その腕で抱きしめて 03
モノトーンで統一された部屋。
微かに香る匂いは香水なのか、それとも柔軟剤なのか。
ハルが目を開けると、そこは見知らぬ部屋だったが、鼻についた香りはいつも実弥から香る匂いと同じだという事に気がついた。
「気分はどうだァ?」
不意に聞こえた声にドキリと心臓が跳ねる。
身体を起こすと、実弥がベッドに腰掛けながら様子を伺うようにそっと手を伸ばし軽く頬に触れた。
ハルの頬なのか、実弥の指なのか。触れ合ったそこはとても熱かった。
「実弥先輩、あの……」
「飲み過ぎだァ馬鹿! 酔いが回ってぶっ倒れそうになってそのまま寝ちまったんだよお前は。ここまで運ぶ俺の身にもなれェ」
「え?! そんなに重かったですか?」
「ハァ……違ぇ、そうじゃねェ。好きな女に無防備に寝られちゃたまったもんじゃねェって事だァ」
え、という素っ頓狂な声は、ベッドの軋む音に掻き消された。
実弥がベッドに上がり、その距離を縮めたのだ。
指先だけが触れていた頬を、包むみ込むように大きな掌で触れる。
ハルを見つめるその瞳は、心配でも困惑でもなく、ずっと欲しいと思っていた眼差しだった。
「好き、なんですか? わたしのこと」
「あぁ」
「じゃあなんで……昼間、わたしのこと避けたの? 錆兎と喋ってた時、どうして……」
「あれは……お前から錆兎とは何もねェって聞いても、俺はその位置に立ててねェだろ。つまり、単なる嫉妬だァ。そんな顔、お前に見られたくなかった」
「……嫌われたかと、思った」
「そんな事で嫌うかよォ」
「もっと、言って……実弥先輩」
「好きだ……ハル」
「わ、わたしも好き。実弥先輩のこと、ずっと」
「知ってた」
「好き……好き……すき、」
嬉しくて、涙が溢れそうになる。
もっともっと伝えたくてその言葉を繰り返していたハルに、「もう黙れェ」と少し呆れながら笑った実弥がその顔を近づけた。
柔らかな唇が触れ合い、そこに一筋の涙が零れ落ちる。
それでも実弥はその温もりを離すことなく、両手で頬を挟むように触れ、顔を上げさせるとその口付けを深めていった。
グロスなんてもう取れてるしセットした髪も乱れている。クリスマスイブの雰囲気なんてのもない。
それでも、実弥と気持ちが通じあい、触れ合えているこの瞬間が、最高に幸せだとハルは思った。
「ハル……」
「名前で呼ばれるの、嬉しいです」
「そォか」
「私も呼びたい……実弥って」
「好きにしろォ。もうお前のもんだ」
自分のシャツのボタンを外しながら、また唇を塞ぐ。
ベッドに押し倒され身体全体が密着するも、もっと触れ合っていたくて両腕を彼の首へと回した。
口内に入ってきた少しザラつく生温かな感触。
なぞられる度、舌が触れ合う度に、心臓が震えるようだった。
「実弥……好き」
その言葉が、更なるスイッチを押すことになると分かっていて、彼の耳元で囁いた。
唇を離した実弥に見下ろされ、ゴクリと喉仏が上下に動く様子を、ハルは熱を帯びた目で見つめていた。