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ある夜、警察庁内に何者かが忍び込み、機密データを閲覧していた。
これを察知していた安室透や風見裕也をはじめとする公安警察は忍びこんでいた女と対峙し、対決するも警察庁内から逃げられてしまう。
車で逃走する女を追う安室、そしてFBIの赤井秀一を加えた三者によるカーチェイスが繰り広げられる。女は逃げながらも「ノックはスタウト、リースリング、アクアビット。あなたが気にしていたキール、バーボン」とのメールを誰かに送信していた。
赤井は女の進路を先読みして車のタイヤを撃ち抜き、橋の下に落下させ爆発に至るが、捕縛するには至らなかった。

一方、カーチェイスから命からがら逃げのびた女は、東都水族館の多色ライトを目撃すると同時に気を失ってしまう。

翌朝、謎の爆発事件がニュースで報道される中、コナンと少年探偵団一行はリニューアルオープンの日を向かえた東都水族館を訪れていた。
コナンたちはそこで記憶を失ったオッドアイの女に遭遇する。
コナンはガソリンの臭いや割れた車のフロントガラスの破片などから昨夜の爆発事件との関連を疑い、警察に連絡を取ろうとするも、記憶を失った女に拒否されてしまう。
そこで彼女を知る人物を探すため東都水族館で、情報収集を開始する少年探偵団であったが、
歩美、光彦、元太の3人は捜査もそっちのけでダーツをするなど謎の女と遊んでいた。


「…百合?どうしたの、さっきから」

休日に蘭から数学を教えて欲しいと頼まれて、探偵事務所の方にお邪魔している百合。
しかし当の彼女は、先ほどからずっとペンが止まっている。
問題集も見なずにただぼうっと何かを考えているようだった。

「……何でもない」
「うそ。今朝から少し変だったわよ、気づくと上の空だし。
何かあったんじゃないの?」

心配そうな蘭の表情を一瞥すると、漸く百合は重い口を開いた。

「…嫌な、感じ…する」
「いやな感じ…?」
「この間…食器、落とした…」
「食器を?それは珍しいわね…」
「安室さんから貰った、食器、なのに…」
「え、そう…だったの」

とても残念そうに話す百合を見て、相当ショックだったこと伺える。
彼女にしてみたら、透は既に誰よりも大きな存在となった。
これは百合自身気づいていないかもしれないが、蘭からしてみれば、その感情は恐らく…

そして、百合は続けてこう言った。

「それで最近ね、なんか不安……よく分からないけど……

――安室さんが…遠くに、いっちゃいそう」



時を同じくして、黒の組織の一員であるベルモットは誰かを探していた。
なんと探していたのは少年探偵団と行動を共にしていた謎の女だった。

東都水族館で情報収集を続けるコナンと灰原だったが、そのころ阿笠博士と少年探偵団の3人、
謎の女はリニューアルの目玉のひとつである世界初の二輪式観覧車の列に並んでいるところだった。
ベルモットはその途中で謎の女に声をかけるが、謎の女は身に覚えがなく、そのまま観覧車へと向かっていく。
道中でコナンたちを見つけた元太は身を乗り出して、そのまま地上へ落下してしまうが、
謎の女は元太を助けるために自ら飛び降り、人間離れした身のこなしで無事に元太を救出する。
異なる目の色、ダーツの腕前、そしてその身体機能から、灰原は記憶喪失の女が組織のNo.2であるラムではないかと疑う。
ラムの素性は謎が多く、このままでは皆が危ないと心配するが、歩美たち3人と謎の女は再び観覧車に向かい、既に乗った後だった。
その観覧車の上空で謎の女が苦しみだし、「ノックはバーボン、キール、スタウト、リースリング、アクアビット…」と呟く。
歩美から連絡を受けたコナンは謎の女が言った「スタウト、リースリング、アクアビット」という言葉から、彼女が組織に関係していることを確信する。
そして、謎の女はそのまま警察病院へと運ばれていく。
一方、組織のコルン、キャンティ、ジン、ウォッカは世界各地でスタウト、リースリング、アクアビットを次々と射殺していく。
そして残るノックを始末するため、面々は日本へと乗り込む。

***

東都警察病院の駐車場に停まる白いRX-7の車。
運転していたのは安室透だ。

「ああ、そうだ。東都警察病院だ。もしものときは構わん。頼んだぞ、風見」

酷く真剣な面持ちと声色で、部下の者と話している。
そして電話を切って車を降りたと同時に現れたのは、大きいつばのついた帽子を被ったブロンド髪の女性。

「バーボン、なぜ貴方がここに?」
「勿論、あの人を連れ戻すためです」

安室のことをバーボンと呼んでいる女性は、組織のメンバーのベルモットであった。

「てっきり記憶が戻る前にあの人の口を塞ぎに来たのかと………」
「!」

その一言で安室は、自分がスパイだと疑われていることを瞬時に察した。

「なぜ僕がそんなことを?言っている意味がよくわかりませんね」
「じゃあどうやって接触するつもり?あの人は厳重な警備の元、面会謝絶よ。
それとも貴方ならあの人に簡単に会えるのかしら?例えば、

――警察に特別なコネクションでも」

「さっきから何の話をしているんですか?」

あくまでシラを切り続ける安室に、ベルモットは痺れを切らせ左腕にかけてあったジャケットを少しずらし、サイレンサー付きの銃をチラつかせた。

「まぁいいわ…立ち話も何だし、場所を変えましょう」
「…それが、組織の命令だというのなら、仕方ありませんね」

了承した降谷は、ベルモットを助手席に乗せ東都警察病院を立ち去った。
しかし彼等は気づいていない。
物陰に隠れて彼等の様子を伺っていた人物がいることに。

黒いキャスケットを被り、白いシャツとズボン姿の少年――という変装をしたユリ。
一見ただの美少年にも見えるが今はとにかく自分であることを隠しているしかなかった。
また…白いRX-7の後ろ姿を見守ることしかできなかったことも。
すると鞄の中からスマホを取り出し、ある人物に電話をかけた。

***

百合は小型のノートパソコンに何かを打ち込んでいた。それもプロのような速度で。
そして視界の端に赤いマスタングが近づいてきたことに気づく。
車が目の前に停まると、運転席の窓から顔を出したのはFBIの赤井秀一だった。

「乗れ」

その一言だけ聞くと百合は小さく頷いて助手席に乗り込んだ。

「それで奴等の居場所は?」
「待ってて…」
「……それは?」

赤井はユリの持つノートパソコンを覗き込んだ。
常人では理解できないような数字やプログラムが動いている。

「今、安室さんの携帯…位置、特定してる」
「そんなことができるのか」
「…GPS…ハッキング」
「ほぉ…FBIに勧誘したいぐらいだな」
「やだ」

即答で帰って来た返事に肩をすくめる赤井。
すると彼女が手を動かしながら言う。

「車動かして、北に向かえばいいと思うから…時間、もったいない」
「仰せのままに」

まだ位置は特定できていないが、とにかく動けということなのだろう。
彼女にしては珍しく急いでいる様子だった。
恐らくそれだけ心が乱れているのだ、安室透という人物が組織に連れていかれた事実に。
百合という少女は無表情でマイペース、それでいていつも何処か上の空でいる、少し危なっかしいという印象が赤井にはあった。
しかしその実、時には驚くような知識や身体能力を見せたり、今もハッキングという専門知識さえ見せてくれた。
そして安室透が組織に潜入している公安警察ということも気づいてはいるようだ、が、本人は決してそれを周りにも本人にも言わない。
察しがいいというか、変に子供気ないというか。
江戸川コナンに次いで不思議な子だった。
そして―――涙を流す程に、降谷零、今は安室透と呼ばれている彼を好いているということ。
ぽた、と手に落ちる雫がそれを物語っている。

「そんな顔をするな」
「……っ、」
「大丈夫、早々殺されはしないさ。彼は、俺が知る限りそんなに軟な男じゃない」

彼女は小さく頷いていた。

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