
その愛に触れたなら 04
最後に泊まっていた隊士を見送った後、ハルが片付けをしていると、やけに騒がしく戸が開く音がして慌てて玄関へと向かった。
重症の隊士だろうか。
不安になったハルが急いで駆け寄ると、そこに立っていたのはもう二度と会うはずがないと思っていた煉獄だった。
息は上がってないものの、いつもとは少し表情が違うとハルでも分かった。
溢れそうになる気持ちを押し込み、笑顔で「おかえりなさいませ。よくご無事で…」と震えそうになった声を止め、誤魔化すように頭を下げた。
何も言わない煉獄に少し顔を上げると、いつもの大きな瞳と視線が交わった。
「さつまいもの味噌汁を、お願いする」
「かしこまりました」
いつもより声が小さい煉獄に、何かあったのかと不安になりながらも、ハルは部屋へと案内し食事を用意する。
これがハルにとって、本当に煉獄に会える最後の日となる。
もう顔合わせの日取りは決まっていた。
胸に押し込んだ想いは日を増せば消えてくれると思っていたが、再び煉獄の顔を見た瞬間に、それは違ったんだとハルは悟った。
きっと、さつまいもの味噌汁を一生作ることはないだろう。
「お食事をお持ちしました。失礼致します」
襖を開けると、煉獄は目を閉じて胡座をかいたまま刀を下ろすことも無く座っていた。
ハルが部屋に入ってお膳を置くと、ゆっくりとその目を見開いた。
いつも暖かいと思っていた瞳は、いつもよりも熱く燃えているようで、ハルはそれから視線を逸らせなかった。
「食べながら少し話をしたい! よいか?」
初めてのことに戸惑いつつ、コクリと頷くと少し距離をとって座った。
深く息を吐いた煉獄は、何も言わずに最初に好物である味噌汁に手を伸ばし静かに口に運んだ。
「やはり美味いな! 美味い!」
「今日は言わないのですか? わっしょいと」
「…正直に言う。少し、いや幾分か俺は緊張している! だから美味しいが味がよく分からん!」
箸を置いた煉獄は、ハルの方に姿勢を変え改めて座り直した。
正面に向き合った二人の間には、妙な空気が流れていた。
その沈黙を破ったのは、煉獄だった。