キセキ 05

 突然のキスに、善逸の意識は真っ白だった。だから、ハルが唇を離して、またそっと善逸に口付けをしたことも知らない。
 呆然としている善逸は、言うなればサレルガママの状態。
 女としてはリードしてもらいたい所だけど、ハルにとってはそんな善逸に胸がキュンと鳴った。
 初めて彼を見た時から、ハルにとって善逸は興味の対象で、今までにない高鳴りを運んでくれる存在だったんだ。
 善逸くん、と彼の名前を呼んで両肩を掴むと、ゆっくりと床へと押し倒した。視界が変わったことで漸く意識をハッキリさせた善逸だけど、途端に襲ってくる羞恥心と好奇心で、あっという間に頬は赤くなり、動悸が激しくなる。
 下から見上げるハルは、いつにも増して可愛くて、それでいて思春期の男子からしたら刺激が強すぎるくらい艶やかだった。
 自分がそうさせてるなんて知るはずもない善逸だが、やはり男たるものサレルガママというのはよくいなと、近づいてくるハルに生唾を飲むと、目を閉じて受け入れた。
 さっきよりも少し長めのキス。息をしようと唇を開いたハルのそこへ、善逸は舌を伸ばして未知なる世界へと侵入していく。


「ン…」


 人並み以上にそういう事に興味があった善逸には、この先どうしたらいいのかの知識はあった。だけど、ハルが漏らした声を聞いてそんな事を実践できる状態ではなくなった。
 ぎこちなく舌を動かしていると、それを優しく絡めとるハルの舌に何とも言えない気持ちになる。
 気持ちいい、幸せ、ヤバい、幸せ…ハルちゃん好き。
 善逸の頭を支配しているのはそんな気持ちだった。


「ハルちゃん、好き…」
「わたしも好きよ? 善逸くんが」
「ハルちゃぁん」
「んふ、可愛い」


 いや、ハルちゃんのが可愛いよ――という言葉は、ハルからの濃厚なキスによって飲み込まれた。
 長く深いキスによって酸欠になった善逸は、この機会を逃すまいと意識朦朧の中ハルの胸元に手を伸ばし、その膨らみを触るか触らないかの時に、意識を手放した。
 だけど、次に意識が戻った時、なぜかハルは善逸のことをさっきよりも顔を赤らめてモジモジと見ていたから、キスくらいで意識飛ばしたことを引かれなくて良かったと思った。
 次こそは!と帰ってから男女の復習と予習に燃える善逸だった。
 意識が飛んだ後に何があったのかも知らずに――





「え?! 善逸くんって…意外!」
「そうなのぉ! わたしもビックリしちゃって…ずっと可愛いって思ってたけど、あの瞬間はオスだった。覚醒したのかなぁ?最後まではできなかったけど…また部屋に誘ってみようっと!」


 女子トークで、まさかそんな話題が繰り広げられてるとは男子は知らないだろう。
 両頬に手を添えて赤らめて話をするハルは、完全に恋する乙女だ。ミオは興味津々にハルの話を聞き、カナヲは言葉を発することなくハルの体験談を赤くなりながらジッと聞いていた。
 早く善逸のすべてを見たいと思ってるハルは、教室にやってきた善逸を見つけては駆け寄ると、腕に抱きついて耳元で囁いた。
 顔を真っ赤にした善逸だけど、意を決したようにコクンと頷き、二人してどこかへ消えていった。
 甘い香りを纏わせながら。



―Fin―

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