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「ハッピーバースデー、×××」
わたしが生まれた場所。そこは、バケツをひっくり返したような血の海の中だった。
奇妙な出で立ちの紳士が口にした単語は耳慣れないもので。
首を傾げるわたしに、その紳士もまた同様に首を傾げ、やがて合点がいったように手を打った。
「記憶を失くしているのですネ。珍しいケースではありますが、今日からのアナタには関係ないでしょウ…」
にいぃ、と大きく裂けた三日月がさらに角度を増し、紳士は高らかに声を上げた。
「我輩の名前は千年伯爵。さぁ、人間共を殺してしまいなさイ!」
「ハイ、伯爵サマ」
内側から湧き出る衝動に身を委ね、わたしという兵器は産声を上げた。