2023/08/02

休暇返上?

事件は男が、片田舎に一軒しかない酒場で杯を持ち上げた時に起こった。
一軒しかないだけあって、まだ宵の口だというのにそこそこ騒がしい空間が一瞬で静まり返る。
男はちらりと原因を一瞥すると、大げさに深く息を吐いた。
原因は一人の人間が酒場を訪れたこと、言葉にすればたったそれだけのことだが客が皆一様に黙るのは無理もない。
汚れひとつない純白の外套は遠目に見ても高価なもの。男に言わせれば無駄と思える装飾も、恐らく周囲からすれば厳かに映るだろう。
身に付けている本人の見た目もまた、場に相応しくない美しさだった(これは褒めていないと男は後に語る)
そんな視線に慣れてしまっているのか、気にもせず男を見つけて歩み寄った。

「ウルヴァ様」
「嫌がらせかお前は」
「そんなわけないじゃないですか」
「見りゃわかんだろ、俺様は休暇中なんだよ」
「休暇中に杯を満たす役目がいても良いでしょ?」
「お前な、付いて回る気か?」
「その通り。私と四六時中一緒なんて嬉しい?」
「シルヴィア、仕事の話なら今しろ」
「つれないね、ウル」
「お前の一晩は高く付くんだよ」
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