勇気を出して 02
日が沈み出すと、街はより輝きを増す。
街路樹と街全体がクリスマスツリーかのような、キラキラとしたイルミネーション。
普段、その道を通って駅へと向かっていた時はこの輝きも見ることなく何か思うこともなかった。
だけど、今日は違う。
会社が入っているビルの外、街路樹の近くで輝くそれを眺めながら立っていると、「お待たせしました〜!」と彼女が駆けてきた。
「……待っていない」
「寒かったでしょう? 鼻が赤いよ」
「……」
「冨岡くん?」
「待つ時間は苦痛ではないから」
「そっか! ねぇ冨岡くん、デートの時は敬語はなしね! 敬語だと何か気になっちゃって、歳上なの」
「分かった。でも俺は歳上でも、気にしてない」
嬉しそうに笑う彼女に、義勇の心は温かくなる。
普段よりも輝いて見える彼女に、「綺麗だ」と思わず零れた言葉。
彼女は「本当だねぇ!」と視線を上に向けて街路樹のイルミネーションを眺めていた。
企画部の宇髄から聞いたオススメの店で食事をするも、緊張からなのか味はほとんど分からなかった。
何事もあまり動じることはないのに、彼女を前にすると普段通りではいられない。
食事中に何を話したのかさえ、覚えていない。
店を出ると、更に冷えた空気により街は輝きを増していた。
駅前に作られたイルミネーション。
それを足を止め眺める人は、ほとんどが男女のカップルであった。
自然に足を止めた義勇達もそれを眺める。
イルミネーションを見ている彼女の瞳はいつも以上にキラキラと輝いていた。
「……ハル、さん」
きっと初めてであろう、彼女の名前を呼んだ。
驚いたように顔を向けた彼女だったが、それさえも目に入らないくらい義勇の緊張は最高潮だった。
深く呼吸をし、熱くなりすぎている身体に冷たい空気を送り込む。
それから、しっかりと彼女を見つめた。
「俺は、あなたが好きだ」
「……え、」
「正直、こんなに緊張するものとは思わず、今も舞い上がって何を言っているのか分からない。だけど、ずっとあなたとデートしたいと思っていた」
「冨岡くん……」
「好きだ」
想いを告げられたという達成感に、その勢いのまま義勇は彼女の手を握った。
冷たいな、と呟くと、「じゃあずっと握ってて」と今度は彼女が手を握り返してきた。
「今日デートに誘ってもらえて、私すごく嬉しかったの。冨岡くんに好意があったの、気づいてないでしょ?」
「そう、なのか?」
「でも驚いた……冨岡くん、いつも表情変わらないから。誘ってくれたから少しは期待していいのかなと思ってたけどまさか告白してくれるなんて。嬉しくて、泣きそう」
私も、好きよ。
彼女の言葉が吐き出された息と共に耳に届く。
相変わらず緊張はしているものの、それを彼女の言葉が温かく包み込んでくれているようで、義勇はなんとも言えない気持ちになった。
「ハルさん……」
「名前、ハルでいい」
「……、ハル」
「うん」
「ハル、好きだ」
彼女の頬が夜でも分かる程に赤く染まっていく。
自分も同じかもしれない、と思いながらも、嬉しそうな反応をしてくれる彼女をもっと見たいと思った。
もっともっと、色んな顔を見せて欲しい。
「……もっと、一緒にいたい。ハルと」
イルミネーションの輝きが初々しい二人を包み込む。
勇気を出して想いを伝えた義勇に訪れた、聖夜の奇跡であった。
―Fin―