面倒事は大概本人の了承なしに進む


結局その日は一晩中文句やらお小言やらを聞き、一睡も出来なかった。
寝ようとすると、いなくなった仕返しと言わんばかりに起こしにかかるレッドとグリーンに相棒達は呆れた顔で早々にベッドの上で眠りについていた。
それを何度羨ましく思ったことか。しかし自業自得とばかりにポケモン達はアッシュを助けることなく健やかな寝息を立てていた。アッシュのイーブイも同じくである。



徹夜のせいで朝日が目に痛い中、ナナミの作った朝食を取っているとレッドから今度こそバトルしようと言われる。
甘い木の実ジャムとクリームをたっぷり乗せたトーストを齧りながらアッシュはあっさりと返事を返した。

「しない」
「……なんで」

それに対し、口をややへの字に曲げて不満ですをアピールするレッドに、アッシュはそりゃそういうに決まっているだろうと思わず内心ツッコミを入れた。口の中が甘いトーストでいっぱいだった為である。
代わりに苦笑交じりのグリーンがその理由を代弁した。

「仕方ないだろ。アッシュのポケモンまだ育て始めたばっかなんだぜ?」

お前とバトルしたら流石にただの怪我じゃ済まないだろうと言われ、理由があったことで少しだけ納得したらしくそのまま無言になる。

「ごめんなレッド、ごちそーさま」

それで話は流れただろうと勝手に安心し、アッシュは洗い物をしようと立ち上がった。
この時のアッシュはその後レッドは諦めてくれたものとしてあまり気にしていなかったが、レッドは違ったらしい。

まさか研究所から他のポケモンを連れてくるとは思っていなかった。
一時間ほどいなくなったと思ったら、比較的弱い子を連れてきたと言って戻ってきたレッドはボールをアッシュに突きつけ、「アッシュ、バトルしよう」と清々しく言い切る。
そうだった、ポケモン…特にバトルの事となるとレッドはこういうやつだったと久しぶりに会うせいで忘れていたレッドの悪い癖を目の当たりにして頭を抱えたのだった。

その後何をどう言って誤魔化してもレッドは一歩も引かず、結局レッドとバトルすることになってしまった。
アッシュにはイーブイしかいないため、とりあえず一本勝負となったのだが……結果は言わずもがなである。
ちなみに審判はグリーンがノリノリで行なってくれた。
この場には三人しかいないので消去法的にいってもグリーンしかいないので有難いはずだが、乗り気が全くしなかった為複雑であった。




「……だから言ったんだよ。お疲れイーブイ」


バトル終了後、目を回したイーブイを労わりつつボールに戻し、とりあえず回復の為に研究所へ行くかとアッシュは歩き出す。
ふと振り返ると、ついて来るかと思われたグリーン達は何故かその場で互いにボソボソと話し合っていた為とりあえず放っておいた。

研究所へイーブイを預けに行くと、レッドがポケモンを取りに来たことで察していた研究員達に苦笑しながら肩を叩かれたり、労わりの言葉をかけられたりする。
それに返す言葉が見つからなかったアッシュは「はははは」と乾いた笑いを漏らした。




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