大人の階段 11

「おはよう、善逸」
「ハルちゃああああん!」
「うわ! もう引っ付かないでよぉ」
「ねぇ、あの人に何もされてない!? 暴力振るわれてない? 泣かされたらいつでも俺のところにおいでよ〜!」


 善逸にはその日に事情をLINEで伝えていた。最初は迷ったけど、やっぱり伝える必要があるって思ったから。
 そしたら、「良かったね」とハート付きで返事が来て安心したけど、まさか今まで以上に実弥お兄ちゃんを敵視するようなるとは思っていなかった。誤算だ。


「我妻ァ、離れろォ」
「ヒイイイ! でた! 高校生の朝に合わせて出てこなくていいんだよ! もっと寝てろよ!」
「ハルは俺ンだから気安く触んじゃねェ」
「親友だからいいだよっ! ね、ハルちゃん!?」
「よくねェだろォ! なぁハル?」


 二つの視線に、苦笑いしかできない。もう一つの誤算は、実弥お兄ちゃんまでもが、ここまで善逸を構うことだった。
 半分冗談だとしても、ヤキモチを妬いてくれてるのかなって思うと、嬉しい。
 独占欲強いんだな兄ちゃん、とボソッと隣でつぶやいた玄弥に思わず笑った。


「ハル、我妻から二メートル以上離れて歩けよォ! バイト終わったら部屋行くからなァ。玄弥見張っとけェ」


 遅刻するからと歩き出した私たちに向かって、実弥お兄ちゃんの声が届く。
 堂々とそんな事言われると恥ずかしい。だけど、ドキドキして嬉しくて、もう顔のニヤケを止められなかった。


「え、夜に部屋に行くとかヤバくない!? 堂々と夜這いの誘いとかヤバくない? やっぱり…って、ニヤケすぎ! ハルちゃん!」
「え、そう?」
「んもう! 笑顔だからいいけどさ! 幸せならいいんだけどさっ!」


 善逸のタンポポ頭に触れて、「ありがとう」と言うと照れくさそうに笑った。
 私を好きになってくれてありがとう。離れないでいてくれてありがとう。


「よし! 帰りにタピオカとケーキ食べに行こう! 二人の奢りで!」
「は? 行かねぇよ俺は」

「善逸と二人だと実弥がヤキモチ妬くからさ!」

「「さ、実弥ーー!!!?」」







実弥お兄ちゃんは、私の両親にちゃんと挨拶をしてくれた。

元々、私がずっと公言してたことだし、放任主義な両親は何とも思ってなかったみたいだけど、「大切にします」と頭を下げてくれた姿を見て、不覚にも涙が出そうになったんだ。



「ねぇ実弥お兄ちゃん」

「……」

「あ、ねぇ……実弥?」

「なんだァ」

「好きだよ」

「…おぅ」

「……」

「俺も…」

「え?なにー?」

「…好きだって言ってんだろォ!ったく」



顔を赤くした実弥お兄ちゃんは、誤魔化すかのように私を片腕で引き寄せると、そのまま私の唇を塞いだ。

幸せいっぱいの、味がした。



―Fin―

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