10+1


この学校に就任してから約2年。1年目に新任としてたくさん失敗して多くのことを学んだ。2年目はだいぶ慣れてきたけれど、何故か未だに雑用を任されることが多い―現に今も、卒業式で使う花飾りを作っている


「N先生」


「デンジ先生、何ですか?」


「コレ、やっといて」


「卒業式の、花飾り…ですか?」


目の前にはボロボロになった花飾りと、真新しい花飾りの元


「俺これから明日の実験準備するから」


それだけ言って、さっさと職員室から出ていく―僕も明日の準備あるのに、とは言う隙も無かった


「はぁー」


「あら、N先生ため息?」


「え、あぁ…デンジ先生に花飾りを作るの押し付けられちゃって」


「…それさっきあたしも頼まれたわ、断ったけどね」


「アロエ先生もですか」


「やっぱりN先生は働いてるのが短いからねぇ。あたしも最初は雑用ばっか!授業の準備なんて家帰ってからよ」


「皆さんそうやって、働いてきたんですね」


「そう!N先生も頑張りなよ、最近の若者は忍耐が無い奴ばっかなんだから」


今にも喝を入れに引っ張たかれそうな勢いだ


「あはは、頑張ります」


「あっ、そういえばうちの1年は何人か教室に残っていたから、その子たちに手伝ってもらえば?」


少し考えて、とりあえず1年生の教室に行ってみることにした





「あーN先生!何持っているんですかぁ?」


1年生の教室にいたのは、ベルさん、ホワイトさん、チェレン君にブラック君。仲良し四人組だった。


「これ、卒業式で使う花飾りなんだ、できればで良いんだけど…造るの手伝ってもらえるかな?」


「オッケー!わたしやる!ホワイト一緒に造ろー」


「しょうがないわね、N先生これ雑用ですよね」


「うっ」


本当に、いまさら言われて傷つくことだな…ホワイトさん、目付きが怪しいし


「したっぱの先生って大変ですねぇ」


「ま、まぁ…ね」


「ホワイト、あまりN先生を虐めるなよな」


「あらチェレン。あなたも花飾り造るの手伝ってよ。あっ、でもチェレン不器用だから無理よねぇゴメンなさい」


チェレン君は顔を真っ赤にして怒っている。ホワイトさんって名前は白なのに、ブラックっていうか、腹黒いっていうか。うあ、こっち見た!心読まれてるのかな、僕…怖い。


「や、やってあげるよ!ベル、僕のお手本にしなよ!」


「え〜、チェレンのはちょっと」


あからさまに嫌がるベルさんに挑発するホワイトさん


「無理よ、無理無理」


「け、喧嘩しないで―」


これ以上もめられたら花飾り造るところじゃないよ


「N先生。俺も手伝うよ、ほら、貸して」


あたふたする僕が手に持っていた花飾りを取り上げてニッコリと笑うブラック君。唯一、僕に優しいブラック君。


「あ、うん…ありがとうね、ブラック君」


「先生のためだよ」


荒れる3人を横目に僕はブラック君と花を束ねていく。すると、教室を通りがかったブルーさんが声をかけてきた。


「あー、N先生じゃん。賑やかですね〜、あ、それ花飾りですか?」


「うん、卒業式で使うからさ」


「ブルー先輩だ!先輩も手伝ってくださーい!」


「えー、皆あたしたちのために作ってるんじゃないの?」


「いやいや先輩、これ絶対に終わりませんよ?なんせチェレンがいるし」


ブルーさんが目をやった方に同じく目をむけると、ボロボロの紙があたりに散らばっていた。


「あー…………そうね」


「せ、先輩!その間はどういう意味ですか!」


確かに、これは…卒業式に間に合わないかもしれない。


「…じゃあ、ブルーさんにも頼んじゃおうかな」


「えぇ―」


あからさまに嫌がるブルーさんのもとにトコトコと小走りで駆け寄るブラック君。おもむろにブルーさんの手をギュッと握り―


「あの…ブルー先輩、N先生手伝ってあげてください…ね?」


「うっ!」


ブルーさんの手をとるブラック君の表情は見えない。でもブルーさんは顔を真っ赤にして顔を伏せていく。それを見たブラック君はこちらを振り返って僕に笑う。


オッケー、ってことかな?

なら明日頼んじゃおう。



―そんなこんなで、
桜吹雪残り10日の終わりへ


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