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中に入ると無機質な作りかと思いきや、意外と机やテーブルも用意されており観光の地であることが分かる。
階段もあるらしいが、アッシュはエレベーターにてさっさとライトルームへと登っていく。
登った先にはグルリと囲うように円柱状の部屋が一つあり、どうやらその中にジムリーダーのミカンはいるらしい。
どうするか迷ったものの、カードキーを使う扉は分厚く声をかけても聞こえないだろうと思い、普通にカードを通した後部屋へと入ることにした。

中にはやや驚いた様子の少女と額に綺麗な赤い宝石をもつポケモンが寄り添うようにして座っていた。黄色と黒の縞模様が美しいポケモンだ。

「すみません。漢方配達をしていますアッシュという者です。ジムリーダーのマツバから依頼されて配達に来ました」

こちらにいると聞いてジムからカードキーを借りましたとアッシュが告げると、少女もまた立ち上がり裾を直す仕草の後に一礼した。

「あ、えっと、わざわざありがとうございます。あたしがジムリーダーのミカンです」

アッシュは頷くと鞄から荷物を取り出してミカンへと手渡した。荷物を開けたミカンは納得したように頷いてからアッシュへと向き直り礼を言った。

「良かった。アカリちゃん、まだ本調子ではないので……あまり離れたくなかったので届けてくれて助かります」
「アカリちゃん?」
「は、はい……このコです」

ミカンは後ろに控えるポケモンを振り返って頷いた。

「デンリュウという……ポケモンです。このコがいつも海を照らしてくれるの」

紹介されたのが分かったのか、デンリュウは頷くように長い首を前後にゆらゆらと揺らした。

「あの……漢方屋さんなんですよね?タンバの薬屋さんではなく…」
「ええ。コガネの漢方屋の方です」

遠いところわざわざすみません、と首をすくめるミカンにアッシュはやんわりと首を振る。

「丁度タンバシティに行く途中なので。ついでに頼まれただけですから気にしないでください」
「タンバシティに?」
「ええ、タンバの薬屋に薬草を届けに行くところです」


アッシュがそう告げるとミカンは納得したように頷いた。

「そうですか……。タンバの薬屋さんにはアカリちゃんがお世話になって……まだお礼も出来てないんです。もしよろしければ是非お礼を伝えて頂けると嬉しいです」

アカリちゃんが元気になったら近々行こうとは思ってるんですがとミカンが続けた為、アッシュはデンリュウの方を仰ぎ見た。
確かに一見普通のように見えるが尻尾がぺたんと下に下がっており、よく見ると毛艶が悪くどことなく活気がない。

「分かりました。会ったら代わりに伝えておきます」

アッシュが頷くとミカンはほっとしたように肩の力を抜いた。
その後アッシュはミカンといくつか会話を交わした後、イーブイを迎えに行く為灯台を後にすることにした。

戻ったアッシュはポケモンセンターにてイーブイを受け取った後、アサギのジョーイのおすすめですぐ隣にある大衆食堂で昼食を取ることにした。
そこで店主おすすめの定食を頼んだのだが、恰幅の良い船乗りに合わせたメニューはボリュームたっぷりで正直モヤシ体型のアッシュには完食など程遠い。
それに気づいたらしい周りの船乗り達にもっと食えと笑われながら何とか食べ進めるも食べきれず、結局アッシュは早々にギブアップしたのだった。
それを見かねた店主は後で食べれるようにと残りを弁当にして包んでくれた。
そんなわけで少しばかし恥を晒しながらも店主手製の弁当を手に入れたアッシュは、その足でタンバシティ行きの船に乗り込んだのであった。



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