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もういいだろうと、適当なところで止まり、掴まれていた手を解放された。自分の両手を見ると、あの男の小刀を2本とも持ってきてしまっていた。少年とは、宿を出てからまだ一つも言葉を交わしていない。なぜ助けてくれたのか、そもそもこの少年が何という名なのかも、わからないままだ。

「……水蛇か!」

背後で水が大きく跳ねる音がして、振り向くとそこには、すでに首を落とされた水蛇が倒れていた。あれだけ町民を苦しめていた水蛇を一刀で片づけた少年は、誇らしげな様子などひとつもなく、見下すように水蛇を眺めていた。

「ねえ。なんで、火を付けたの?」
「あのくるわが嫌いだったからだよ。てめーを助けたわけじゃねーからな」

口を尖らせて言いながら、少年はどかっとその場に座り込んだ。

「今日はここで野営」
「そりゃ、そうね。だってわたしたち一文無……あ! お金……」

そうだ、あれだけ苦労して貯めたお金を、どうしてわたしはあのまま置いてきてしまったのだろう。きっともう、宿と一緒に燃えてしまっただろう。嫌なことも全て我慢して、耐えて耐えて耐えて、貯めたお金だったのに。

「くだらねー。そんなに貯めた金が大切だったら戻れよ。きっと歓迎されるぜ」
「……戻るわけないでしょ。あそこは、呪われた町」

すると少年は鼻を鳴らして横になり、そっぽを向いてすぐ寝付いてしまった。わたしは中々眠れず、水蛇の死骸の匂いに顔を顰めては、寝返りをごろんと打った。

 


(120202)


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