学習意欲は引き出すもの


「まぁ、バトルするにはポケモンのこと知らないことには始まらないよな」

ホワイトボードの前に立ったグリーンはそう言ってボードをコツコツと叩いた。
ちなみに場所は研究所の奥にある会議室…というか普段はミーティング等に使っている部屋である。
グリーン曰く、これから3日ポケモンについて学び、最終日にはテストも行うらしい。日数については単にグリーンの時間が空かないからである。何だかんだ言っても、ジムリーダーは忙しいのである。

出だしにあれだけ渋っておいて何だが、ポケモンのことを教えて貰えるのは正直有難いとは思う。
とはいえ、お互いに寝不足の身である。

ここ、重要なので何度でも言おう。
寝不足である。
それでもグリーンが元気なのは単に年齢の差だろうか。こんな所で年齢の差が出るとは何ということだ。


アッシュがそんなことをつらつら考えているとは知らず、グリーンはさっそく講義形式の授業を開始する気らしい。
持ってきたらしいレジュメをパラパラと捲ると、どうやら内容的には極ありふれたポケモンのいろはについてのようだった。
それらはポケモン塾やポケモントレーナーになるための講習で普通は教えているらしいが、とっくにその年齢を超えたアッシュのような者はその場でカードを作ってしまうことが多いらしい。
そもそもマサラに塾はなかったし、わざわざ遠出してまで勉強しに行くほど興味がなかったアッシュは全く知らずに育ったのだった。

ポケモンを持たない人間も勿論存在する。
色々事情があるだろうが単にポケモン嫌いだったり、ポケモンに好かれない体質だったり、アレルギーなんて人もいる。
そんなわけで少数だがポケモンと触れ合わない者が存在する為、勿論全員が通う義務はない。
とはいえ、特に少年はポケモンマスターを目指すのが当たり前となっている中でかなり珍しい部類であることには変わりない。
そして初日こそグリーンとマンツーマンの分かり易い授業であったが、グリーンはジムの運営もあるので次の日からはその殆どが課題として渡されることとなった。
流石と言うべきか、アッシュ用に作られたらしいそれらの課題は分かりやすい。
しかし日を追う事にそれらは難しい箇所が多くなっていった。

「単タイプは平気なんだけどな」

自宅にてグリーンに渡された課題を睨みつけるように見つめながらアッシュは呟いた。
タイプとその強みや弱点自体は特に問題なく覚えられたのだが、複合タイプのものは弱点が増えたり減ったりと面倒なのだ。
複合するタイプ自体によっては相殺されるタイプもあれば、相殺されず弱点とカウントされるものもある。

「……めんどくさい」

休憩とばかりに辺りを見渡すとベッドの上では相も変わらずイーブイが退屈そうにして座っている。
それを見つつ、ぐっと伸びをすると再び机へと向かう。
内容を理解できるようになりあとから分かった事だが、グリーンは割と鬼畜な量の課題をアッシュに課していた。
1回のテストで終わらせようとしたからだろうか。とはいえアッシュには失敗出来ない大きな理由があった。

「キノコは嫌だ…キノコは…」

昨日グリーンに言われた一言を思い出してアッシュは思わずペンを持つ手を震わせ、うわ言のように呟いた。



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