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それから数日、アッシュは相も変わらずバイトのためにせっせと薬草帖に載っている写真や付けたしの手描き絵を見ながら、実際に乾燥させた薬草とそれらを見比べていた。
そうしてその内容を頭になんとか叩き込もうとしているところである。
イーブイはというと、それを面倒くさそうに見つめてはくぁっと欠伸をして身体を丸めていた。
手書きの文字に関してはまだ完璧に覚えたわけではなかったが、それでも何とか記憶に残りつつある。
そんなわけで何とか覚えたそれらに実際の香りや見た目の感想を頭の中で付け足しながら自分なりに薬草の種類を覚えようとしていると、カンポウ宅の扉が開いた。
どうやら出かけていた家主が帰ってきたらしい。

「どうだった?」
「大分良くなったよ」

そう主観的感想をもらしてよっこらせと上がり込むカンポウに「医者にはなんて?」と聞くと、まだ掛かるらしいのうと大きくため息をついた。

カンポウはなかなか病院へ行かないせいで何日も前からの続いていた腰痛に未だ悩まされており、最近ようやく町医者の元へと通うようになったのだ。
まるで子供のように病院は好かなくてのぅと言っては通院を拒否する為、ならば医者に来てもらうかとアッシュが脅すとようやく文字通り重たい腰を上げたのだった。
詳しく聞くと、後1週間も通えばとりあえずは治るらしいが、カンポウはそれが嫌で仕方ないらしい。
自分で薬を作って貼ると言い出しているので、恐らく通院は今日で終了することだろう。
とはいえ、1度専門に診てもらえればこちらとしても何もしないでいるよりは安心である。

「それよりアッシュや、この前言っていた長くなる配達の件なんじゃがのぅ?」
「あぁ、それか。んで、何処まで行けばいいんだ?」
「今回はタンバシティまで行ってもらいたいんじゃ」
「タンバ?!」

タンバシティといえば、確か海を渡った先にある島であった筈である。
予想外の発言に驚いていると、

「タンバにある薬屋は親戚での」

と更に予想外の発言が聞こえ、アッシュは目を丸くした。
タンバの薬屋といえば、何でも治るという噂のある秘伝の薬でその方面からは有名である。
それがカンポウの親戚であったとは、この爺さん侮れないなとアッシュは再認識したのであった。

そんなわけで多少驚く事は続いたものの、時間がかかる長旅では少し多めに給料を貰っているので特に不満はない。もはやバイトの域を超えつつあるアッシュであったが、貰える分には不満はない。
強いて言うなら家にいる時間が短くなったので家賃を払うことが惜しくなったことくらいだ。
そこまで考えて、ふとこの前今の部屋が狭く感じたことを思い出した。
そこでカンポウにその事を相談すると「任せておけ!」と何やらいつも以上に意気込み始めた為、アッシュは正直心配でしかない。
何だか物凄く心配だが行かないわけにもいかない為、アッシュは一抹の不安を抱えたまま大体の経路を聞くことにした。
タンバシティに行くにはまずアサギシティまで行き、アサギから出ている船でタンバシティへと上陸するらしい。
とりあえずエンジュで一泊してからアサギの方へ向かうのが良いだろうと思い、アッシュは早速家へと戻り長旅のための服を揃える事にした。



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