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一応気をつけてねーという少年の声が後ろから聞こえたので手をあげてそれに答えながら黙々と先を進んでいくと、前方で何やら道をふさいでいるのが見え始めた。

「……あー、うん。こりゃあ通れないな確かに」

実際見てみないことには何とも言えないと思っていたのだが、ピンと手足を開いた状態で仁王立ちしているウソッキーはなかなかに邪魔である。
体長はアッシュの半分ちょっとなのでそれ程大きくはないが、触ってみると岩ポケモンらしく硬い身体とひんやりとした体温が伝わってきた。
そもそも何故ここの道は人一人通るのがやっとな程狭いのだろうか。
道を外れようとすると急な下りになっていて危なくて迂回する事も出来そうになかった。
かといってウソッキーにイーブイの攻撃はあまり効かないだろうと悟り、アッシュはどうしたものかと暫し腕を組んで考え込む。
その後カンポウから貰った鞄をごそごそと探り、目当ての物を見つけたアッシュは音もなくそれをウソッキーの身体へと押し付けた。

「なぁ、どいてくれないか?一枝だけで良いんだけど」

家を出る際に持ってきた冷めたい美味しい水を蓋を開けた状態で突きつける図は旗から見たらさぞや滑稽だろう。
横にいたイーブイは一体何をやってるんだとでもいった冷え冷えとした視線を送ってくるが、アッシュは動じることなくウソッキーに語りかける。

「少し動いてくれたらそれでいい」

素知らぬ顔を続けるウソッキーだったがやはり多少思う所はあるらしく、その身体にじんわりとした汗が浮かび出すのが見えた。
それでも余程動きたくないのか、身動きはせずそのまま通せんぼを突き通している。
このままいくとポケモン愛護団体にでも訴えられそうだが、イーブイの技が通じないならばアッシュにはこれしか手段が思い浮かばなかった。

その状態でどれくらい経ったのか分からなかったがアッシュの腕が痛くて限界を迎えつつあるのは確かであった。
正直内心やはりこれでは無理だったか、一度戻った方がいいだろうかなどと色々思い始めたその時、

「……ッソッキー…」

ボトルの水が零れないようにそっと、しかしとても嫌そうにウソッキーが片腕を仰け反らせたのだ。

「……ありがとう」

ウソッキーが開けてくれた所をくぐる様にしてアッシュとイーブイはその横を通過する。
時間はかかってしまったがどうやら何とか成功した様なので特に何もバトルする事なくすんなり通る事に成功したアッシュ達であった。



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