中学3年の終わり、クラスメイトの進路が決まり始めた頃、なまえは一枚の手紙を持って雄英高校に向かった。
今朝方届いた雄英からの手紙。
最初は合否通知かと思ったが、封を切れば面談をしたいので、できるだけ早いうちにもう一度雄英高校に足を運んで欲しいという文面。その意図も分からないまま、なまえは今雄英高校の前に立ちすくんでいる。
来て欲しいと言われ来たものの、防犯装置が作動して中に入れない。ここで待っていればいいのだろうか。
マフラーに顔を埋めてふぅっと息を吐き出す。白い息が空気に馴染んで消えていく。
どうしたものかと考えていると、校舎の方から足音が2つ近付いて来るのに気付きなまえは顔を上げた。
雄英の制服を着た金髪の男の子は目が合うとにこりと笑みを浮かべる。

「やぁ、中学生?どうしたんだい?雄英にお兄さんかお姉さんが居たりするのかな?」

そう問われ、なまえはふるふると首を横に振った。
後ろに居た黒髪の男の子が「ミリオ」と呼びかける。

「受験生じゃないかな、この前の。忘れ物とか」
「あぁ!そうか!」

2人が納得している中、なまえはごそごそと鞄の中から雄英から届いた封筒を取り出し彼らに見せる。

「面接を受けるようにって、手紙が届いて、来ました」
「面接?」

男の子たちが顔を見合わせ不思議そうな顔をするので、異例なことらしいというのをなまえも察する。とりあえず職員室に案内しようか、とミリオが切り出したところでまたも後ろから声がかけられた。

「遠形、天喰。悪いな、出迎えが遅れた」
「相澤先生!」

こちらへ歩いて来る相澤と呼ばれた黒い服の男になまえはぺこっと頭を下げる。

「君も。寒い中待たせて悪かった」
「いえ。みょうじ なまえです。面接を受けに来ました」
「雄英の教師をしている相澤だ。じゃぁ、早速行こうか」
「はい」

2人の雄英生に会釈すると、一人は「がんばってね!」と親指を立てて見せ、もう一人も「がんばって…」と控えめに激励を送ってくれた。
相澤の背中を追って、校内に入る。ここに来るのは2度目ではあるが、1度目は受験のため入っただけ。廊下も広いし、やたら大きく感じる校内は1人であれば簡単に迷子になりそうだ。

「ここだ」

相澤が足を止め、なまえは視線を上げプレートを確認する。案内された先は校長室。
一声かけて扉を開けた相澤が横によけ道を開けてくれたので、なまえは「失礼します」と言って中に入る。

「やぁ!よく来たね!相澤君、ご苦労様!」
「はぁ。じゃ、俺はここで」

後ろで扉が閉まる。
部屋にはなまえの他に2人。1人は白衣の小柄なおばあさんで実技試験終了後に見た。怪我人を見て回っていたので、看護担当なのだろうとなまえは思う。もう1人はネズミのような熊のような容貌で、かっちりした服装をしているのでどうやらこの人?が校長先生のようだ。

「よろしくお願いします」

なまえが頭を下げると、2人はそれぞれ穏やかな口調で自己紹介する。根津校長と看護教諭リカバリーガール。予想は当たっていたようだ。
なまえは校長に促されるまま皮張りの上質なソファに腰を下ろす。

「まず結論から言っておくと、君はヒーロー科の試験に合格している。だからこれは試験じゃない。楽にして、って言っても緊張はしていないのかな?」
「はい、緊張はあまりしないです」

合格していたのか、と思いつつもじゃぁなぜ呼ばれたのかと疑問を禁じ得ない。

「今日君を呼んだのは、君のヒーロー像を聞きたかったからさ」
「ヒーロー像、ですか」
「そう、みょうじ君の個性は治癒と、テレポート。テレポートは自分が一度行った場所に限られる。それで間違いないね?」
「はい」
「知っているだろうが、治癒の個性はとても珍しい。リカバリーガールのようなヒーローを目指すのであれば、ヒーロー科でなく普通科に在籍し、ヒーロー科の法律等を学ぶ座学に混ざりながら医大進学を目的としてもいいと思ってね」
「実際に私も医療を学んだ後、特別免許を貰って活動してたからね」
「けれど、君はヒーロー科の試験に難なく合格して見せた。元の身体能力の高さか、増強型の個性も持っているのかな?どちらにしても君は戦闘能力もあると判断した上で、どんなヒーローになりたいのか、聞きたい」
「私は前線に立ちたいです。守られる側は嫌なので」
「…そうか」

根津校長がズッと音を立てて紅茶を飲む。
きっと先生たちは治癒系のヒーローを目指して欲しいのだろう。前線に出なくとも、称賛されるべき、立派なヒーロー。けれど、それではダメなのだ。自分が安全な場所に居るということが自分で許すことが出来ない。

「このような場を設けて頂いたのに、期待を裏切ってしまって申し訳ありません」
「君が謝ることじゃないのさ。治癒個性のヒーローが前線に居てくれれば、それだけ怪我人の対応も早く出来る。ただ適材適所、入学後はリカバリーガールの補助もしながら、いかに多くの人を助けるかということも学んで欲しいと思って居るのさ!」
「はい、よろしくお願いします」

その後、なまえは正式な合格通知と提出書類を受け取り、雄英高校を後にした。