得手不得手人によりけり


湖が美しいと評判の35番道路だが、路面自体は綺麗に舗装されており、草むらとはしっかり分けてあり歩きやすい。
そのあちこちにはピクニックガールやキャンプボーイといったトレーナーたちがスタンバイしており、さながらアトラクションの様に次から次へと勝負をしかけて来る。
しかし、ここでよく思い出して欲しいのだが、アッシュはそもそもバトルが苦手でありこの前お互いに不本意とはいえ譲り受けた形となったイーブイは全くもって懐いていない状態だ。
この状況をどう打開したものかとアッシュはずっと考えていたのだがいい案などすぐ様思いつく筈もなく……バトルになると案の定、

「イーブイ、たいあたり」
「……ブイ」
「イーブイ…おーい、」

ぷいとそっぽを向いたイーブイは全くもってアッシュの言うことを聞かずに首元を掻いている。
しかし相手が攻撃を仕掛けてくると元々暴れることが好きなのか、はたまたこれまでの事にストレスが溜まっていたのか、これでもかという程暴れ回って相手のポケモン達をノックダウンさせていく。
恐らく後者だろうとアッシュは察していた。

そんな訳でこの前のラッタ同様、アッシュは何もしないままであれよあれよと言う間に勝ち進んでしまったのだった。
真面目にトレーナーとして戦っている相手方には悪いが、本当に何もすることなくイーブイの力のみで勝ち進んでいる。

その途中、細い木が道を塞いでいたがうまく潜ることでそれを回避し、そのまま36番道路へと通り抜け現在、塾帰りだという少年にバトルを申し込まれていた。

「むむむむむ。毎日5時間勉強してるのに……。教科書だけじゃ分からないこといっぱいあるね」

残念そうにため息をつく塾帰りの少年は仕方ないといった風でポケットから小銭を取り出すとアッシュに渡して来る。
ラッタを連れていた時、一度虫捕り少年に要らないと断ったら「子どもだからって馬鹿にすんなよ!」とこっ酷く叱られてしまった為、アッシュは断ることなくそれを受け取る。

貰った小銭を取り出した財布にしまっていると、思い出したように少年が問いかけてきた。

「ねえねえ、お兄さんは何処行くの?」
「この先のエンジュに用があるんだ」

すると「この先はポケモンが邪魔していて行けないよ」と少年の方も財布をカバンに仕舞いながら律儀に教えてくれる。

「ポケモン?」
「そう!ウソッキーっていうんだ!」

バトルには負けてしまったが、知っている事を教える事が出来て嬉しいらしく、少年は色々な事をアッシュに教えてくれた。
そもそもウソッキーというポケモンは岩タイプなのだが木に擬態することが得意らしく、今はこの先の道で木に成りすまして通せんぼをしているらしい。

何でも前に一度トレーナーに負けて何処かへ行ってしまったらしいが、最近になってまた現れ始めたらしい。
余程そこが気に入っているのか、はたまた別の個体が前の個体同様にその場所が気に入ってしまったのかは分からないが何とピンポイントで邪魔な位置にいるんだろうかと思えてならない。

ウソッキーは水が嫌いだとも教えてくれたが、水をかけられたウソッキーは狂暴性を増すため子供は近づくなと言われているともアッシュに教えてくれた。

「そうなのか…。色々教えてくれてありがとうな」
「僕は色々勉強してるからね!また教えてあげるよ!」

ふふん、と得意げな少年にまたよろしくと声をかけ、アッシュはウソッキーがいるという場所へと進んでいった。


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