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「ん……なんだ冷た!!」
「ゴースゴスゴス」

翌朝、アッシュはイーブイのいつもの頭突き……ではなくゴースのぴったりと寄り添った冷気で飛び起きた。
よく分からないがゴースのガス状の身体は触れると冷気を感じるのだ。

「びっくりした……」

そんなアッシュの様子を見て悪戯が成功したゴースは嬉しそうにくるくると回った。
どうやら朝食が出来たと呼びに来たらしい。
イーブイはと辺りを見回すがいないので先に行ったようである。
なる程、起こされなかったのはフーズをくれる存在がいた為かとアッシュは納得した。

「おはようアッシュ君」
「おはよう」

居間ではマツバが朝食を用意して待っていてくれた。
美味しそうな朝食を無心に食べていると、マツバははこれからについて尋ねてきた。

「ところでアッシュ君達はこの後どこへ?」
「あぁ、タンバシティまで配達にいく。アサギシティから船に乗るつもりだ」

カンポウの話ではそこから乗船が出ているらしいと告げると、マツバはうんうんと頷いた。

「確かにあそこから船が出ているね。そうだ、アサギへ行くならちょっと僕のお願いも聞いてくれるかい?」

マツバのお願いとは、アサギシティのジムリーダーに届け物をして欲しいということらしい。
泊めてもらった礼もある事だしと、アッシュは二つ返事でそれを了承した。



マツバから荷物を受け取ったアッシュはゲンガーとゴースにも見送られながらその後いつも通りイーブイを出した状態でまずはアサギシティを目指してエンジュを旅立った。
途中、何人かのトレーナーにバトルを挑まれたりしながら38番道路を進んでいくと、草むらを抜けた先にモーモー牧場の看板を見つけた。
よく見ると遠目に体の大きなポケモンが群れをなしているのが見える。
それに少しばかり惹かれたりもしたが、ちらりとそれを見たイーブイがさっさと先に行ってしまった為仕方なく先を急ぐことにした。
どうやらあのポケモン達には興味を惹かれなかったらしい。

そのあとはまさかの三人のトレーナーを立て続けに相手にし、途中でイーブイがかなり疲弊してしまった。
バトル自体でもそうだが、相手のトレーナーがポケモン好きで何かある度に叫んだり泣いたり笑ったりと忙しい上に何かと教えたがるためである。
煩いのが嫌いなイーブイは顔を歪めて嫌がり、しまいには相手のトレーナーに突っかかろうとしたが相手はそれすらも可愛い可愛いと喜んでいる。
イライラとしたイーブイを宥めるのに苦労したのはアッシュである。
その上一番最後の女性トレーナーには、「もっとちゃんとブラッシングしてあげなきゃだめよー!」と頼んでもいないのにブラッシングの仕方まで伝授される。

そんな様子で潮の匂いも濃く、もう直ぐそこだというのになかなかアサギシティへたどり着けず気が気ではなかったが、その後十分程で無事にアサギシティへと何とか到着することが出来た。




潮の香りと人の活気に溢れたそこはまさに港町というイメージに相応しい。
何とか昼前に到着することが出来たとアッシュは胸をなで下ろした。
さて、とにかく疲弊したイーブイを回復せねばとアッシュとイーブイはとりあえずポケモンセンターへと向かった。
イーブイをポケモンセンターに預けている間、アッシュはマツバのお願いを済ませようとジムの方へと足を進めることにした。
向かったアサギのジムは全体が鉄壁の名の通りいかにも屈強な建物で揃えられており、中にも強そうなトレーナーが控えていた。
挑戦者と間違えられぬよう、アッシュは素早くトレーナーにジムリーダーに遣いがあると告げると、ジムリーダーのミカンは不在であるとのことであった。
ジムリーダーは常にジムに控えているイメージでいたがマツバといい、そうでもないのだろうかとやや疑問に思う。
今の時間なら灯台にいると聞き、アッシュは海沿いにある灯台へ行ってみるようアドバイスを受けた。
その際、灯台のカードキーだと言って1枚のカードを渡される。
そんなほいほい重要なものを渡していいのだろうかとも思うが、ないと入れないということなのでまぁいいだろうと勝手に納得することにする。

アッシュは言われた通りアサギに止まった船を見つつ、街の端にある灯台へと登ることにした。


ここはアサギの灯台
別名 輝きの灯台 と呼ばれています

灯台の前に書かれたプレートを読みつつ灯台を見上げると強い潮風に打たれながら大きく構える灯台の姿が見えた。
アサギシティ自体潮風が強く感じられるが、灯台に続く階段を登ると風の強さが段違いに強くなる。
アッシュは風を避けるようにやや猫背になるといそいそと灯台の中へと入っていった。


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