遠出の準備はしっかりと


疲れていたイーブイをコガネのポケモンセンターに預け、その足でカンポウの家にきたアッシュは先ほど出会ったポケモン達について尋ねた。
アッシュから話を聞いたカンポウはその特徴を聞き、「あぁ、ホーホーじゃのぅ」と答える。

「へぇ、ホーホーって言うのか」
「ホーホーは賢いヤツでの。地球の自転を感じ取っておるから正確な時間を常に把握しているんじゃよ」

だから時計代わりに持ち歩くトレーナーも多くてのとカンポウは付け加えた。
そして、ずっと気になっていた水ポケモンの方は鳴き声から判断するにウパーで間違いないだろうとのことだった。
ウパーは水と地面の混合タイプらしい。

「名付けた理由が分かり易いなぁ」
「ふぉふぉ!実際ポケモンは鳴き声から名付けられたものも多いようじゃよ。……しかしそれにしても、ウパーは昼間あまり陸上を歩きたがらないんじゃがなぁ」

余程歩き回るのが好きなんじゃろと笑ったカンポウに「へぇ…」と相槌を打ちながら、今度会った時はウパーと呼んでやろうと密かに心に決めた。

とりあえず今夜は遅いのでもう帰ろうとカンポウ宅をお暇しようとすると、「ちと次回は長くなる配達を頼みたいんじゃ」と言われた。

「いいけど、どのくらいかかるんだ?」
「んー、お前さんの足でも1週間も掛からんと思うがのぅ」

それは今までに比べると随分と長旅である。
次来た時にはその為の打ち合わせをし、準備を整えてから出発となる手筈のようだ。


お金は貰えることだし良いだろうと考えたアッシュははいはいと軽く頷くと、そのままポケモンセンターではなくデパートへと足を進めた。
そろそろ新しいフーズを買い足そうと思っての事だった。
いつもの様にノーマルタイプ用のフーズを手に取っていると、フーズの横に何やら小瓶が並んでいるのに気がつく。
何だろうと思い一つ手に取ってみると、それはフーズ用の調味料のようなものらしかった。

「へぇ、こんなの売ってるんだなぁ」

確かイーブイは酸っぱい味が好きだったはずだなと思い、酸っぱい味付けの小瓶を手に取ると会計へと足を向けた。
中には木の実をブレンドしてそのポケモン専用フーズを作る人もいるらしいが、アッシュにその根気はない。
しかし、このまま出費がかさむならばその方が安いかもしれないと考えたが作り方も分からない為「まぁ、まだいいか」とその問題は先送りにすることにした。

その後イーブイを受け取りに行き自身のアパートに帰宅すると、アッシュが鍵を閉めている間にイーブイが浴室と台所を通り過ぎて居間の方へ駆けていく。
どうやらお腹がすいているらしい。
棚から適当に皿を取り出してフーズを入れると、早速今日買ってきた調味料を試してみることにした。
イーブイはいつも通りフーズを食べているつもりのようだが、そのスピードはいつもよりも速いので美味しいのだろうと察し、アッシュはこっそり笑みを浮かべた。


食後はいつも通りアッシュのベッドの端に座って毛づくろいを始めたイーブイを見つつ、アッシュはそれをソファーで眺めていた。
1人の時にはあまり感じなかったが、イーブイと一緒にいるとたまにこの部屋では狭いのではないかと思えてくる。
イーブイはポケモンでも小さい部類なので何の不都合もなく生活しているが、それでもやはりこの前のように暴れ回る姿を見るとこの部屋では狭い気がする。
今度カンポウに相談してみようと思いつつアッシュはそのままソファで寝てしまった。
翌朝それを発見した空腹のイーブイが無言の奇襲をかけたのは余談である。



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