その後2
2日目、今日は座席表があって、指定された所に座るようになっていた。
なまえは変わらず窓際の一番後ろ。多分治癒個性とか、校長が言っていた別カリキュラムの関係だろうと思い席へ向かう。
「あ…おはようございます、みょうじさん」
「おはよう」
挨拶が返ってきたことに八百万は驚きつつ、ほっと息をついた。
昨日仲良くなりたいわけじゃないと言い残して去ってしまったなまえだが、最低限のコミュニケーションは取ってくれるらしい。
八百万は少し勇気を振り絞ってまた話しかけてみる。
「みょうじさん、仲良くする気が無くても、クラスメイトの名前や個性は覚えておいた方がいいと思いますわ。これから実践訓練もあるでしょうし」
「大体、覚えてる」
「そ、そうなんですの?」
「昨日のテストで皆名前呼ばれてたから。それで大体」
「そうでしたか‥‥それなら、いいんですけれど…」
今度こそ八百万は前に向き直った。返答はちゃんとしてくれるものの、これ以上会話を続けるのは心が折れそうだった。
▽
午前中は通常授業。昼を挟み午後からはヒーロー基礎学。
チャイムが鳴る前に席についていたクラスメイトたちはどこかそわそわしていた。
「わーたーしーがー!!普通にドアから来た!!!」
NO.1ヒーローの登場に一気に教室が騒がしくなる。
ヒーローの素地を作るための訓練の時間。初日から戦闘訓練を行うらしい。
各自コスチュームが用意され、着替えた後グラウンドβに集合するよう指示がある。
皆が移動を始め、なまえもコスチュームを手に取っているとオールマイトに呼び止められる。
「みょうじ少女!君のことは校長先生から聞いているよ!治癒の個性なんだってな!素晴らしい!」
「…実技には参加させて欲しいって、話したつもりだったんですが」
リカバリーガールの補助に回されるのかと思い、なまえは少し眉を寄せる。前髪で隠れているせいで、オールマイトはそれに気付かないのだが。
「あぁ!もちろん、そのつもりだよ!ヒーローとしても治癒個性の持ち主が側に居てくれるのは心強い。みょうじ少女には如何なる相手と遭遇しても自分の身を守る術を、身につけて欲しいと思っている。期待してるぜ!」
「…できれば戦う術を身につけたいです。私、死なないので」
その言葉にぐっと言葉に詰まったオールマイトにペコッと頭を下げなまえは更衣室に向かった。
後ろから「くぅー!自信満々だなァ!!」とオールマイトが独り言ちているのが聞こえた。
▽
なまえはコスチュームの要望書に、防御性能は重視せず身軽さ、動きやすさを重視し、治癒個性発動のために内側に棘のついた腕輪か何かが欲しいと書いた。血が垂れても目立たないようにアームカバーを付属し、色は黒。
その結果、ノースリーブで胸の下あたりまでしかないトップスにスリットの入った短めのスカート。そして黒のショートブーツ。左の二の腕あたりにゴツめの腕輪がついていて、スイッチ式で内側に針が出るようになっている。腕輪の下からはフレア形のひらりとしたアームカバー。
露出をカバーするように腹部は胸下から黒の軽いレース生地で覆われているが真ん中でサイドに分かれる形になっている上に透けているのが逆にエロい。
なまえが何の躊躇いも反応も無くそれを淡々と身につけるのを女子たちはマジか、と内心思いながら見守っていた。
「露出度高めね。動きやすさ重視なのかしら」
蛙吹が指を頬に当て、まん丸な目でなまえを見ながら言った。
言っちゃうんだね!?と女子たちは思った。
なまえは皆を見た後、蛙吹に向き直る。
「そう要望出したらこうなった。でも、葉隠ほどじゃない」
そこも言っちゃうんだね!と皆は思った。
更衣室からグラウンドに出るとほとんどの生徒が揃っていて、それぞれが個性を活かすようなコスチュームに身を包んでいる。
「なんか…えっろ」
「ヒーロー科最高」
呟いた峰田と上鳴が女子に睨まれたのは言うまでもない。
少し遅れて来た緑谷をオールマイトが確認しふっと息を吸い込む。
「始めようか!有精卵共!」
その腹に響くような声が戦闘訓練開始の合図だった。
訓練の内容は2対2の対人戦闘訓練。ヒーローチームと敵チームに別れ、屋内での核兵器争奪戦だ。
チーム決めはランダムで、順番にアルファベットの書かれた球をボックスから引いて行く。
「オールマイト先生、無記入の球でした」
「HAHAHA!みょうじ少女がそれを引くとは!その球は一旦保留だ!対戦チームを見ながらこちらで決めさせてもらうよ」
「わかりました」
一回戦目はヒーロ:緑谷・麗日チームVS敵:爆轟・飯田チームだった。
他のチームはモニタールームでの観戦。
「さぁ君たちも考えて見るんだぞ!」
ヒーローチームは建物内への潜入に成功し、上階へと足を進める。
警戒しながら進んでいるところに爆轟が奇襲をしかけるが、緑谷が麗日を庇うようにそれを避ける。
皆が爆轟と緑谷の戦闘に思い思いの言葉を口にする中、なまえは黙ってモニターを見つめる。
緑谷が仲間を庇うタイプなら、麗日を狙えば緑谷が彼女を置いて先に進む可能性は少ない。2人同時に発見した時点で、爆轟は飯田に連絡を取り、一気に潰しにかかった方がスムーズだったのではないだろうか。
画面越しで何を話しているかは分からないが、爆轟は執拗に緑谷に突っかかり何か話している。恐らく爆轟が独断で動いていて連携がとれていないのだろうと思う。
戦闘能力の高さから敵チームの方が有利に思えたが結果はヒーローチームの勝利。
白熱したバトルに観戦していた面々もさらに士気が高まったようだった。
軽く講評を行った後、次の組み合わせが発表される。
ヒーロー:轟・障子チーム敵:尾白・葉隠チーム