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※センター内ねつ造注意


センター内は思ったよりも広く、館内図をのぞき込むと宿泊部屋自体は地下にあるものが多くアッシュの部屋もまた地下にあるようだった。
エレベーターで下へと行き目的の部屋へと辿り着くと、鍵を使って扉を開ける。扉の近くにあった点灯スイッチを押すとぱっと明かりが着いた。
入ってすぐ左手に扉があり、その横を通り過ぎた奥に部屋が広がっているようだ。中に入ると、全体的に簡素ではあるが白で統一された清潔感ある部屋が広がっていた。
右奥にはベッドが一つ。横には小さな机と椅子が置いてある。
左手前には申し訳程度のキッチンがあり、よく見るとすぐ隣には小さな冷蔵庫もついていた。地下のため窓はなかったが、代わりにエンジュシティの写真が何枚か額に入って飾られている。
振り返るとイーブイが入り口に身を隠す様身を縮こませたまま様子を伺っていた。

「イーブイ、おいで」

なかなか入って来ないイーブイを呼ぶと、一瞬迷うような間があった後でトコトコと寄ってくる。へっぴり腰とまではいかないが、警戒した様子だ。
キョロキョロと周りを見渡し、そこが安全と理解したのかベッドの横に身体を押し付けるようにして座り込んだ。そのまま毛繕いを始める姿を見つつ、アッシュも少し戻って左手にあった部屋を覗き込んだ。そちらはトイレ、奥には仕切られたシャワールームがあった。
成程、水場が一つにまとまった構図なのだなと1人納得する。
とはいえこれだけあれば長期的にも生活出来てしまう。あの安い料金でこれが運営できるのだろうかと心配になってしまったが、バイトが休みの身としては正直とても有難かった。
というか店長がいつ帰ってくるのか分からない以上、今後のことを考えなくてはいけないかもしれない。今はなんとかやりくりし続けた分の貯金があるので良いが、それももたもたしていればすぐになくなってしまうだろう。

「やっぱ違うところ探さないといけないか…」

今のバイトは気に入っているが、長期休暇ともなればアッシュは別のところで働かなければ家賃も払えない。コガネシティは仕事が多い代わりに家賃もやや高いのだ。
とりあえず一度店長に連絡を取る必要があるなと思いながら、アッシュはイーブイに向き直った。

「イーブイ、腹は大丈夫か?」

とりあえずジョーイに言われた通り空腹の有無を聞いてみると寄越せ的な返事が返って来る。
部屋に設置されている簡易キッチンに置いてあったプラスチックの皿にフーズを入れてやると、近寄ってきたイーブイは早速皿へと頭を突っ込んだ。食欲旺盛なのは良いことだと安心して、アッシュはベッドに置かれていた真新しいタオルを片手にシャワールームへと向かった。
頭から熱いシャワーの湯を浴びながら、洗っていないイーブイのことを考える。流石にバトル続きで割と砂だらけだった気がするが、果たして毛繕いだけで落ちるのだろうか。
未だ抱っこさせてくれないのでとりあえず後で濡れタオルとかで軽く拭いてやろう。少しは汚れが落ちるかもしれない。

そんなことを考えつつ、身支度が終わったアッシュはそのままイーブイを捕まえると、先程考えていた通り濡れタオルを実行する。イーブイはというと、想像していたよりも大人しく拭かれていたのでもしかしたら次回はきちんと洗ってやれるかもしれない。流石にバトル続きで洗わないのも不衛生だ。
そのあとで持ってきたタオルケットをカバンから取り出すとイーブイの為の寝床を整える。いくら慣れてきたとはいえ、自分の匂いのしない寝床では寝ないかもしれないと思ってのことだ。イーブイはすぐ様そこへとダイブして行ったのでやはり持ってきて正解だったようだ。

それらを終えてからようやくベッドへ横になったアッシュは横になったまま思いっきり伸びをする。
伸びをした拍子に右手をベッドの縁にぶつけたが、久しぶりの遠出や誰かと一緒の食事に思ったよりも疲れが溜まっていたらしく、動く気にはなれなかった。
ごろりと横を向くついでにベッド下を覗き込むと、先程タオルケットで作った簡易スペースで丸くなるイーブイが視界に入る。
戦闘続きなのもあるだろうが、ぐっすりと眠っている姿にほっとする。
だがよく見るとその眉間には起きていた時と同じくシワが寄っていてアッシュは思わず笑みを零した。
思えばこんなに近くでイーブイ寝顔を見るのは初めてである。そして同時にこんなにもポケモンは懐かないものなのかと考える。
あいつらの相棒もそうだったのだろうかと、故郷の弟分達のことを考えながらイーブイを見ている内にアッシュは深い眠りへと落ちていった。


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