目覚めると、横の少年はまだ眠っていた。まだ夜が明けたばかりのようで、ひやりとした空気が辺りを包む。周囲には動物も妖怪もいなかった。ずっと水蛇がいることで守られてきた土地だったのだろう。わたしは体を起こし、体に付いた小石や葉っぱを払いのけた。
「お前さ」
少年も起きたようだ。わたしは目を合わせないようにして、極力静かに答えた。「なに?」
「名前、なんてーんだよ」
「……名前 。あんたは?」
「おれは蛇」
「ふーん」
ヘビ? 変な名前だ、と思った。
「お前、変な名前って、思ったろ」
「思ったよ」
「ここで拾われたから。水蛇の沼の子どもだから」
目を細めて口を尖らす少年……蛇は、よく見ると女物の服を着ているようだった。あの強欲な主のことだ、女達のお下がりを与えていたのだろう。だがその奇妙な風体はなぜか少し親しみやすくて、わたしはこっそりと安堵した。
「おれは、適当に悪さして生きてくつもりだけど。名前はどうすんの?」
「わ、わたし一人でこんなとこ放り出されたら、死んじゃう! 付いてく!」
「ふーん。べつにいいけどさ」
そうして、傷だらけのわたしたちは、共に歩くことを決めた。おかしな話だ。お金は一銭もないし、体中が痛いが、妙にすがすがしい気持ちで、互いに顔を見合わせた。
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(120405 一応これで一旦終わりです。続きはありますが書くかは未定です。自己満足にここまでお付き合い頂きありがとうございました)