3


「……すまん、もう一回言ってくれ」



とりあえず少し滞在が長くなるかもしれないから連絡せねばと研究所からカンポウ宅へと連絡を入れたアッシュだったが、電話口にカンポウの姿はなく、ラッタがキリッとした顔で立っているのが画面いっぱいに見える。

「オーキド博士から連絡をもらってのう。ついでじゃから勉強に励むと良い良い」

カチカチと前歯が動いている為、ぱっと見ではまるでラッタが話しているような錯覚を受けるが、その声は紛れもなくカンポウの声である。
ラッタの影になる所にいるらしいカンポウは嬉しそうな声で朗らかに言う。



あまりにもしつこいグリーンとレッドに辟易したアッシュは仕方なくカンポウに連絡を取り、何とか説得してくれと頼み込む為に電話したのだがが既にオーキドが連絡を取っていたらしい。
あぁ、こりゃあ言ったところで無駄だなと早々に悟ったアッシュは大人しく口を噤んだ。そういえばよくよく考えてみればカンポウは勉強賛成派であった。
差し金は恐らくグリーンであろうが、レッドだったとしても2人に弱い博士は喜んで連絡を取っただろう。
ちなみに身体は大丈夫なのかと聞くと、「何とかなるわい」と何ともまぁ心配な返事が返ってきた。

「いや、でもじいさ………ひっ!」

カンポウの体調を理由に何とかこの場を切り抜けられないかと打算したアッシュだったが、突然割り込んできた赤いキノコに情けない悲鳴を上げる。
どうやらポケギアから連絡を取っているらしく、赤いキノコに変わる直前にはいつも部屋に干してある薬草の束が見えた。
赤いキノコもといパラセクトは画面を覗き込みアッシュの姿を確認すると、両腕のハサミをゆらゆらと揺らしてアピールする。
その仕草からどうやらこちらに友好を示しているようだが、相変わらず全くもって感情が伝わってこない。
アッシュからしてみればゾンビや幽霊など、とにかく得体の知れないものがゆらゆらと揺れているような感覚に近かった。
その恐ろしい光景に血の気がさっと引いて行くのが分かり、

「……あ、あまり無理はしないでな」

と返すだけに留める。そこまで頼りにしていた訳ではなかったのだが、最後の頼みの綱を掴む前に自身からがあっさり切ってしまったが後悔はしていない。

怖いものは怖いのだ。

すると見兼ねたらしいラッタが場所を代わり、アッシュの顔を覗き込んだ。
読み取るに、大丈夫かとか情けないとか言っているようであったが、その通りなので引きつった顔のまま無言で頷く。
そんなアッシュに「たまには親孝行しなさい」と言ってカンポウもといラッタはヒゲをひくひくと動かしながら電話を切った。

「……はぁ」

その親は帰ってきてないんだがと思いつつ、背中を押されては仕方ないとアッシュも実家に滞在することにした。
後ろで一部始終を聞いていたレッドは不思議そうな顔をしていたが、グリーンは何事か考え込んでいる。
それでも数秒後にはしてやったりというような表情を浮かべたので、

「……はぁ」

それらをちらりと見やったアッシュは二年間音信不通にした報いだと思えば仕方ないと言葉を飲み込み、再びため息を吐いた。



- 61 -

*前次#


ページ:

【TOP】

ALICE+