1

「ハッピーバースデー、×××」

わたしが生まれた場所。そこは、バケツをひっくり返したような血の海の中だった。

奇妙な出で立ちの紳士が口にした単語は耳慣れないもので。

首を傾げるわたしに、その紳士もまた同様に首を傾げ、やがて合点がいったように手を打った。

「記憶を失くしているのですネ。珍しいケースではありますが、今日からのアナタには関係ないでしょウ…」

にいぃ、と大きく裂けた三日月がさらに角度を増し、紳士は高らかに声を上げた。

「我輩の名前は千年伯爵。さぁ、人間共を殺してしまいなさイ!」

「ハイ、伯爵サマ」

内側から湧き出る衝動に身を委ね、わたしという兵器は産声を上げた。



|
novel top
ALICE+