を襲撃し、殺人バクテリアを手に入れた。7日以内に次の行動を起こす。心して待て"…やはり細菌は持ち去られていたか…」
「しかし、赤いシャム猫は10年前に壊滅したはずでは?」
「部長!これで報道規制はナシですね?」
「やむを得んだろう」
報道陣は一斉に部屋を出た。
***
―服部邸―
《そこで本日は、細菌学者の太田千秋先生にお越し頂きました》
《この菌に感染すると、まずは体のどこかに痒みを感じます…》
平次は自室でテレビを見ながら電話をしていた。
「ホンマ、えらい事件が起きてしもたなあ…もう朝からこのニュースばっかりや」
そう語る彼の机には、今朝の新聞が置かれている。一面は勿論、細菌強奪事件についてである。
「あぁ…」
電話相手のコナンも、平次が見ているものと同じ番組を見ていた。
《感染経路は、主に飛沫感染で特に小さいお子さんには感染しやすく、すぐに症状が出て…》
「やて。どないする?ちーちゃいお子さんになってしもたコナンくん?」
「ほっとけ」
「ハハッ」
「それより服部、俺が引っかかるのは…」
コナンが受話器とは反対の手でリモコンを持ち、ニュース番組が映っているテレビを消る。
「犯人グループがなんで実験室を爆破したかやろ」
平次のほうも、テレビを消して新聞を手に取る。
「細菌を持ち去るのが目的なら、爆破までする必要はないはずだけど…」
「せやなあ。それにしてもや。この赤いシャム猫っちゅー組織、知っとったか?」
「いや、十数年前、財閥を標的にテロを繰り返してたってことくらいしか…」
「ま、お互いそんときはまだガキやったからのぉ。あーすまんすまん、コナンくんは、今もガキやったのー」
「…しつけーな」
「ハハッ」
コナンの不機嫌な声に対し、平次は可笑しそうに笑う。
「ところで工藤、お前、飛行船に乗るっちゅーてたなあ。東京から大阪に飛んでくるやつ…」
「あぁ、あのじいさんが、性懲りもなくまたキッドに挑戦状を叩きつけたからな」
コナンの話を聞いて、机に置かれた新聞をめくった。
"怪盗キッドに告ぐ!!"という大きな見出しで、挑戦状が載せられていた。
「奴からもついさっき、オーケーの返事が届いたそうだ」
言いながら、コナンは新聞の一面を飾れなかった飛行船を見て、園子の叔父――鈴木次郎吉が赤いシャム猫に怒り狂っている様を思い浮かべた。
「ほんなら工藤、そんときは俺んとこ泊まっていけや。約束してたお好み焼き屋さん、連れてったるさかいなあ」
「あぁ、分かったよ。じゃあな」