一日一字を学べば


コガネに戻ったアッシュは早速カンポウ宅へと向かうとオーキドの見舞い品や、アッシュの故郷の話を土産話として渡した。
イーブイとウパーはというと、ラッタに呼ばれて何やら話を聞いている。
何の話かまでは分からないが、もしかしたらカンポウの様子から今後のことを予め話しているのかもしれない。そのくらい聡いネズミポケモンなのである。

それはそうと、アッシュはアッシュでカンポウへ一通り話を終えると今度はカンポウが弟子入りについて話し出した。

「弟子といってもまだお前さんは素人の様なもんじゃからの。ここから本格的に基礎を学び、まずはポケモン漢方についての知識を高めてもらいたい」

まずは半年、ここで基礎を学んでほしいとカンポウは続ける。

「半年?何だか短い気がするんだが…」

ポケモン医学とは違うものの、医学に通ずるのがポケモン漢方だと聞いたことがある。それにしては随分短いのではとアッシュは首を傾げた。

「そうじゃの。だがそのあとには次の段階が待っておるからの。出来ることなら漢方薬学試験も受けさせたいところじゃが、これを受けるにはちと条件があっての」
「条件?」

そうじゃ、とカンポウは頷く。

「何種かあるが一つは医学部に行くか、もしくは師について四年学ぶことが条件じゃ」
「それじゃあ……ここで半年学んでも全然足りないんじゃ?」
「まぁそう焦るでない。そのあとは他の地方に出て実践を積んでもらう」

色々な土地のこと、土地に根付く薬草達のことを学んでほしいというのがカンポウの願いらしい。
それを叶える為にもまずは基礎を積まなければならない。

「本当なら数年かけるところじゃが、そこを半年で頑張ってもらうからの」
「は?!」

ふぉふぉふぉっと笑ってはいるが笑い事ではない。一体何年分の勉強をさせる気か知らないが、無茶を言われているのは分かる。
出会った当初から常々思っていたが、本当に飄々とした爺さんである。
とはいえ、学ぶと言った以上出来る出来ないはともかくやってみなければ話にならないだろう。
そのまま今後の流れを聞き、その日は帰ることにした。





その夜、アッシュはイーブイ達が思い思いに過ごしている間に部屋でマツバに連絡を取り付けた。
すっかり色々あって届け物を無事手渡した旨を連絡することを忘れていたのだ。ジムリーダー同士連絡手段はあるだろうからもしかしたらミカンから既に何か聞いているかもしれないが、それはそれこれはこれである。
何日も経ってしまったのが申し訳ない。

「――マツバか?」
「……もしもし、アッシュ君かい?」
「あぁ。今大丈夫か?」

アッシュの問いにマツバは大丈夫だよと答えた。
後ろで誰だ?とポケモンの鳴き声がするので多分またゴースでもいるのだろう。
ゴースの鳴き声を聞きつけたのか、イーブイがいつものベッド側でピクリと耳を動かしたのが見えた。
ウパーはというと、何故か床でゴロゴロと転がって遊んでいる。


それを横目で見つつ、アッシュは無事にアサギへの使いは済んでいることとその連絡が遅くなった事を謝罪した。
それに対しマツバは穏やかに対応する。

「実はあの後ミカン君からすぐに連絡を貰ってたんだ。そのままタンバに向かったと聞いたからね。忙しかったんだろう?」

大丈夫かい、と反対にマツバに心配されてしまった。
タンバと聞いて薬屋での出来事を思い出したアッシュは苦笑しながら肯定する。
それからタンバで何故か薬屋を手伝わされたこと、帰りに弟分に会ったこと、そして漢方屋に弟子入りして故郷へ帰ってきたと思ったらあれよあれよ言う間に勉強を開始することになった事など……要するにこれまでの事をつい矢継ぎ早に話してしまった。
自分でもあまり気づいていなかったが、何だかんだで不満が溜まっていたらしい。
よくよく考えてみれば前半は流されていたとはいえ目まぐるしい数日間だった気がする。

すると、
「あぁ、やっぱり揉めたんだね。大事じゃなくて良かったよ」
「……成る程、グリーンのことか」

あの時マツバが言っていた揉め事というのはグリーンのことだったらしい。確かにもめたというか往来で説教を受けたことは記憶に新しい。
あまりよくは知らないがエンジュのジムでアッシュを待っていたことといい、マツバの予知というのは割と的確なようだ。

「それで、とうとうカンポウさんのお弟子さんになるというわけか」
「あぁ。否定していたのが本当になってしまった」
「いやいや、おめでとう。僕もゴース達も応援しているよ。ねぇ、ゴース」
「ありがとう」

よくは分かっていないようだが、ゴースも何やら雰囲気を察して祝いの言葉らしきことを言っているのが聞こえる。

「ゴースもおめでとうと言っているようだよ」
「ありがとうゴース」

アッシュにお礼を言われて嬉しいのか、喜びの鳴き声が聞こえる。
本当になぜ懐かれているか分からないがこうも喜ばれると少し嬉しいものだ。
その後二言三言話したあと、通信を終えアッシュ達は就寝する事にした。

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