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その日、青道高校野球部は、稲城実業高校に敗れて短い夏を終えた。

球場全体が湧き上がる熱闘。あとアウト一つで届いたかもしれない甲子園。稲実の二年生エース成宮鳴が到達したエースとしての一つの極致は、全力で抗う青道をあと一歩のところで上回った。

九回裏。劇的な幕切れ。
二時間五十三分の死闘に終止符を打ったのはエースのバットだった。

青空に響いた快音、空に舞う白球。
笑顔で駆け寄る稲実の選手たち。落ちた白球に手が届かなかった伊佐敷が崩れ落ちる。最後の最後試合を終わらせた川上が蹲る。それを見つめる御幸。

敗因は多くあったと思う。
丹波の途中降板、小湊兄の怪我による交代など不幸な要素はいくつもある。あの夏合宿のデッドボールがなかったら。丹波がエースとしてこの夏参戦できていれば。準決勝の本塁クロスプレーがなかったら。万全の状態で、完璧なナインとして試合に挑んでいれば。あるいは沢村の、白河への頭部死球がなければ。御幸が沢村の表情にもっと早く気付いていれば。

それでも恐らく決定的だったのは、甲子園のかかった西東京大会決勝戦、この土壇場で、経験不足の一年生を三人グラウンドに送らざるをえなかった総合力。
絶対的エース不在の中、青道の四人の投手たちが出した四死球は八。
――稲実成宮鳴は二。

力が足りなかった。
あの先輩たちがいても尚。

全校応援だった。吹奏楽部やチアリーディング部だけじゃない、都合のつく限り一般生徒も先生たちも応援に駆けつけてくれている。
振り返ってお礼を言わないと。暑い中ありがとうございましたと、深々頭を下げたい。
現に泣き崩れながら、レギュラーの面々はスタンドに向かって頭を下げている。

それでもグラウンドから目を離さなかった。
瞬きもしなかった。

この敗戦を忘れないために。

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